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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
空に向かって駆け上がれ!
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天海~ニルフと銀~3夢

 意識が遠のくのを感じ、意識が靄に落ちていく。

 なんだかあったかい。

 そのままホワホワとフワフワの感覚に包まれて・・・。



 おきなさい・・・。



 ほら・・・。きょうは・・・。



「今日は約束があるんでしょう!!!」


 

 高い声が響いて、ホワホワでフワフワから放り出された。



「てきしゅう か!?」



 急速な落下感を感じたと思ったら地面に四つん這いに立ってた俺は、目の前の足に気づく。

 そのまま目線を上げていくと・・・。



「今日はお友達と約束があるんでしょう! さっさと起きなさい!! 支度しなさい!!!」



 真っ白な靄の塊みたいなのが、腰に手を当てて仁王立ちしていた。



「・・・おばけぇぇええええええええ!!!!」

「親に向かってお化けとは何ですかお化けとは!?」



 腕をひっつかまれてそのままブンっと投げられた。

 子供を投げる親なんて居ねえよー! 

 勝手に叫びつつ天井に飛ばされる俺。このままじゃ ぶつかる! と思った瞬間、俺は勝手に一回転して勝手に壁にくっついていた。


 手を見ると、白い指に着けた猫手みたいなものを壁にめり込ませている。


「・・・こんなつかいかた あるんだな」


 しっかりと壁にくっついてる自分にビックリしつつ、ぼんやりと客観的に分析していた。

 この方法いいな。今度やってみよう。


「あ、またアンタは壁に爪立てて! 壁の修理大変なのよ!? まあいいわ。

 早く着替えて用意しちゃいなさい。お友達に置いて行かれるわよ」


 白い靄はプリプリ怒りつつ、部屋から出ていった。

 なんか表情もない白い靄を人型に固めただけな見た目なのに、感情とか表情が想像できるって不思議な気分。

 ていうかあれ、誰? 親? 俺の親?

 ・・・親があれって事は・・・。

 俺は自分の姿をじっくり見直す。

 手足が白い。不自然なほどに白い。しかも輪郭がモヤモヤしている。

 ・・・まさか。


 俺は部屋を飛び出した。


 家中を走りまわった。

 どこかの部屋からさっきの白い靄の声で怒られるが、適当に返事をしてあちこち探し回る。

 俺が探してるのは、そう。自分の姿を確かめられるもの!

 1つのドアにファンシーな色で「母の部屋」と書かれている事に気づき、飛び込んだ。

 ・・・やった、デカい姿見がある。

 目をつぶってゆっくりと鏡の前に立ち、心を落ち着けて目を開ける。

 子供サイズの白い靄が、子供用の服を着て、目の前に立っていた。


「うわぁああああやっぱりぃいいい!?」


 しかもなんか、いつもより声も高いぃぃいい! 耳をやられたか!


「あ、こんなところに居た。母さん、居たよ。

 ほら、寝間着でうろうろしていないで、朝ごはんを食べに行こう。せっかくお母さんが作ってくれたのに冷めちゃうぞ」


 大口開けて鏡に突進しようとした俺の肩を、巨大な白い靄がガッシリと掴んで引き寄せる。

 そのままひょいと、自身の肩に乗せるように俺を持ち上げた。

 170cmはある俺を、ひょいって!?


「だ・・・だれ!」

「・・・父さんだけども」


 父さんデケえ。3mくらいある。



 朝飯を掻っ込んで急いで準備を整え、俺は家を飛び出した。

 なんだここ、なんだ自称俺の両親。

 なんで2人共 靄なんだ!?

 いや、俺もだけど!

 ちなみに朝ご飯は、普通の黒っぽいパンに肉焼いた奴だったよ!


 ・・・なんか行き成り靄の生命体の住処に放り込まれて混乱してるな俺。

 よし。

 とりあえず、家の外に行こう。

 とりあえず、靄以外の生命体が居ないか探してみよう。


 これからの行動をある程度決めた俺は、鼻息も荒く拳を握りしめた。

 そして拳を開いて自身の格好を見回す。


 装備:布の服。


 しまった俺、武器もハープも持ってないな!



 *



 家に合ったこん棒と鍋のふたっぽい板をこっそり持ち出して、当てもなく目についた場所を歩き回ってみる。

 意外とこの街、デカい。

 東の国にある一番大きな港町くらいはありそうだ。

 当然、人通りも多かった。

 

 小さめの店の前ではラフな男物の服を着た靄が、食料を売っている。

 結構高そうな女ものの服を着た靄が、綺麗な宝石の飾られた店に入っていく。

 住宅街では、小さい靄を大きな靄が抱いて散歩している。

 老人ぽい感じの靄が、変な靄に紐をつけて道を練り歩いている。


 なんだいここ、全員靄ばっかりやん。

 ていうか生き物も全部靄になっていた。

 売られてる食料も、生命の形が残ってるものは全部靄に見えてるっぽい。


 生えてる草も樹も、人もペットも虫も、全てが靄になっていた。

 「男物」「女物」と認識している服も、時間が経つうちに「なんとなくそう感じるだけで、実際は靄に包まれている」だけって事に気が付いた。

 空を飛ぶ生物も靄にしか見えなくて、シルフの2人(シー君とフーちゃん)を探すのも、諦めた。


 なんだか頭が痛い。前も見ずにフラフラと人気のない道を行くと。奥に、空き地があった。

 俺はそこに落ちている大きめの石に座り込んで、空を見上げた。

 青い。雲がかかってる。空の色は、今いる世界と同じなんだな。

 

 さて、これからどうしよう。


 友達と待ち合わせてるって言ってたけど、俺、そんな記憶持ち合わせてないんだよなぁ・・・。


 っと、その瞬間。景色がブレた。

 そして視界がシェイクされ、白と青で塗りつぶされ・・・


 目の前に、木刀の切っ先が突きつけられていた。


「わひょっへやぁあああ!?」


 変な声出た。

 けど構わず横に飛びつつ、いつの間にか握りしめてたこん棒で横に凪ぐ。

 そこで初めて、相手の顔を見た。靄だ。


「相変わらず素早さだけは高いな」


 そいつは俺より少し背が高くガタイがいい靄だった。

 靄った顔でニヤリと笑う靄。もう訳が分からない。

 

「だが力ではオイラの勝ちだあ!」


 なんか靄が勝ち誇った顔で飛びかかってきた。

 上段に木刀を掲げて振りかぶってジャンプしてる。

 冗談みたいに隙だらけな構え方だ。上段だけに。


「じょうだん だけに!」


 言いつつ俺は懐に飛び込んだ。

 そのままこん棒で、ミゾウチを強打!


「おうぅごえぇえ」


 靄がうずくまって、汚い音を立てた。

 口っぽいとこから靄が駄々漏れてる。

 ゲロも靄?


次回メモ:夢遊


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

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