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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
空に向かって駆け上がれ!
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天海~ニルフと銀~1 雲

 島に一歩足を踏み入れる。

 足元に土の感覚があった。柔らかな感触が足を包む。

 ガサガサする葉の上を歩き続けてきたから、この程よい硬さがなんかちょっと懐かしい。

 歩を進めるたびに足の疲れが少しずつ収まっていった。


 島は深い森に包まれていた。

 熱帯に多く生えるタイプの高く大きな樹が島を覆い、中は太陽の光をさえぎって、真っ暗だ。

 風の吹き抜ける音と、鳥の声。


『猛獣の唸り声はしないな』

「天海は、危険な生物が生息しない場所なのか」


 たまに植物のつるのように樹に巻き付いている動物も見かけたが、皆、襲ってはこなかった。

 最初は警戒していた銀も、進むにつれて段々余計な力が抜けていくようだった。


「開けた場所だ。休憩を取ろう」


 しばらく歩を進めると、広場と、崩れた遺跡があった。

 天井を覆うドームは建物の屋根ではなく、植物がまるで屋根の姿を残したように丸く覆っている。

 辛うじて遺跡って分かる程度の崩れかけた柱と、土から少し覗く大部分の欠けた石畳。

 壁は全て割れ落ち、植物が蔓延っている。足元には壁と思われる黄土色の岩がゴロゴロと落ちていた。


 しばらく休憩を取った後また奥に歩を進めたが。

 見かけたのは、全て何千年も前に朽ちたような遺跡ばかりだった。

 

『この島には神の手がかりになるようなものは無かったな』

「進もう」





 その後も数日の間に俺達は、いくつかの島を転々とした。

 深い森に覆われた島。広い草原に、不思議な高い木が何本も生えている島。宝石のように光る石で出来た島。湖の湧き出る島や、果物や大人しい動物を採取できる島もあった。

 気ままに流れる島と島がぶつかり合った時だけ移動し、探索し、また移動する日々。


 目の前に現れる島から島へと渡り、方向も場所もゴールも分からないままに緩々と旅をする。

 恐ろしい魔物や強い動物は全く現れなかったが、深い洞窟を探索した後に白い大地に降り立った時の解放感は最高だった。

 腰を後ろにそらせ、ゆっくりと、気を抜いたまま景色を見つめて空を見上げる。

 なんだか暖かな夢の中にいるような気分だった。




 島が動く時、周りの雲が波打つように動いているのが不思議だった。まるで生き物の大移動のような。




 1つの島を通りかかった時、ニルフは見覚えのある地形を見かけた気がした。

 開けた明るい大地に、段々になった土地。


「この土地の作りは・・・村の跡地か」

『何か埋まってないか探してみよう』


 すぐに探索したけど、残念な事に、何も見つける事は出来なかった。

 地面をすっかり掘り起こして、元々生えていた雑草も全部引っこ抜いたのに。

 その日は、そこで野宿をすることにした。


 夜。

 その辺の耳の長い動物を狩って焼いて草摘んで煮込んでおいしく食べた後。

 残った骨が、天海に来てすぐに見た樹に似ているのに気が付いた。

 手に持ってクルクルまわしてみる。くるくるくるー。

 ・・・中から汁が出てきた。

 焚火に投げ捨てて、疑問に思っていた事を銀に問いかけてみる。

 

『そいえばあの石碑と樹、結局なんだったんだ?』

「特に、オレに変化は無かったが」


 銀は日課の素振りを中断して、手を前方にかざす。そして火の初期魔法を放つ。

 次に剣を前方に向けて、火の初期魔法を放った。

 両方ともやはり、ピンキー達よりも威力が小さかった。


「魔法の威力も、解消されていないしな」

『毎日練習してるのにな』


 俺も銀の真似をして、右手のひらを前にかざす。

 

『確か、手のひらに魔力を集めて放出するイメージだよな』

「出すときは、そうだな」


 念じてみよう。ぬぬぬぬんぬんー。

 じんわり水が出た。水魔法?

 銀を見つめる。


「・・・手汗だと」


 言いずらそうに言われた。なんかごめん。

 俺は次に、左手を前に向けた。

 そして、ピンキーにもらってから指に付けっぱなしの猫手の先に魔力を貯める。

 魔弾を打つ直前だ。

 魔弾は打てるんだよな、魔弾は。なんで魔法は出ないんだ?

 暇なので、ふと考えてみる。


『魔弾打てるって事は魔力を形にして出せるって事だよな。停滞させたらどうなるんだろう』


 なんかじんわり出た。さっきの汗とは違う感じ?


『銀ー、なんか出たー』

「ならそのまま、燃えるイメージをして魔弾を撃つ感じだ」


 銀がこっちを見ないまま、アドバイスをくれた。少し遠くからブンブンと風切り音が聞こえる。時折何か落ちるような、べちゃっという音もするな。

 明日の朝ごはんか。


 猫手を嵌めた指先から出たものを、もう片方の手でチョンとさわってみる。ぺとっとした感触があった。

 手を引くと、指と指にかけて細い糸みたいなものが伸びる。すげー。

 これってあれかな、糸かな、魔力の糸。ピンキーの話す小説とやらに出てきた奴。


『銀、糸出た、糸!!!』

「ほつれか。オレの荷物に裁縫道具がある」


 違うって。

 そういえば、銀の世界には糸を使って攻撃する者も居たと聞いた。

 やってみよう!!!


 としたけど、糸は指の間で重力に従うようにデロンと伸びたと思うと、そのまま ぺとっ と切れた。

 ・・・なんか煮詰めた砂糖みたいな感触。舐めたら甘いかな?


 しょうがない。

 垂れた糸を落ちてた草に擦り付けて取ると、次に俺は硬く目をつぶった。

 硬く固まる想像をしてみよう。ちょうど身体強化魔法で防御を上げるときみたいに・・・魔力を硬く・・・固く・・・。

 

 ゆっくり目を開けると、猫手の先からぴよんと出た魔力が、硬く固まってた。

 猫手から、小さなナイフ程度のものが生えてる。


『やった! 成功だ!!!』

「道具は戻しておけよ」


 だから違うけども。これ見せて驚かせてやろうっと!

 剣、特に銀の持つナイフをイメージしたので当然切れるだろう。銀が来る前に、切れ味を確かめておくか!

 その辺に落ちていた、朽ちた切り株に向かって腕を振り下ろす!


 切れろー!

 べきっ。


 指が横に曲がった。

 無言で指を押さえてうずくまってると、戻ってきた銀が回復してくれた。苦笑いしつつ。

 はずかしっ!


「針には気を付けろよ」


 指を刺した訳じゃないんだけどね・・・。


 その日見張りの時間を利用して調べてみたら、ペーパーナイフに使える事が分かった。

 俺の新技 → 切れ味:殺傷力なし。威力:指が折れない程度の打撃なら可。悲しい。


 次の日、俺はがっくりしながらその場を後にした。

 

「ん?」

『ふぉうしたんふぁ? 銀』

「いや、なんでもない。・・・あくびが凄いが、大丈夫か?」

『ふぁいふぉうぅふぅ~(大丈夫~)』


 大あくびしながら去ったニルフ達の立ち去った跡には、掘り起こされた地面と。

 力強く地に根付いて花を咲かせた小さな植物が、一輪だけ残っていた。


次回メモ:遺跡


いつも読んでいただき、ありがとうございます!!!

読みやすいのか読みにくいのか以前に、何を書いてるのかが分からなくなってきた!( ゜∀゜)・∵. ガハッ!!

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