海の入り口へ 道中1
ちょいちょい更新開始でっす。3日おきには無理かもしれませんが、ちょっとずつでも!
では、(私もどの場面か)忘れてたので、軽い説明。
魔族が魔界から出入りしている場所が判明。
海のど真ん中らしい。
向かえって言われる。
ニホン人3人+勇者君は天海に神に会いに行った。
行動的に、向こうが主人公なんじゃないだろうか。
「ボクは勇者でありつづけたい」
彼はそういって、剣と共に天へと昇って行った。
『ちゃんと聞こえてたからな。がんばれよ、勇者君』
俺はそれに返事を返すと、銀達と共に世界樹島を後にする。
俺達にはやることがあるからな。
俺の後ろでは、言葉を拾って届けてくれた沢山のシルフ達が踊るように飛んでいた。
*
数時間後、俺達は船の上に居た。
温かな風が頬を撫で、空からは青い空と薄い雲の中を太陽が高く昇っている。
この世界での、晴天だ。
『これ、転移で西の国までバビューンしたけど、他の人達になんて説明したんだろう』
「さあな。王達がうまく誤魔化すんじゃないか?」
甲板で銀と2人で柵の横のタルに座り、船の揺れを楽しみつつ周りを眺めた。
船は全体が30mほどの大きさで、船の甲板から何本もふっとい棒が生えていて、何枚もの白い布が張られていた。
そこから多くのロープが垂れさがっている。
甲板には大きめの小屋くらいの場所があり、そこには舵と船長。
船長は軍隊の隊長って感じの服を着ている。
そしてまわりで忙しく働いている船員は緑の軍服だ。
全体的には普段西の国で運行している貿易兼観光船と同じようなつくりだが、この船は飾りが殆ど無い。
そして一番違うのが。
「海の魔物だー!!!」
船員の声と共に、波とは違った小さく細かい揺れが尻を襲う。
「皆耳を押さえろー!!!」
甲板の下の空間から誰かが叫ぶ。それは伝言ゲームのようにあちらこちらにいる船員に伝えられたようで、甲板に開いた穴からひょっこり顔を出した男が同じ言葉を叫んだ。
俺達はそろって耳を押さえて身をかがめる。
その瞬間。
ドーーーーーーーーーン!!!
というものすごい振動と音が鳴り響き、俺達の上に生臭い欠片と塩水がバラバラザーっと降り注いだ。
辺りから大絶賛の声が鳴り響く。
俺は頭にくっついた、白く所々が焦げた肉片をはたき落としつつ立ち上がった。
『見る暇なかったな、魔物』
「それがいい」
銀は一部始終を見てたっぽいな。
見ない方がいいくらいの造形だったのか、弾け飛ぶさまがあまりにもアレだったから見ない方がいいと言ったのか。
俺は肉片と同じ、白くぶよぶよした生臭い塊が内側から弾け飛ぶ様を想像してみた。
うん、見なくて良かったかな。
「大丈夫でしたか、冒険者さん達」
声を掛けられて顔を向けると、先ほど甲板の穴から顔を出していた船員さんだった。
緑の軍服を着こんだこの人は背が低く、頭にチョロリとしたモヒカンをつけている。
「ああ」
銀が短く返事を返した。
しかし称賛の気持ちが含まれていると察した船員は笑顔を返し、興奮したようにまだ海を見ている他の冒険者たちの元に歩いて行った。
そう、この船には大砲が積まれている。
一応貿易船などにも自衛用の大砲が積まれているっちゃいるが、この船にはその何十倍もの、それこそ戦争にいくんじゃないかって量の大砲が積まれていた。
きっと、黒蹴達の言っていた「海賊船の漫画とか映画くらい」の量だろう(と思う)。
そして、もう少し広く周りを見ると、これと同じ規模の船が20船くらい浮かんでいるのが見える。
全部が同じくらいの規模。全部が同じくらいの装備。
これらの船が一心不乱に帆先を合わせ、同じ方向に向かって一直線に進んでいく光景はちょっとどころじゃなく怖かった。
たまたま海上で居合わせちゃった漁師さんが口開けたまま固まってたし。
そのあと軍艦の起こす波に飲まれそうだったので、一番近くにいた軍艦が回収して船に乗せていた。
秘密裏に出向した割に命優先の対応をするこの世界。
なんかいいね!
そしてこの船には4種類の人族が乗っている。
逃げる者と、立ち向かう者・・・とかじゃない。
緑色の軍服と、俺達冒険者。そして。
「おい! そこ早く整備しろ! 船を動かしてるのは俺達だぞ!」
濃い藍色の軍服を着た兵士が大声で怒鳴り、同じく濃い藍色の服の男がロープを持ってバタバタと走っていく。
赤色と緑色の軍服の兵士2人がその様子に目を凝らしつつ、後を追って行った。
船を動かす技術を学んでいるんだろう。
緑の服の人は、東の国の兵士。
赤色の服の人は、南の国の兵士。
そして藍色の服の人は、西の国の兵士だ。
この船、そしてこの軍艦の大群は3国同盟の海戦用軍隊だ。
今回はそこに冒険者も乗り込んでいる。ギルドからの依頼だ。
「この船は東の国の物なので、東国の兵士が多く乗り込んでいます。
しかし船の技術自体は西の国の物を流用しているため、船を動かすのは西の国の兵士が担当しています。
冒険者の皆さんと、火力の強い西の兵士は自衛と攻撃の担当です。
合同で隊を組むと見分けがつかなくなるため、今回は軍服の色を変えてみました。
さて、各国の精兵の兵士達が合同で船に乗り込んでいるとはいえ、各船が全て同じ構成という事ではありません。
兵士達は、自国の船に多く乗り込んでいます。
そのため、このようにそれぞれの船には、特色がでます」
先ほど冒険者の元を回っていた一般兵士っぽいモヒカンの人が、俺達に説明を行っている。
この説明、船が出る前にも聞いた気がするが、波の音に慣れていない者も多く聞き逃した個所もあってありがたいと誰かが言う声が聞こえた。
「東の船は、風の障壁を操る者が多いため、隊の四方に展開してます。特に前方に多くいますね。
障壁と、風魔法の回復を担当します。
西の国は海に一番慣れていて、海軍の規模が大きいため船は全体に展開です。
水を操る者が多いため、船の波の調整や、戦闘時の魔力回復に一躍買います。
一番火力のある南の船は中央に展開させています。
国柄的に海軍は多くありませんが、その体力と魔法の火力は随一。
つまり、南の船を守ることが、今回の作戦のカギと言えるでしょう」
一般モヒカン兵さん・・・そうだ、イッペイさんって呼ぼう。
イッペイさんの話はそのまま魔族や、この軍の目的についての内容に入っていった。
知っている内容になったため、気になっていたことを銀に聞いてみた。
『なあ銀、いつも連れてるスライムって塩気大丈夫なのか?』
確か、森スライムは塩に弱かった。
スライム全般が塩に弱いとすると、たまに塩水の降り注ぐ船は大敵なんじゃないかと心配になったのだ。
「アイツは置いてきた。塩だからな。
ハーピーも付いて来たがったが置いてきた。戦闘時、人前で空は飛べない」
『なるほど』
普段人型を取ってるとはいえ、ハーピーは空の魔物。
いくら風魔法が使えるとはいえ、魔物形態になって空を飛ばないと陸の上ではあまり戦闘は上手くない(という銀の持論だが、実は地上でも俺より強いとか言えない)。
「冒険者の皆さんには、この東の船に多く乗船してもらっています。
風の障壁は隊全体に広く展開するため、甲板を這い上って来る敵が居た場合、守りに特化した東の国では自衛に不安が残りますから。
それではみなさん、ご清聴ありがとうございました」
イッペイさんが深く礼をして立ち去ると。
また、穏やかな波の音と談笑の声が船を満たしていった。
次回メモ:ゴールド(今回の話でそこまで行かなかった!)
いつも読んでいただきありがとうございます!!!
とうとう150Pになりましたー!ありがとう!ありがとう!ドンチャンドンチャンパフパフーヒュー!