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この前に投降していた「SS女神」は内容的に後ろの方に移動しました。
混乱したらすいません!
急にライトを当てられて、目を眇めた。
初めて開いたみたいに痛む目を光から かばいつつ身を起こすと、そこは透明なカプセルの中。
壁と床と同じ、白い長円のロボットに連れられて、どこかに連れていかれる。
不思議なことに周りは、みんな同じ顔だった。
同じ顔をしたみんなと一緒に白い廊下を進み、白い部屋に行き、白い服を着た。
白い広場に集められ、色々なテストを受けた。
白い食べ物を食べ、白い飲み物を飲み、自動のシャワーを浴びる。
すべてが白い中で、水だけが透明だった。
言葉は知っていた。服の着方も分かっていた。すべてが初めて見る物だったのに、全てを知っていた。
少しずつ皆と会話を重ねた。
拙いながらも感情が生まれ、皆仲良く過ごした。
そんなある日、黒いロボットが現れた。
白いロボットみたいに長円だったけど、とげとげしていて痛そうだった。
黒いロボットはテストの様子を見て、そのまま何人か連れて行った。
黒いロボットのことは、誰も知らなかった。
連れていかれた皆は、そのまま戻ってこなかった。
次のごはんの時には、連れていかれた皆と同じ人数の子達が合流した。
同じことが、何回も繰り返されて。
今日、とうとう黒いロボットに連れ出された。
*
連れ出されてから何日が過ぎたのだろう。
周りは黒一色で。
所々には血と、そうではない赤黒い何かがこびり付いている。
連れてこられた先は戦場だった。
いや、戦場なんて生ぬるい。
弱肉強食。そんな世界だった。
食料は支給されなかった。
生き残るために、何でも食べた。口には出せないような物まで、躊躇なく。
皆、少しずつ芽生えていたはずの感情を消し去っていった。
殺気を感じて柱に身を隠す。隣にいた、同じ顔の男の頭が弾け飛ぶ。
柱から顔を出して辺りを伺う。
こちらを狙う男を発見。黒く細い筒を構えて、照準を合わせる。
相手の頭が弾け飛ぶ。
その顔も、さっきの奴と同じ顔だった。
幾度同じ事を繰り返したのだろうか。
突如サイレンが鳴り響き、黒いロボットが現れる。
生き残った皆の顔を見回したソレに、また連れ出された。
*
黒い服を着て、黒い食べ物を食う。
黒い建物に、黒い空。
建物からの光に照らされて、延々と続く荒野だけがどこまでも白く白く輝いている。
白い中に、動く物体を見つけて罠を回収する。
罠にかかっていたのは、同じく白い動物だった。
すぐに解体して調理し、皆に配る。
その食べ物だけは、黒くは無かった。
連れ出されてから幾日が経ったのだろう。
あれから初めて、違う顔の人間に出会った。
黒いロボットに連れていかれた先に居たその男は、自身の名前を名乗り、上官とだと言った。
初めて出会う、自分達以外の人間。名前を持つ人間。
ただしその顔は、仮面に覆われていたが。
そのころになってようやく、初めは同じに見えていた皆の顔の見分けがつくようになっていた。
「補給兵、そっちはどうだ」
「大丈夫だ。無事届いた」
「歩兵、オマエは」
「作戦通り」
黒い建物を抜け出し、簡単な言葉を交わす仲間の元に降り立つ。
同じ顔の、隻眼の奴がこちらを向いた。
「斥候、どうだ」
「問題ない」
一言答えて、差し出された水を受け取る。
啜った水は、どこか赤黒かった。
*
突入した建物はどこまでも黒く、内部に居るのは見慣れた仲間と、見慣れた顔の敵。
ここは機械だけが詰まった、いわばただの黒い箱。
敵はこの黒い箱をを死に物狂いで守り、仲間は死に物狂いで攻め落す。
何の意味があるのか、なぜそれをしなくてはならないのか、何も知らない。誰もそれを考えない。
考える意味など 無い。
そういえば、この顔以外の人間に出会ったことがないな。
ふと、馬鹿な考えに意識を削がれる。
すぐに頭を振って、隅に追いやった。
中枢機関の部屋に潜入し、仲間に合図を送る。
突入した仲間はそのまま・・・。
そしてその仲間を庇って撃たれ・・・。
しかし庇ったはずの仲間は銃口をこちらに向けて・・・。
最後に頭に浮かんだのは・・・。
*
光に包まれ顔を上げると、見た事のない建造物の土台部分に座っていた。
そこから差し込む光はとても優しく。
そこから見える空は、見た事のない色をしていて。
建造物ではなく「樹」と呼ばれる生き物だと、教えてもらった。
見える空の色は「青空」と言うのだと、教えてもらった。
食べ物には様々な色があり、味があり、種類があり。
服にも景色にも空にも、様々な色があるのだと知った。
周りには、自分と同じ顔の者は誰一人として居ない。
話す口調も、背の高さも、体形も、全てが違っていた。
あの黒いロボットも、当然居なかった。
*
消えゆく記憶の中で、オレはふと考える。
そういえば、あの白くて冷たいモノに名前があったと、この世界に来てから初めて知ったのだった。
この話をアイツにしたときに、アイツは何故か嬉しそうに答えてくれた。
なんという名前だったか。
『出来そこない』として処分され、荒野に捨てられていった同じ顔の仲間たち。
そんな彼らを抱きしめるように、天から降り注ぎ続けた、あの白いモノの名前は・・・確か・・・。
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次回メモ:ゴールド
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