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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
空に向かって駆け上がれ!
103/187

???

この前に投降していた「SS女神」は内容的に後ろの方に移動しました。

混乱したらすいません!

 急にライトを当てられて、目を眇めた。

 初めて開いたみたいに痛む目を光から かばいつつ身を起こすと、そこは透明なカプセルの中。

 壁と床と同じ、白い長円のロボットに連れられて、どこかに連れていかれる。

 不思議なことに周りは、みんな同じ顔だった。


 同じ顔をしたみんなと一緒に白い廊下を進み、白い部屋に行き、白い服を着た。

 

 白い広場に集められ、色々なテストを受けた。


 白い食べ物を食べ、白い飲み物を飲み、自動のシャワーを浴びる。

 すべてが白い中で、水だけが透明だった。


 言葉は知っていた。服の着方も分かっていた。すべてが初めて見る物だったのに、全てを知っていた。


 少しずつ皆と会話を重ねた。

 拙いながらも感情が生まれ、皆仲良く過ごした。


 そんなある日、黒いロボットが現れた。


 白いロボットみたいに長円だったけど、とげとげしていて痛そうだった。

 黒いロボットはテストの様子を見て、そのまま何人か連れて行った。

 黒いロボットのことは、誰も知らなかった。

 

 連れていかれた皆は、そのまま戻ってこなかった。


 次のごはんの時には、連れていかれた皆と同じ人数の子達が合流した。


 同じことが、何回も繰り返されて。


 今日、とうとう黒いロボットに連れ出された。



 



 *






 連れ出されてから何日が過ぎたのだろう。

 周りは黒一色で。

 所々には血と、そうではない赤黒い何かがこびり付いている。


 連れてこられた先は戦場だった。

 いや、戦場なんて生ぬるい。

 弱肉強食。そんな世界だった。

 食料は支給されなかった。

 生き残るために、何でも食べた。口には出せないような物まで、躊躇なく。

 皆、少しずつ芽生えていたはずの感情を消し去っていった。


 殺気を感じて柱に身を隠す。隣にいた、同じ顔の男の頭が弾け飛ぶ。

 柱から顔を出して辺りを伺う。

 こちらを狙う男を発見。黒く細い筒を構えて、照準を合わせる。

 相手の頭が弾け飛ぶ。

 その顔も、さっきの奴と同じ顔だった。

 

 幾度同じ事を繰り返したのだろうか。

 突如サイレンが鳴り響き、黒いロボットが現れる。

 生き残った皆の顔を見回したソレに、また連れ出された。


 






 *








 黒い服を着て、黒い食べ物を食う。

 黒い建物に、黒い空。

 建物からの光に照らされて、延々と続く荒野だけがどこまでも白く白く輝いている。


 白い中に、動く物体を見つけて罠を回収する。

 罠にかかっていたのは、同じく白い動物だった。

 すぐに解体して調理し、皆に配る。

 その食べ物だけは、黒くは無かった。


 連れ出されてから幾日が経ったのだろう。

 あれから初めて、違う顔の人間に出会った。

 黒いロボットに連れていかれた先に居たその男は、自身の名前を名乗り、上官とだと言った。

 初めて出会う、自分達以外の人間。名前を持つ人間。

 ただしその顔は、仮面に覆われていたが。

 そのころになってようやく、初めは同じに見えていた皆の顔の見分けがつくようになっていた。

 

「補給兵、そっちはどうだ」

「大丈夫だ。無事届いた」

「歩兵、オマエは」

「作戦通り」


 黒い建物を抜け出し、簡単な言葉を交わす仲間の元に降り立つ。

 同じ顔の、隻眼の奴がこちらを向いた。


「斥候、どうだ」

「問題ない」


 一言答えて、差し出された水を受け取る。

 啜った水は、どこか赤黒かった。






 *






 突入した建物はどこまでも黒く、内部に居るのは見慣れた仲間と、見慣れた顔の敵。

 ここは機械だけが詰まった、いわばただの黒い箱。

 敵はこの黒い箱をを死に物狂いで守り、仲間は死に物狂いで攻め落す。

 何の意味があるのか、なぜそれをしなくてはならないのか、何も知らない。誰もそれを考えない。


 考える意味など 無い。


 そういえば、この顔以外の人間に出会ったことがないな。

 ふと、馬鹿な考えに意識を削がれる。

 すぐに頭を振って、隅に追いやった。


 中枢機関の部屋に潜入し、仲間に合図を送る。

 突入した仲間はそのまま・・・。

 そしてその仲間を庇って撃たれ・・・。

 しかし庇ったはずの仲間は銃口をこちらに向けて・・・。


 最後に頭に浮かんだのは・・・。







 *







 光に包まれ顔を上げると、見た事のない建造物の土台部分に座っていた。

 そこから差し込む光はとても優しく。

 そこから見える空は、見た事のない色をしていて。

 

 建造物ではなく「樹」と呼ばれる生き物だと、教えてもらった。

 見える空の色は「青空」と言うのだと、教えてもらった。


 食べ物には様々な色があり、味があり、種類があり。

 服にも景色にも空にも、様々な色があるのだと知った。

 

 周りには、自分と同じ顔の者は誰一人として居ない。


 話す口調も、背の高さも、体形も、全てが違っていた。


 あの黒いロボットも、当然居なかった。







 *







 消えゆく記憶の中で、オレはふと考える。


 そういえば、あの白くて冷たいモノに名前があったと、この世界に来てから初めて知ったのだった。

 この話をアイツにしたときに、アイツは何故か嬉しそうに答えてくれた。 

 なんという名前だったか。


 『出来そこない』として処分され、荒野に捨てられていった同じ顔の仲間たち。

 そんな彼らを抱きしめるように、天から降り注ぎ続けた、あの白いモノの名前は・・・確か・・・。





                           5-13

次回メモ:ゴールド


いつも読んでいただき、ありがとうございます!

ちょっとずつブックマークが増えて行っている!ありがとござまっっしゃーーー!!!

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