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勇者だったのかもしれない  作者: ぷっくん
召喚者with俺
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名前と記憶の代償

 でかい叫び声の後、ピンキー(略)がこっちに走ってきた。上半身裸のピンクゴスロリスカート姿で、頭の獣耳を両手で引っ張っている。


「取れない! これ取れないよ!」

「きゃあぁぁぁぁぁ!!! こっち来ないでくださいぃぃ!!!」

「ちょ、そんな恰好でこっちに来ないでくださいよ!」

「最低ですな」

「最悪じゃの」


 口々にしゃべりまくる皆。ちなみに上からピンキー(略)、若葉、黒髪、王、じいさん。銀髪は寝てる。

 耳を引っ張りながら奇声を上げるピンクスカート半裸を、黒髪と俺でなんとか押さえつけ落ち着かせる。

 じいさんは手を貸してはくれなかった。おいジジィ。

 若葉は泣きながら木の幹の向こう側に走って行った。


「うっうぅっ」


 ピンキー(略)も泣いている。獣耳もたれている。一体どうしたって言うんだ。

 じいさんが優しく聞き出している。離れて見守ろう。


「なんかの、カツラとつけ耳を外そうとしたら取れないそうじゃ」

「うぅぅ。引っ張っだら痛いじ、メイクも、ウグッ・・・取れないっじ」


 泣きじゃくるピンキー(略)。

 女みたいな顔した奴が半裸でスカートで泣きじゃくるって迫力あるな。

 俺は関係ないことを考えていた。


 *


 結局ピンキー(略)のカツラと獣耳、尻尾は取れなかった。というか直接生えてた。

 ピンキー(略)は自分で尻尾を動かしたり髪を引っ張ったりして、ため息をついていた。顔も化粧では無く、顔自体がピンキージュエルになっていたそうだ。


「きっと願いが長すぎて、途中までしか聞いていなかったんじゃの」

「そんなぁ・・・俺のピンキージュエル・・・」


 そこに銀髪が起きてきて尋ねる。


「なあ、さっき≪ジュエルは細身で巨乳の女の子≫とか言ってたが、お前それ大丈夫なのか?」


 サッとピンキー(略)の顔色が変わり、スカートをたくし上げてパンツを・・・


「余所でやれぇぇぇ!!!」


 いつの間にか戻ってきていた若葉の飛び蹴りが、脳天に炸裂した。


 *


 ピンキー(略)が泉の布の囲いから戻ってきた所で、じいさんの異世界講座の続きが始まった。

 ピンキー(略)はホッとした顔で静かに涙を流していたから、多分大丈夫だろう。胸も男だったし。

 まあ・・・好きな女の子を作ろうとしたら、自分がその子になってたんだ。ショックも受けるわな。


 ゴスロリは脱いで、兵士の服を借りている。よくある歩兵の服って感じだ。

 銀髪は寝ながらでも皆の話を聞けるらしい。なにそれすごい。


「さて、おぬしの記憶が無い事についてじゃったの」

『あぁ、大体じいさんのデコピンのせいかと思ってる』

「違うわい!

 ふむ、おぬしの消えた記憶を覗ける訳では無いから詳しくは分からぬが、おそらく此処に来る前に負った怪我を治す為に使われたのではないかの。」

「それだと、僕らも記憶が消えてませんか?」

「ふむ、おぬしらニホンから来た者は身体的損傷だけだったのじゃろう。それくらいなら代償無しで治せるわい。

 おそらくこの者は・・・魔術的損傷を受けておったのじゃな。

 呪い。それに準ずるものを受けておって、それの解除に記憶を代償にしたのじゃ。強力な呪いは 魂に直接刻み込まれるからの」


 じいさんの話を聞きつつ思う。

 記憶を代償に使わねばならない呪いを掛けられたって、よっぽどヤバい相手を怒らせた事になってるな、俺。

 あれ?でも・・・


『なあじいさん。俺、思い出とかの記憶は無いんだが、呪いとか魔法とかの記憶はあるようなんだ。なんでだ?』

「あぁ それはな、記憶と知識は別だからじゃよ。知識は残ってるはずじゃ。今は思い出せなくともな」

『そっか・・・』


 そこに獣耳を伏せたままのピンキー(略)が涙目で聞く。


「ねえ、君の世界に獣人っていた?」

『いや・・・そんな耳と尻尾を持った種族は居なかったはず』

「ちなみにこの世界にも居らぬぞい」

「オレも見たことないな。」

「やりましたねピンキーさん! 唯一無二の存在ですわ!」

「若葉さん、ピンキーさんが泣いてますよ?」


 皆に居ないって言われてまた泣き始めるピンキー(略)。

 てか皆にもピンキーって呼ばれていた。もうお前これが名前でいいんじゃないか?

 ちなみに俺の言葉は若葉が伝えてくれている。シルフ3匹目だ。(匹でいいのか?)


「そういえば」


 黒髪が気付く。


「僕たち、名前どうします? 王様やこの国の名前も知りませんし、若葉さんしか聞いてませんよね」

「わたくしの名前でしたら、あざ名ですよ? 国も、正式な名前は公表されていません」


 若葉の答えを受けて、王が続ける。


「はい。この国、世界の文化として正式な名前を公表する風習はありません。

 真の名を知られると魔王に呪術を掛けられるといわれておりますので。

 そのため市民達は基本的に名前で呼び合いませんが、若葉のようにあざ名をつける場合もありますな」

「ちなみにさっきワシが風の妖精を≪シルフ≫と呼んだのは、おぬしの考えを読んだからじゃよ。ホッホッホ」

『やっぱ読んでたんじゃねえかよジジィ』

「ホッホッホッホ!」

「ではピンキーさん達の真の名はどう致しましょう。世界樹の精霊様がお付けしますか?」

「いや、取られているとはいえ真の名はすでに持っておるからの。今更変えられんわい。

 後で呪術に対する防護の術を授けるのでな。心配しなくてええぞい」

「では僕達であざ名をつけましょう」


 ピンキー(略)はピンキーで決まった。よかったな、(略)が取れたぞ。

 最初「バルムンクとかシルバーファングとかがいい」といっていたが、みんながピンキーピンキー呼んでいたので諦めたようだ。向こうの方で黄昏ている。


 黒髪はサッカーが好きだということで「シュート」が良いと言ったが、皆が心で黒髪と呼んでいた為、黒と蹴るを合わせて黒蹴≪くろけり≫って呼ぼうって事になった。

 ちなみに漢字の案はピンキーが出した。日本語で黒髪と語呂も似ているらしい。黒蹴は最後まで抵抗していたが、


「シュートって意味の蹴りが入ってるからいいだろ」


 と低い声でピンキーが呟き、静かになった。


 銀髪はここまでの流れを見て、


「(変な名前を付けられるくらいなら)そのまま、銀≪ぎん≫でいい」


 と言った。言葉の前に変な間があった気がする。


 そして最後に俺の番だが・・・皆が俺の顔を覗き込んでいる。

 なんか相談してるけど、俺も混ぜて? 変な名前つけないで?

 このメンバー(俺も含めてだけど)命名スキルが壊滅的なんだよな・・・。


 そして決まった俺のあざ名。


「あなたの名前は≪ニルフ≫ですわ!!!」


 ニッコリ笑った若葉が発表した。


王の国は≪東の大国≫、王は≪東の国王≫と呼ばれています。

次回メモ:武器


読んでいただいてありがとうございます!

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