不思議な部屋
走る。
ドアを開ける。
また走る。
またドアを開ける。
階段をかけ上がる。
階段をかけ下がる。
ドアを開ける。
一体いつになったら、外に出られるのか。
山の奥にひっそりと佇む屋敷に遊びにきたが、中は迷路のようにいりくんでいて玄関にすら戻れない。
さっきから長い廊下に出ては奥にあるドアを開けての繰り返し。
もしかしたら、同じところをぐるぐる回っているのかもしれない。
それでも不思議と不安や恐怖感は抱かなかった。
むしろ......。
またドアを開ける。
ドアの先は長い廊下ではなく、舞台のある大きなホールにでた。 舞台には、誰もいないのにスポットライトが当てられていた。
何となくすぐ近くの席に座ると、オーケストラによる演奏が始まるとともに劇が始まった。
人型に作られたハリボテの板をひっくり返したり、別のに換えたりして劇が進んでいく。
劇が進んでいくいくうちにあることに気がついた。
この劇、これまでの俺のことじゃん!
そう分かってしまうと、途端に劇に対する興味が消え失せ、席を立った。 すると音楽が止み、劇も途中なのに終わってしまった。
なんだろう、と思いながらも、むしろ好都合だ。
また走ってドアを開ける。
今度は、今までと同じレッドカーペットの敷かれた長い廊下にでた。 ホテルのように左右にいくつものドアがある。
取り敢えず走る。
この廊下にでた時の対処法として、奥のドアを開けるようにしてる。 それが正解ではないが、俺が決めたルールだ。
一番手前のドアを横切ると音が鳴った。
ピンポーン
ゲコゲコ
さすがに足が止まる。 また引き返してさっきのドアを横切る。
ピンポーン
ゲコゲコ
インターホンとカエルの鳴き声。
ニッと笑い、奥まで一気に駆け抜ける。
ワンワン、ニャー、ヒヒーン、モォー、キンコーンカンコーン、ブィーン、パチパチ、コンコン
犬、猫、馬、牛、学校のチャイム、掃除機、拍手、ドアのノック
いろんな音を鳴らし耳に音を入れながら奥のドアを蹴り開けた。
不思議だ。 普通ならあり得ない。
でも
楽しい
また、次のドアを目指して走る。