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平行世界で国づくり  作者: 高槻 智和
第一章:目覚めた先は平行世界!?
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7.領内視察#1

翌日、公邸の寝室で目を覚ました俺は部屋に貼ってあった地図を目の前にして考え込んでいた。

ここ、メラーラの街は元の世界で言うドイツの都市フライブルクの付近にある。

伯爵領第二の都市はストラトブールでこれは元の世界と名前も場所も変わらない。

他にもミュルーズ、バーゼル、チューリヒなどほとんどの都市の名前と場所は一致しているようだ。

スイスは存在せず、帝国はアルプス山脈を境に南はサンマリノ皇国と国境を接している。


さて、現代の社会を支えるのに必要不可欠なものはなんだろうか?

それはライフライン、すなわち水、エネルギー、通信、交通だ。

つまり、これらの要素を発展させれば自ずと領内の経済は活性化し税収も増えるはずである。

まずはライフラインの整備を目指そう、と考えたところでカールが入ってきた。


「おや、もうお目覚めでございましたか伯爵。

本日の予定ですが、午前は周辺の農地見学で午後は商会の見学後に市内散策の予定となっております。

朝食は下の食堂にご用意してあります。

それでは私は官邸の前に馬車を廻しておきますのでそこでお待ちしております。」

と言って早々と出て行った。


よし、まずは朝飯だ。

そう自分に言い聞かせ、俺は食堂へ向かったのであった。



朝食を食べ、馬車で市外へ向け出発したは良いもののすぐに渋滞に捕まってしまい這うような速度で進む羽目になった。

これはネックとなっている五叉路の改良を含めた市内交通の改善が必要なようだ・・・。


そんなこんなで時間を無駄に費やしたが昼前には農地の視察を行うことができた。

現在、作業をしていた農夫を掴まえて話を聞いているところだ。

「作業中すまないんだが、ここの農地では何を育てているのか教えてくれないか?」

「はい、伯爵様。あっしの畑では一年目に大麦、以降クローバー、小麦、かぶの順番で四年ごとに耕作を行っております。

この最近広まった農法のおかげで収穫量が増え、家畜も飼えるようになって生活にゆとりがでてきました。」

...驚いたことに既にノーフォーク農法は実施されているようだ。

これ以上は化学肥料の投入ぐらいしか思いつかないが、これはまだ生産基盤がない今は行うことができないから俺にできることはなかった。

「そ、そうか。どうもありがとう。」

若干引きつった顔で言葉を返しながら俺は早々と馬車に退散したのであった。


メラーラに戻り、昼食を摂った俺は今度はすぐ近くにある領内の大手商会に出向いていた。

このクルップ商会は領内で一番の規模を誇っており、かなりの税収を納めてくれている有り難い存在だ。

店内に入り商品を眺めていると二十代ほどの若い男が揉み手をしながら近づいてきた。

「いらっしゃいませ伯爵。私が番頭をしておりますクルップと申します。

本日は当商会の視察を行われるとのことですが、何か当商会に問題でもありましたでしょうか?」

こいつが番頭だったのか。若いからつい下っ端かと思ったぜ。。

「いやいや、問題なんてないよ。

今日は領内の経済を肌で感じ取りたくて来ているだけさ。

そちらこそ最近困っていることは無いのかい?」

「そうですね・・・。

ここ最近の景気が良いのは我々にとっても大変喜ばしいのですが、それに伴った交通量の増加によって街道が混雑して商品の入荷が遅れることが頻発しています。

できれば街道を拡張していただけると助かるのですが・・・。」

「わかった。早急に検討しよう。

特に混雑のひどい区間はどこかね?」

「ここ、メラーラからストラトブールを結ぶ街道とそこからワルター侯爵領を経由してルールまで至る道です。」

「かなり長いな。これは対策に時間がかかりそうだ。

忙しい中失礼したね、これからもよろしく頼むよ。」

「こちらこそどうぞよろしくお願いしますよ、伯爵。」

そう言って俺は店を出て歩いて街を見て回ることにした。


渋滞しているのは市内だけだと思っていたが、なんと街道ごと混雑していたらしい。

街道を拡張してもスピードアップがされるわけではないし経済効果は限られている。

だが、俺は街道を行く馬車よりも効率的で速度を出すことのできる交通手段を知っている。

そう、それは鉄道だ。

産業革命以前の時代であるここでは動力の確保に苦労しそうだが、しばらくは馬車鉄道とでもしておこう。


そう考えながら街を歩いているとやたらと貧しい身なりをした者が多いことに気付いた。

すかさず執事をつかまえ、質問する。

「カール、ここ最近の領内は好景気と言う話だったが彼らはいったいどうしたのかね?」

「彼らは出稼ぎのために農村から出てきたのは良いものの、仕事なかなか見つからず困っているのです。

農法の改善によって収量が増え、労働力として余った農村の人々が出稼ぎに出てこられるのですが働き口がなく、領内は労働力が有り余る状態にあります。」

なるほど、これを解決するには新たな産業を興すしかなさそうだが時間がかかりすぎる。

このままではせっかくの好景気に水を挿しかねない。

当面の間は公共事業を行って働き口を提供する他はない。

幸いにも造るべきインフラは多いしね。


こうして領内で公共事業としてのインフラ整備を進める方針が決まったのであった。

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