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平行世界で国づくり  作者: 高槻 智和
第二章:現代知識は偉大なり
17/19

15.資金不足と公債発行

1685年7月19日

ワッフェ鉄工所では蒸気機関の量産が順調に進み、製鉄所の方も整地が終わって建設に入ったところだ。

製鉄所よりも発電所を優先させて建設させているのだが、それでもまだまだ時間が掛かりそうだ。

早く電気を使えるようにして製紙産業を興したかったのだが致し方あるまい。

蒸気機関を用いた繊維工業も興したいのだが、そのための力織機や紡績機を開発する資金も無いしなぁ...と思いかけたところで気づいた。


お金がなければつくれば良いじゃないか。


まあ、正確には借金だが。

付け加えると我が伯爵家は自己資本比率100%でギリギリながらも黒字であるという超健全経営である。

元の世界でも借金になんて縁はなかったし、考えが至らなくてもしょうがないよね!!

と自分に言い訳をしながら計画を立てていく。


今回必要なのは主に力織機や紡績機を開発する費用だ。

幸いなことに、来年には発電所が稼働して製紙産業で莫大な利益が出るはずだから借り入れ期間1年程度の短期資金で十分に足りる。

好景気に沸く民間資金を活用するのだ。

というよりも、民間資金以外に当てが無いと言った方が正しいが。。

貴族から借りようにも皇位継承で負け組になった側に金を貸してくれる家は無いし、負け組貴族にはお金を貸す余裕なんてあるはずがない。

もし仮に勝ち組貴族から資金を調達できたとしても利子をぼったくられることは間違いない。

このような理由で民間資金に頼るより他はないのだ。

だが、巨額の資金がこの時代に民間から調達できるとも思えず、その結果が先ほど挙げた開発費用向けの資金だ。

鉄道建設の資金は民間からの調達では不可能だろう。


といわけで、早速公債を引き受けてくれそうなところに交渉に向かっている。

手始めにクルップ商会に顔を出してみる。

番頭のクルップに応接室に通してもらい、腰を下ろすと同時に話を切り出す。

「クルップさん、今回是非あなたの商会に売り込みたい商品があるのですが・・・。」

「ほう、それはどのようなものでしょう?」

「それがこちらになります。

こちらの羊皮紙を指定した額で買い取って頂けると、なんと来年には額面の5%を上積みした額が入ってくるんです!!

どうですかこの画期的な商品は!!」

「伯爵、それは世間一般では借金と呼ばれるものだと思うのですが。」

とクルップ氏がジト目で言う。

いや、わかってたよ?

さすがにこの売り込みは駄目だってことぐらい。

だが、ここで負けるわけにはいかんのだ・・・!!

「いやいや、何を言っているんだね君。

これは公債というもので伯爵家が新たに考え出した借k...ビジネスの一種だよ。

君がこの公債を買い取ってくれたお金を私は領内の開発に使う。

そう、これは投資なのだ。断じて借金などではないのだ!!」

そう自信満々に言い切るとクルップ氏は溜め息をつきつつ言葉を発した。

「はぁ・・・。で、伯爵その投資とやらは確実に回収できるんでしょうね?」

「もちろんだとも君。私にははっきりと成功するヴィションが見えているのだからね!」

そう答えを返すと彼はしばし考え込んだ後にこう言った。

「わかりました。その投資とやらをうちで引き受けましょう。

ですが、条件があります。

まず一つ目は担保の確保。

投資が回収できないと判断した時点で伯爵家の資産を差し押さえさせて頂きます。

二つ目は見返りの割り増し。

この条件でははっきり言ってリスクの割にうま味が少ないです。

貴族相手の金貸しは踏み倒されることが多々あるのでもう少し見返りが

欲しいですね。」

クルップ氏はまだ若いながらもかなりしっかりとしているようだ。

「わかった。条件を呑もう。

ここから先は他言無用で頼む。

この世界で紙は高価で貴重なものだ。

だが、もっと質の良いものが大量に生産されるようになったらどうだろうか?

今、私が言えるのはこれだけだ。」

「まさか伯爵は紙の大量生産をする方法を見つけたと・・・?」

「さあ、どうだろうね。

少なくとも今ここで言えることではないな。

それでは私はお暇しよう。

今後もクルップ商会の更なる躍進を願っているよ。」

そう言って私は商会を後にした。


にしてもまさか全額を引き受けてくれるとは思わなかったなぁ。

最初からこの額は無理だと思っていたから徐々に引き下げようと思っていたのに。

この伯爵家への領民の信頼を台無しにしないように頑張らなくっちゃ。

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