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平行世界で国づくり  作者: 高槻 智和
第二章:現代知識は偉大なり
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12.鉄道敷設計画

1685年4月10日

蒸気機関の開発を依頼してから早くも十日も過ぎた。

毎日、山積している領主の仕事に追われているが、他にもやりたいことが沢山ある。

例えば、容量の限界に達している街道に代わる交通手段の確保などだ。

街道をそのまま拡張したり平行路を整備する方法もあるが、それらの手段ではなく鉄道を建設しようと考えている。


鉄道、それは現代でも最大の輸送量を誇る手段である。

大量の物資を低コストかつ迅速に運べる優れた手段であり近代国家には欠かせないものだ。

また、この利点は軍事上の観点からしても非常に重要である。

大量の兵員と補給物資を必要なところにすぐさま移動させられるからである。

つまり、国内に鉄道網を整備することは有事にも役に立つということだ。


さて、そのように大変有用な鉄道ではあるが欠点もある。

まず、勾配や曲線に弱い。

そして、建設やその維持に多額のコストを要する。

また、大量の輸送量を誇るということは事故やその他の要因で不通となったときの被害が大きい。

これらの点も鉄道について考える上で避けては通れないだろう。


できれば領内に鉄道網を張り巡らせたいのだが、予算の問題もあり優先順位を付けなければならない。

今もっとも必要とされている区間はメラーラ~ストラスブールの間だろう。

領主館が置かれているメラーラとストラスブールはそれぞれ領内の1,2を争う規模の都市であり、その間の街道は近年の好景気の影響もあって既にパンク寸前だ。

それに、これらの大都市間をより短時間で結ぶことは経済発展を促進させるという多大なメリットもあるだろう。

日本の新幹線のことを考えてもみてほしい。

もし、新幹線が無ければ今でも東京~大阪間は約5時間。

この時間差ではとても飛行機に太刀打ちできない。

だが、空港の発着枠にも限りがあるし国内線に枠をより多く割り振ると国際線の便数を削らざるを得ない。

つまり、飛行機による輸送量にも限界があるのだ。

これでは旺盛な輸送需要を捌くことができずに人の行き来に支障をきたしていただろう。

そして、そのような状態で日本は果たして世界第2位の経済大国まで上り詰めることができたであろうか?

このように、鉄道とは大都市間で人、物を大量輸送することで経済に多くの良い影響を与えるのだ。


話を戻そう。

建設を予定しているメラーラ~ストラスブール間はライン地溝帯と呼ばれる構造の中にあって幸いなことにほとんど平地である。

鉄道にとって勾配は天敵に等しいものであるからこのことは非常にありがたい。

勾配を減らすために盛土や切り通し、トンネルを造る必要がなく建設費を圧縮できるからだ。

開業からしばらくは馬車鉄道となる見込みで速度はそれほど出ないだろうが、将来を見越して出来るだけ直線や緩い曲線で一直線に結ぶことを目指す。

何も途中の小さな村まで接続する必要は無いのだ。

鉄道があるところに人は集まり、街が生まれる。

日本では大阪~神戸を一直線に結ぶことを目的に何もなかった山側を突っ切った阪急電車などが行った手法だ。

それに対して、途中の村々を結ぶことを優先した阪神はカーブが多くなり現代のスピード競争では苦戦をしている。

この時代、日本のようにどこまでも建物が並んでいるということは無く、だだっ広い農地が続いているという場所のほうが多い。

そのため、建設に大きな支障は出ないだろう。

もちろん補償は行うが、いざとなれば領主の強権で立ち退きをさせることもできる。

これほど工事を進めやすい環境は他にないだろう。


それでは規格の説明をしよう。

軌間は1435mm。

日本で言う標準軌とする。

軌間が広いことは高速化や高い輸送力に繋がるが、同時に建設費も上昇させてしまうのだ。

最小曲率半径は2500m。

但し、建物が建ち並ぶ都市部ではこの限りではない。

曲率半径とは簡単に言うと曲線の半径のことだ。

最小曲率半径が2500mというのは東海道新幹線に匹敵し、これなら後年の高速運転にも対応できるであろうからだ。

もっとも、これはあくまでも在来線のつもりであって時速160km以上の高速運転を行うなら踏切などを無くした新線が必要だろう。

フランスのTGVは在来線と共通の線路を走っているが、速度差が大きすぎてしばしば事故を起こしているしね。

最急勾配は25‰。

‰(パーミル)とは1Km進むとに何mの勾配があるかを示す単位だ。

自動車では100m単位での%を使うが、鉄道ではこの単位だ。

日本にはかつて信越本線の横川~軽井沢間の碓氷峠に66.7‰の勾配があったが、この場合だと1km進む間に66.7mも登ることになる。

自動車では大した坂ではないが、鉄道にとっては異例なほどの急な坂でここを越えるためには補助機関車を2両連結しなければならなかったほどだ。

さらに補助機関車は碓氷峠を越えるためだけに造られた専用のEF63という形式の物だった。

ちなみにこの区間は北陸新幹線の長野までの開業によって廃止されてしまった。

話が逸れてしまった。

路線は非電化複線とし、複々線への拡張用地は確保しておく。

しばらくは複線で様子を見て、需要が多ければ増設すればいい。

単線では使い勝手が悪いので複線とする。

単線から複線は線路の数が1本増えて2倍になるだけだが、輸送量では2倍以上の増加になる。

これは複線であれば行き違いなどを考える必要が無くて停車時間を削減できる上に、列車間隔を詰められるからだ。

非電化なのはまだ発電所などのインフラが存在しないため。

レールは50kgレールとする。

これは1mあたりの重量が50kgのJR在来線にも使われている標準的な物だ。

枕木は木。

道床はバラスト(砂利)で構成する。

保安装置は馬車鉄道として運行する間はは未整備。

メラーラ~ストラスブール間は約60kmほどだから10km間隔合計で7つの駅を設置する予定だ。

途中駅の周辺はベットタウンとして住居を整備する。


このような鉄道を建設する計画だ。

予算は貯蓄を取り崩して補うことにする。

まあ、需要はあるようだしすぐに運賃収入も見込めるだろう。

こうして地図と睨めっこしながら建設の指示を出しているとまた一日が終わってしまった。

最近、一日が経つのが早い気がするよ・・・。

新幹線が開業する前では電車特急、こだま号が当時の東京~大阪間の最速列車でしたがそれでも6時間30分掛かっていました。


日本の国内線で運用されていた最大の機材であるボーイング747型機の定員が560席前後なのに対し、16両編成のN700系新幹線の定員が1323人。

実際には定員以上に乗ることもできますから、まさに飛行機と鉄道の輸送力は桁違いというわけです。


現存する最急勾配は箱根登山鉄道の80‰だそうです。

碓氷峠で使われていた車両は「碓氷鉄道文化むら」という施設で保存されていて今でも見ることが出来ます。

碓氷峠と言えば峠の釜飯なども有名ですね。

作者も是非行ってみたいものです・・・。

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