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平行世界で国づくり  作者: 高槻 智和
第二章:現代知識は偉大なり
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10.特定秘密保護条例

1685年3月6日


この世界で使われている暦もやはり宗教が絡んでいるものだった。

この世界で広く信仰されている宗教はレイシス教というものらしい。

総本山はサンマリノ皇国にある。


曰く、この世界は神がつくった。

人間は平等であり、他の動物は神が人間のために創ったものである。


で、現在その「人間」の定義について教会内で真っ二つに意見が対立しているらしい。

一方は、神の創られた「人間」とは白人のことであり、黒人や黄色人種はそれに含まれないから奴隷としても良いと考える過激派。

また一方は、「人間」とは言葉を使い互いに生殖可能なもの、つまりホモサピエンスだとする穏健派。

この二派に分かれて争っているようだ。

まあ、内容はともかく広く信仰されているのは事実なのでこれからもこの暦を使うことにする。


整理すると

3日 俺、転生する

4日 メラーラの街まで移動

5日 領内視察

という流れで、今は3月6日の朝である。


領内の状況を把握したわけだし早速現代知識を使いながら改革を行いたいが、その前にやっておくことがある。


現代知識は偉大であるが故にそれを得た国が大きく国力を伸ばすことが考えられる。

そうなると諸国間でのパワーバランスが崩れ、戦争へとつながりかねない。

これが第一の懸念である。

第二に、現代知識が自由に流出する状況は唯一現代知識を使える俺、そしてメラーラ伯領のアドバンテージを早々と失わせてしまうだろう。

なまじ、工作精度が高く熟練職人が多いために蒸気機関などの構造が知られると瞬く間にコピーされてしまうだろう。

つまり現代知識の流出に歯止めをかけて、メラーラ伯領のアドバンテージを維持する環境が必要なわけである。


そのもっとも単純な方法は情報の流出に制限をかけることである。

幸いにも領主は司法、立法、行政という三権の全てを握っているので策は取りやすい。

というわけでまずは「特定秘密保護条例」を制定することにする。

これは現代知識を特定秘密に指定することで、それを流出させた者に対しその意図の有無を問わずに罰するというものである。

意図が無い場合を見逃すと酒場とかで口を滑らせる奴がいるかもしれないしね。

量刑はかなり重めに設定して強制労働20年の刑とすることにした。

できれば内偵をさせるために秘密警察や諜報部門を設けたいが、これから公共事業を連発することから少しでも節約をしたいので見送ることにした。

まあ、これほどの厳罰だし施行して直ぐに破る奴はいないだろう。

ちなみに、「法」ではなく「条例」なのはこの条例が国として定めたものではなく、領主の権限で定めた領内でしか適用されない物だからだ。


情報の保護については取りあえずこれで良いとして他にもやっておきたい事がある。

領内視察の時に気付いたのだが、街が臭いのである。

表通りではそれほどでも無いのだが、裏通りや貧民層が住む地区では屎尿の臭いがする。

ひとまず、周囲に城壁がある都市部については許可業者による屎尿の回収を義務付けることにする。

業者についてはきちんと処理方法を調査して問題のない場合にのみ許可を与える。

妥当な処理方法としては発酵させて堆肥にするとかかな?

回収費用については住人の負担となるが、処理料金は行政による認可制とする。

あくまでも行政からの委託という形にはしない。

これは市場原理を導入することで業者の質の向上を目指すと同時に役人の癒着を防止するためだ。


ついでに、市場原理の導入と言ってもカルテルを結ばれては意味がないので「独占禁止条例」も制定する。

この条例はわざと恣意的な物にしている。

目障りとなった者を逮捕するにも名目という物はあったほうが良い。


この3つの条例は早速4月1日から施行することにする。

機密保護ができないと現代知識を使えないし、何よりも臭いのは嫌いだからね。


こうして現代知識を使った改革への地ならしが為されたのであった。

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