渡せなかった手紙
きょう、みきちゃんとけんかした。
わたしは、ごめんねって言わなかった。
だってわるいのは、みきちゃんだもん。
でもみきちゃんも、ごめんねって言わなかった。
わたしはおうちに帰って、ママにみきちゃんのことを話した。
「みきちゃんがわるいのに、みきちゃん、ごめんねって言わなかったんだよ?」
だけどママは、そうだね、とは言ってくれなかった。
「ごめんねって、言ってあげた?」
かわりに、ママはわたしにきいた。
「ううん、いってないよっ。」
わたしは、よこに首をふった。
「だって、わるいのは、みきちゃんだもんっ。」
わたしは、ほっぺをふくらませた。
そしたら、ママがわたしに言った。
「ごめんねって言わないのは、いいことなのかな?
わるくないっていって、みきちゃんにごめんねって言えない子は、いい子かな?
みきちゃんが、ほんとにみんなわるいのかな?
それにもしかしたら、みきちゃんも、ごめんねって言えなかったのかもしれないよ。」
ママにそう言われて、わたしはよくかんがえてみた。
そして気づいた。
「わたしも、わるかったなぁ。」って。
だから、わたしはてがみを書いた。
みきちゃんに、ごめんねって言えるか、わからなかったから。
あした、みきちゃんにわたさなくちゃ。
そう思って、わたしはわすれないように、ようちえんのかばんの中にてがみを入れた。
つぎの日、わたしはてがみをちゃんともって、ようちえんに行った。
みきちゃんに、わたさなくっちゃ。
そう思って、ようちえんの中で、みきちゃんをさがしてた。
だけど、みきちゃんは、見つからなかった。
どこをさがしても、いないんだ。
だからわたしは、せんせいにきいてみた。
「ねぇせんせい、みきちゃん、どこ?」
すると、せんせいはかなしそうなかおになって、すこししたあと、わたしに言った。
「みきちゃんはね、くもの上にいっちゃったの。」
「じゃあ、いつ帰ってくる?」
わたしはつづけて、しつもんをした。
けどせんせいは、かなしそうなかおをして、くびをふった。
「もう、もどってこないんだって。」
みきちゃん、きっとおこっていっちゃったんだ。
わたしは、それをきいてそう思った。
はやく、ごめんねって、言わなくちゃ。
そう思って、わたしはせんせいに言った。
「せんせいっ、このてがみ、はやくみきちゃんにわたさなくちゃいけないの、
きのう、みきちゃんにごめんねっていえなかったから、いわなくちゃいけないのっ。
そしたらみきちゃん、いいよって、ごめんねって、言ってくれるかな?」
そしたらせんせい、すこしおどろいたかおになったけど、そのあと、わらってわたしに言った。
「じゃあ、ふうせんにそのてがみを付けて、みんなでお空にとばしてみよっかっ。
そしたら、くものうえにとどくかもしれないよっ。
そしたらきっとみきちゃん、いいよって、ごめんねって、言ってくれるよっ。」
そう言ってせんせいが、わたしにふうせんをふくらましてくれた。
そのあと、わたしはみんなとそのふうせんをおそらにとばした。
おそらにふわふわとふうせんがとんでいく。
それを見ながら、みんなでおねがいした。
みきちゃんに、とどきますように。
きっと、とどくと信じて。
あれから何年も経ったけれど、私は今大きな空を仰ぎ見て、雲の上に風船があるかどうか探しているよ。
その風船を、きっと笑った美希ちゃんが持ってくれていると信じて。
ねぇ、美希ちゃん。
手紙、届いた?
「――――ごめんね。」




