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三つのオルゴールは、俺の嫁を導くのだろうか。~彼女達は嘘をつく~

作者: 吉高 筒司
掲載日:2026/11/03

 俺は七色《ななしき》彩勢《あやせ》私立虹彩(こうさい)学園に通う高校二年、鎗剣道《そうけんどう》部所属のいたってモブな男子。


 俺には、それの記憶が全くない。

 《《それ》》。

 《《それ》》は三人それぞれ彼女達の手元にあるという。

 一つづつ合計三つのオルゴールが。

 それは小学校の頃、修学旅行で京都に行ったときに買ったオルゴール。

 自分の記憶の曖昧さに自分ながら嫌気が差しているところだが、確かそのきまぐれと言うか、修学旅行でハイになった気持ちが、ちょっとしたやさしさの後押しをしたのだろう。

 奮発して(機械式のオルゴール)を買ってしまった。


 で。


 何と、それをお土産として女の子に渡したというのだ。

 余りにも恥ずかしすぎるのだが、修学旅行のパワーはすごいもので、その余勢をかって渡してしまったという。

 少し他人のような言い方だが。

 ここからが本題で。

 誰に渡したのか分からない。

 本当に分からないのだ。

 しかも三人、目の前にいる。


 三人に。


 幼馴染の紺箔《こんぱく》 恋奈《れな》。

 従姉妹の紫御《しおん》 恋色《こい》。

 先輩のお姉さんの紅来《こうらい》 樹恋《じゅれ》さん。

 繰り返すが、

 本当に分からないのだ。

 確か一人は紺箔恋奈《こんぱくれな》、俺と同い年で近所に住んでいる、確かな修学旅行に行くことが出来ず、それでおれが可哀想と思って渡したという。

 一人は紫御恋色《しおんこい》、俺のいとこ、俺の親父の妹の娘で二つ下の中学三年生、俺になんだかんだと付きまとって来る、伯母さんがブラコンで良く俺の親父にベタベタしに来る。それで恋色がついてきて同じ様に付きまとって来る。他人がきいたらうらやまとかなんとか言いたそうなシチュエーションだが、実際当事者になってみろといいたい。

 で、おれがそのオルゴールお土産として渡したらしい。

 あと一人は近所に住む部活動のOB紅来轟刄(こうらいごじん)のお姉さんの紅来樹恋《こうらいじゅれ》さん、近所に住んでいてお姉さんとは同じ幼稚園幼馴染でもあり、小学校の時中学生の樹恋《じゅれ》さんに渡したという。


 で、


 俺にその時の約束を果たしてくれとも言ってきているのだ。

 約束とは、それぞれ、その時おれはプロポーズをしたと言う「結婚しよう」と。

 高校に入ったら、迎えに行くといったらしい。

 俺にはその記憶がないのだ、全く。

 その証として、このオルゴールを渡したという。

 オルゴールの曲目は「恋は水色」。

 さてどうしたものか。


 切なく響くオルゴールの音。

 俺の心も切なく響いている。

 眼の前では言い争っている。

「七色彩勢君、私と結婚するって約束したじゃない」

「いいえ、私とです」

「何言ってんの、年長のわたしでしょ」


 喧々諤々、喧喧囂囂。


 あれ、このシチュエーションどこかで。

 あ、幼稚園のお遊戯会か何かで、劇をすることになってお姫様の相手の俺をめぐって言い争っていた。

 取っ組み合いの喧嘩に発展仕掛けて。

 そうだ彼女達は手段を選ばない。

 どんなことでもしていた。


 あ、そう言えば。


 思い出した、おれは修学旅行直前まで交通事故で入院していた、その時記憶が混濁していた。

 その時三人が俺のベッドのそばで言い争っていた、この目の前の様に。

 だれが俺のお嫁さんになるか。

 その時おれはすべて理解した。

 オレが交通事故で、記憶があいまいだった事を利用して。

 彼女達は示し合わせて、同じオルゴールを買って来てオレが渡したように見せかけていたのだ。


「オーイオレ、思い出したぞ」


 彼女達は示し合わせた様にギクッとしていた。

「アー私何だか用事を思い出したわ」

「奇遇ね、私も」

「そう言えばおにいちゃんと約束があったの、忘れてた」

 三人はそそくさと帰り支度を始め。

 我先にと帰って行った。

 嵐が去った後のようだった。

 ひとり残された居間でもう一度思い返した。


「待てよ、確かにオルゴールは買った、それは紛れもない事実だ、そして一つは確かに渡した」

 そう思った時、まだまだこの話は終わらないだろうと半分諦めた。


 今まで騒がしくした残響が。

 彼女達が残した飲みかけのコーヒーカップが。

 それと残り香がほのかに残る空間が。


 まだまだ、この先続くだろうと暗示していた。


 さて。 

目を通していただき感謝申し上げます。ありがとうございます。現代ラブコメっぽいものを初めて紡いでみました。いかがでしょうか?感想、評価等賜れば大変励みになります。

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