水の知らせ
『ピチャン……ピチャン……』
三日前くらいだろうか。
私の家で、よく水滴が落ちる音がする。
最初に気づいたのは、リビングで食事をしている時だった。
「あれ、ちゃんと閉めなかったのかな」
ほっといてもよかったけど、私は台所へ向かった。
でもね、おかしいんだよ。
「えっ……音がしてたのに、水滴が落ちてない?」
そう、そんな跡はなかったのだ。
不思議に思いながら、その日は過ぎた。
だけど、次の日も水滴の音は聞こえた。
今度は、私が出かける時だった。
玄関の近くには、トイレと脱衣所、風呂場がある。
その全部を調べても、水が漏れてる形跡はない。
ここまでくると、ちょっとおかしいのは、私でもわかる。
そう思っていたけど、昨日のことだった。
その日、家族はみんな出かけていた。
だから、家には私だけだった。
なにもやることがなくて、ボーッとテレビを見ていたんだよ。
そしたら、外から雨の音が聞こえたんだ。
しかも、ゴロゴロと雷の音までしている。
「やだ……雷鳴ってるじゃん」
私がげんなりしていると、また聞こえたのだ。
『ピチャン……ピチャン……』
「えっ、またこの音?」
雨の音ではない。
明らかに、家の中から聞こえてくる。
すると、玄関の開く音がした。
「だっ、誰……」
私は、急に怖くなった。
だって、両親は遅くまで帰ってこないし、姉は遊びに出かけている。
すると、大きな音を立てて、雷が落ちたんだ。
そのせいで、テレビも電気も消えた。
つまり、ブレーカーが落ちたのだ。
暗い中、足音は近づいてくる。
そして、ピカッと雷が光った。
その瞬間、私の前に、びしょぬれの女の人が立っていたんだ。
「ぎゃぁーっ!」
「いやぁーっ!」
私が叫ぶと、また暗くなり、足音が遠のいていく。
「あれ?」
なんか、違和感あったな。
今、相手も叫んだよね。
私がかたまっていると、明かりがついた。
私はほっとしたけど、すぐそばには水たまりができていた。
「あれ……でも、なんで明かりついたんだろ」
「もう、急な雨でオシャレが台無しよ!」
「あっ、お姉ちゃん!」
そっか、お姉ちゃんがブレーカーを上げたのか。
つまり、さっきのは姉で、雨に濡れて帰ってきたというわけだ。
私は真相がわかり、またほっとした。
「じゃぁ、お姉ちゃんは私の声にびっくりしたの?」
「違うわよ……」
すると、姉はとんでもないことを言ったんだ。
「窓の外に、子どもみたいなのがはりついて、じっと見つめていたのよ」
えっ、ここ六階ですけど?
★★★
その日から、姉の具合が悪くなった。
最初は雨で濡れて、風邪をひいたと思っていたけど……
「病院に行っても、原因がわからなかったのよね」
「……えっと、なんで私にそんな話をするの?」
「だってミカサちゃん、霊が視えるって、みんな言ってるよ?」
「まぁ、否定はしないけど……」
この子は、斎藤ミカサちゃん。
私のクラスメイトで、ちょっと変わった女の子だ。
すると、ミカサちゃんは姉のことを聞いてきた。
「お姉さん、ここ最近どこに行っていた?」
「確か、近くの川でバーベキューしたとか言ってたなぁ」
「その川って、ここじゃない?」
そしたら、ミカサちゃんはスマホを操作して、あるニュースを見せてきたよ。
「あっ、そうだよ!」
「やっぱりか……」
すると、ミカサちゃんは斜め上を見て、なにかを話してる。
そして、私の方を見た。
「そこでは、水難事故があったようね」
「水難事故?!」
「お姉さん、そこでなにか拾ったりした?」
「……そういえば、きれいなビー玉拾ったとか言ってたよ」
「たぶん、それに思念が宿ってたのね」
「なっ、なんとかできないの?」
「じゃぁ、明日それを持ってきてくれる?」
「えっ、なんで?」
「知り合いの人に、お払い頼んでみるから」
「あっ、ありがとう!」
私はすがる思いで、彼女に姉が拾ったビー玉を渡した。
すると、少しして姉は元気になったんだ。
水の音も、あれから聞こえない。
ミカサちゃんに話したら、こう言ったんだ。
「よかったね。お払い、うまくいったのかしら」
なんて、笑っていたよ。
あっ、こうも言っていたんだっけ。
「それと、きれいだからって、なんでも持って帰らないことね」
しっかり、注意されました。
あんな風に言ってたけど、私は考えた。
もしかしたら、ミカサちゃんがどうにかしてくれたのかな?
まぁ、彼女に言っても、きっとはぐらかされるだろうけどね。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!




