ばれてる?
「で、あいつのことどう思ってんの?」
唐突にそう聞かれて、僕は一瞬だけ息を止めた。
昼休みの屋上。
目の前には、同じクラスの佐伯。
「どうって?」
なるべく普通の顔で聞き返す。
佐伯はニヤニヤしている。
「いや、お前ら最近、距離近すぎ」
心臓が跳ねる。
“お前ら”って、つまり。
――あいつと、僕。
「別に。普通でしょ」
「普通の親友は、あんな触んねーよ」
触る。
昨日も、肩を組まれた。
その前は、後ろから首に腕を回された。
彼女がいるくせに。
全部、無自覚。
僕だけが意味を持たせてしまう。
「考えすぎ」
そう言いながら、手のひらが汗ばんでいる。
佐伯はじっと僕を見る。
「お前さ」
やめて。
「もしかして好きなんじゃね?」
鼓動がうるさい。
顔に出てないよね。
「は? ないない」
即答。
早すぎたかもしれない。
佐伯は少しだけ目を細める。
「ふーん」
その一言が怖い。
「まあでもさ」
佐伯が空を見上げながら言う。
「あいつも相当だよな」
「なにが」
「彼女いるのに、お前ばっか気にしてる」
ドクン、と胸が鳴る。
「お前が他の男子と話してるとき、顔怖いし」
……それは、気のせいじゃなかった?
「昨日だってさ、部活終わりに彼女待たせてんのに、お前探してたぞ」
知らなかった。
「“どこ行った?”って」
喉が乾く。
「親友だからでしょ」
かろうじて言う。
佐伯は笑う。
「それ、便利な言葉だな」
屋上のドアが開く音がした。
振り向くと、当の本人が立っている。
「なに話してんの」
無防備な声。
僕の隣に当たり前みたいに座る。
距離が近い。
佐伯が意味深に笑う。
「お前の話」
「俺?」
攻め――いや、あいつが首を傾げる。
「なんの?」
やめて。
何も言わないで。
僕は慌てて話を逸らす。
「別に、どうでもいい話」
あいつはじっと僕を見る。
ほんの少しだけ、不安そうに。
「変なこと言われてねーよな?」
その声が、少し低い。
「別に」
「ならいいけど」
そう言って、なぜか僕の手首を掴む。
無意識。
無自覚。
でも、独占みたい。
佐伯が吹き出す。
「ほらな」
「なにがだよ」
あいつは本当に分かっていない顔をする。
僕だけが、分かってしまっている。
もしかしたら。
佐伯には、ばれてる。
もしかしたら。
あいつにも、少しだけ。
でも。
「今日も一緒帰るよな?」
当たり前みたいに言う。
彼女がいるくせに。
「……うん」
断れない。
だって。
ばれてもいいくらい、好きだから。




