勇者が眠るチ。
ここは——ブレイド王国——。
その昔——勇者が、この地を降り立ち魔族を殲滅してから数百年の時が経つと、この国は人間で栄え世界で、もっとも英雄になりたい冒険者が集まる国となった。
そして、幼さがまだ残る白髪の彼も勇者を目指す。
その一人で、名前を【ショウ】と言う。
彼は、強者が集う。
このブレイド王国でも、1・2を争う有名なパーティーに所属している。
パーティー名を【獅子の牙】と言い……。
ここ数年の中で、この国で最も急成長を遂げた【Aランク】パーティーである。
そして、只今この国で最も勇者に近いと称される。
獅子の牙のメンバーは、リーダーで魔法剣士の【ブレイン】。
魔法剣士の【ブレイン】
《金髪で剣術が得意で、魔法も扱う》
続いて……
戦士の【ラルフ】
《赤髪で、剣や斧やハンマーなど多種多様な武器を使いこなす。凄腕のナイスガイ》
魔法使いの【クミン】
《黒髪の少女で、強力な魔法を使いモンスターを一掃する獅子の牙の最高火力》
僧侶の【レイン】
《青髪の美女で、回復魔法で人の体も心も癒す。回復と防御のかなめ》
そして、シーフの【ショウ】
《鍵開けで、扉や宝箱の鍵を開けたり。
サーチで敵や罠を感知して仲間に知らせる。鑑定で宝箱をミミクと見分けたり、食べられる薬草やキノコを見分ける。
他にも、パーティーが必要なポーションや装備を揃えたり。宿屋の予約を取る。いわゆる雑用要因である》
*
そんな彼らは、ただいま【ガバラ】の村へと来ていた。
ガバラの村は、勇者が生まれて——眠る地——だと伝えられている。
なぜ彼らが、その様な伝承のある村に訪れたかと言うと……
獅子の牙は、Aランクパーティーとして大いなる功績を残した為に
この度、勇者パーティーへと任命される事が決まったのだ。
そして、勇者に任命される戴冠式が行われる場所は、勇者が眠る地——ガバラの村と決まっていた。
そして、パーティーのリーダーであるブレインは村長に戴冠式の段取りを説明されていた。
「はい、流れ自体は勇者であるブレイン様が、この大岩に刺さった剣を抜く事で儀式は終了となります」
すると、ブレインが質問をする。
「これは、本当の伝説の剣なのか?」
「いえ、こちらは式典の為に作られた模造品となります。
なので、必ず抜けますので心配なさらずに……」
「はぁ? お前は、何を勘違いしている。
俺は別に、心配などしている訳ではない——ッ。
この村には、本当に伝説の剣があると言う噂を聞いた事があるから本物なのか聞いただけだッ!」
「そうでしたかッ。それは申し訳ない……お気を悪くさせてしまったのなら謝ります。
しかし、本物の剣はけして誰も抜く事が出来ないので、式典に使われる事は決してありません」
「おい待て——ッ……その言い方だと、本当に、あるのか? 伝説の剣が……この村に!?」
「勿論。ありますとも……
しかし、朽ちて錆だらけで……とてもとても伝説の剣とは言える品物ではありませんが……」
「構わん。案内してくれ!
一度、チャレンジしてみたい」
「式典は明日なので時間はありますから——。
それは、構いませんが……伝説の剣を見てもガッカリしないで下さいよ」
「分かった!」
ブレインが、そう言うと村長は獅子の牙を伝説の剣のある洞窟へと案内した。
村長が案内した! 小さな洞窟へと到着すると、そこには大岩に一本の剣が本当に刺さっていた。
獅子の牙の一行は、その剣に近づくと……
「……なんだ!? この剣、伝説の剣なのに——錆びて欠けてやがる。
伝説の剣は、神の金属オリハルコン製ではなかったのか?」
「私どもも、その様に聞いてはおります。
しかし、現状は錆びて朽ちております」
「これ……!? 引っ張ってみてもいいのか?」
「構いませんよ。
この剣を抜いた者には、英雄となる為の力が与えらると言う伝承から。
今でも、力自慢が何人も挑戦していますし。盗賊なども、この剣を盗もうと——あれこれやっていますが、折れたり曲がったりしたことは一度もありませんから」
「なら、めいっぱい力を込めても安心だな!」
そう言うと、ブレインは剣を握ると思いっきり力を込めた。
「ぬぬぬぬぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬゔぐぅ……
はぁ……はぁ……無理だ! 全く抜ける気がしない……
ラルフ、お前もやってみろ!」
「おう、任せておけ! 力自慢の俺が必ず抜いてやる」
そう言って、次はラルフが挑戦してみる事に
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬな——ッ!!!
無理だーーー!!!」
腕の血管が破裂しそうなくらい力を入れたラルフだったが、やはり剣はピクリとも動かなかった。
「クミン様とレイン様は、魔導師だから無理として……ショウ様は、チャレンジなさらないのですか?」
そう村長がたずねると
「それじゃー……次は、俺がチャレンジしてみるよ。ブレイン!」
「いや……お前は、やる必要はない」
「いや、でも、俺も剣を使える職業だし……チャレンジするくらいいいだろ!」
「いや、駄目だ。
お前には、絶対に無理だし……やるだけ時間の無駄だ!」
「少し触るだけじゃないか……俺だって、勇者を目指していたんだ。
チャレンジするくらい良いじゃないか——ッ。」
ショウが、そう言うと……
「いや、そう言う問題じゃない。
お前は、何か勘違いをしている様だが——お前は、このパーティーのあくまで雑用要員だ。
そんなお前が、伝説の剣に触るなど——おこがましいにも程がある」
「そんな言い方は、ないだろ! ブレイン……
一回チャレンジするだけだ。頼む——ッ!」
「お前……俺の命令が聞けないのか!?」
すると、ラルフが二人の仲裁に入る。
「二人とも、こんな場所で喧嘩するのは辞めろ! 明日は、戴冠式も控えている。
とりあえず、ショウはブレインに謝れ!」
「……はぁ? なんで、俺が謝んなくちゃいけないんだ——ッ!!!」
「あんたが、わがまま言ってブレインを困らせたからでしょ。早く謝りなさいよ!」
そう言って、クミンがショウに謝罪を求める。
「そうよ……
謝れば、寛大なブレインは許してくれるは——だから早く謝りなさい。ショウ……」
そうレインにも謝罪をうながされる。
「そうだな……。皆んなが、そこまで言うなら仕方ない!
ショウ……土下座で謝れ! そしたら、許してやる。
それが出来なければ、お前はパーティーから追放する」
「良かったな!」
「良かったわね」
「ブレインなら、許してくれると信じていましたわ!」
「ちょと待てくれ! 土下座って何だよ。
俺達、今まで一緒に冒険をしてきた仲間だろ。
こんな事で追放だなんて……」
「何を勘違いしているんだ?
お前の代わりなんて、いくらでも居る。パーティーに残りたかったら、早く謝れ!
そしたら、明日からも雑用として使ってやるよ。
小物風情が、意見なんか述べるんじゃねーよ」
その言葉に、ショウの心は——ボキッ——と音を立てて折れた。
そして、ショウは思いの丈を口にした。
「俺だって、戦闘では——お前達について行けなくなってきているのは、分かっている。
だから、その分を補う為にアイテムや情報収集などを頑張って来たつもりだ!」
「頑張った。頑張って来たって、頑張ったから仲間として認めてくれってか?
何の役に立ってない。お前をか……」
「何の役に立ってないって事はないだろ。
俺のスキルの鍵開けとサーチは、ダンジョン攻略に欠かせないスキルだし。
それで、何度も助けられた事だってあるだろッ!」
「お前、何だ!? その言い方は……」
「ショウ、ブレインに対して失礼よ!」
「ショウ、全部。お前が悪いブレインに謝れ!」
すると、クミンが……
「実は、私も思っていたのよね……
何で、戦闘で役立たずのショウの報酬も皆んなと一緒なのかって……」
「それは、その中からポーションや備品や宿代を出すって事で納得してくれたじゃないか。
それに、俺は報酬のほとんどを修道院に送っているから自分では、ほとんど使ってない」
「って事は、余ってるって事よね?
なら、そんなに報酬いらないじゃない。
その分、頑張ってる私達に回してよ」
「確かに、そうだな!」
「これからは、お前の報酬はカットだ!」
「お前達は、それを本当に言っているのか……?
言わせてもらうが、今回——獅子の牙が異例の速さで勇者パーティーに昇格するのも修道院への寄付金も大いに考慮されている。
なのにも関わらず、そんな事を言うのか? よく考えろ。お前達は、一度も寄付なんてしてないじゃないか——ッ!!!」
「ショウ……
今回、勇者パーティーに昇格するのは我々の実力が認められたからだ。
お前の手柄なんて一つもない……だから、お前は——つべこべ言わず謝って土下座するか、このパーティーを抜けるかを選べ!」
すると、ショウは拳を強く握りしめて——ッ! その場から走り去った……。
「逃げやがった!
アイツは、もうクビだな……」
「アレじゃ、しかたないな……」
「バカね。謝れは良いだけなのに……」
「ブレインの優しさも分からないのなら、もうパーティーとしてやって行くのは無理ですわ……」
そうして、ショウは獅子の牙をクビになり追放された。
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