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序
――さて、今宵は、常とは異なる話をしよう。
まだ、高天原の神々が、豊葦原中国と深く関わっていらっしゃった頃、それは美しく聡明な皇子様がおわした。名を青星様と仰られて、その通り、珍しい冴えた縹色の眼をお持ちでいらっしゃった。
皇子様らしい白銀の毛並みもさることながら、眉目秀麗で文武両道、素晴らしい御心映えで、お慕い申し上げない者はいないほど、大層優れた御方だったそうな。
お前も、神呼帝と聞けば、わかるであろう。――そう、あの天康の大水を治めた、偉大な天子様だ。
しかし、これには隠された話がある。悲しく哀れな恋の物語が――。