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永遠の愛を告げる

 俺は喪服に着替え、下の部屋の女性とふたりで、喪主である娘さんに挨拶した。


「大家さんご夫婦には、私達本当に良くしてもらっていたので、親を亡くした気持ちです」


「新しい土地で不安な俺にいつも声かけてくれて、本当に感謝してます」



 一階の寝室で、白い布団にくるまれて白い布をかぶせられている大家さんに手を合わせ、お線香をあげた。


「父も、お二人の事はよく話していたわよ。

今時の子は挨拶もしないのに、お二人は愛想もいいし良い子だって」


「奥様亡くされてから元気なかったみたいですけど、ご病気だったんですか?」


「もともと肺癌で余命宣告されていたのは、父の方なの。

なのに、母が先に逝っちゃって。

私も嫁いで遠くにいるんだけど、母が亡くなってからは時々様子見に来ていたの」


「そうだったんですか」


「どうしても家に帰りたいって言うから、2週間程家に帰ってきてたんだけど、連れて帰って良かったわ。

あの子とも挨拶できたみたいだし」


こんな時だというのに、俺はこんな事を聞いてしまった。


「彼女は今どこにいるんですか?」


「それがねぇ、父の遺体の布団の中に潜り込んじゃって、葬儀屋さんが不謹慎だって言って、外に連れ出しちゃったの。

さっきは庭にいたけど、私は嫌われているから。

そう遠くに行ってないと思うけど」


俺は、彼女が今どうしているのか心配だった。


「よく母が言ってたんだけど、あの子、男の人が好きみたいって。

私のこと冷たい目でみるのよって、よく言ってた。

父なんてメロメロだったわよ」


彼女が心配のあまり、俺の尻は少し浮いていた。

娘さんが、さらに続けた。


「そういえば、仁科さんって201号室よね?」


「はい」


「仁科さんの前に住んでいた男の人がね、引っ越しの時あの子を置いていったのよ。

事情もわからず、何週間も部屋の扉が開くのを待って泣いてたみたい。

それを見ていた父が、家に上げてご飯を食べさせたり、お風呂に入れたり、母が亡くなった後は一緒に寝てたみたい」



 大家さんの最期を感じ取り、大家さんに恩返しがしたかったのか?

最後の時まで抱かれることを選んだ彼女を、俺は愛しくてどうしようもなかった。


それまで、俺の家に現れなかったのは、元カノがいたからだ。

女の人が、何らかの事情で嫌いなのだろう。


そして、数ヶ月前突然俺の部屋の前に現れたのは、大家さんが入院していたからだ。

そしてもう一つ理由があった。

もう一軒彼女が入り浸っていたという中川さんというおじいさんが、最近施設に入れられてしまったのだそうな。


行く所が無くなって、あの部屋が懐かしくなったんだろうか?

そこで、俺は彼女と出会った。


元カノがいなくなってしまったことにも、小さな意味があったんだ。

彼女に出会えた。



「彼女を僕に下さい」


そう言って、俺は大家さんの家を飛び出した。

庭を隅から隅まで探すがいない。

そんななか、彼女は家の裏側からひょっこり顔を出した。

俺が近付こうとすると、逃げてしまう。


俺は、その場に座り込み、こう言った。



「俺はまだ若いから、そう簡単に死なない。

俺は、お前を絶対捨てたりしない。

俺と一生一緒に暮らしてくれないか!」



事情を全く知らない下の階の女性が現れ、不思議そうに俺を見つめる。


「えっ!誰にプロポーズしてたの?」


その女性の姿を見て、彼女はどこかに消えてしまっていた。




 3日後、俺はいつもの居酒屋で牧野にこの話をし、思いっきり引かれた。

その夜ほろ酔い気分で帰宅すると、



俺の部屋の前に、ねこがチョコンと座っていた。




「君、いままで何してたの?

ここ、おれんち。一緒に暮らす?」


話かけながら、鍵を開け扉を開けると、当たり前のように部屋の中に入ってきた。



そして、夜になると、俺の股間を緩急つけて刺激する。





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