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14 謝罪②

誤字脱字報告ありがとうございます。

お手数をおかけします(^^)

 思ったよりも冷たい声が出た。

 アデルの声音にセシリアが驚いたように顔を上げる。


「事情は十分理解しました。でもこれは私とアルベ……マクミラン小公爵との問題です。あなたに謝罪して頂く必要はありません」


「いえ…っ! それでは私の気がすみませんっ!」


「私があなたの気持ちを慮る必要があるのでしょうか? 本当に私を労るつもりであれば、少なくとも先ほどまでのような主張は出てこないと思います。あなたの謝罪は一体誰のためのものなのですか?」


「それは…」


 アデルの理路整然な物言いにセシリアがたじろぐ。


「あなたの謝罪は、ただご自分の気持ちを軽くしたいが故の言葉だと感じました。そのような謝罪であれば受けるつもりはありません。先ほども言いましたが、これは私とマクミラン小公爵との問題です。あなたに謝っていただくことではありません。彼は自分の意思で、私ではなくあなたを選んだのですから」


「でも! 私はただ…あの方の子を身ごもってしまった事を謝りたくて…」


「それこそ必要ありません。お二人が同意の上でされた行為で授かった命ですから。それから…あまりこんな事を言いたくはありませんが、あなたが今こうしている行為自体、私に対してどれだけ失礼であるか、理解していますか?」


「……え?」


「無知と無垢は違います。悪気がないのはわかりますが、いずれ公爵夫人としてあの方を支えていくのであれば、もう少し言動には気を付けた方がよろしいかと思います」 


「……っ」


 虚を衝かれ、セシリアの顔が赤く染まる。俯いて肩を震わせる姿に少々の罪悪感を感じ、そっとハンカチを差し出す。

 人気のない回廊とはいえ、人払いをしている訳ではない。時折通りかかる給仕や警備の兵が聞き耳を立てているのは一目瞭然だった。噂の的になるのも時間の問題だろう。


「あなたを責めているわけではありません。きつい言葉になってしまったことは……どうかご容赦下さい。さあ、お顔を上げてください。セシリア様」


 アデルは冷静に、優しい声音を心掛ける。


「何度も言いますが、私に許しを請う必要はありません。全てはマクミラン小公爵の決断ですから。私のせいで彼が貴重な時間と経歴を失ったのは事実です。むしろ謝罪するのは私の方です」


「アデル様…」


「今はまだ…お二人を心から祝福する気持ちにはなれませんが、それだけはご理解ください。全ては時間が解決してくれるはずです。あなたは彼のために、元気な子を産むことだけをお考えください」


「……」


 セシリアは俯き、泣いているように見えた。小刻みに震えるその肩にそっと手をかける。と、その瞬間、セシリアが突然膝を折った。苦し気に顔を歪めるとお腹を両腕で抱きかかえるようにうずくまる。そんな彼女をアデルは慌てて支える。


「大丈夫ですか?!セシリア様…っ」

「ごめんなさ……っアデル様…。ごめんなさい…」


 うわごとの様に謝罪の言葉を繰り返すセシリアの手を強く握る。


「誰か……っ。医務官を……!!」


 偶然通りかかった給仕にそう叫ぶ。騒ぎを聞きつけ、中庭から男女が数組、顔を出す。


「大丈夫ですか?セシリア様…っ」

「お、お腹が……っ」





本日もお読みいただきありがとうございました。


キリが悪くて少し短めですが……

次話投稿は本日19:00頃を予定しています。

どうぞよろしくお願いします。

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