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日本人だらけの異世界で  作者: 猫目 潤
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王都編⑩ なぜ

初めて書いた拙い文章を読んでくださって、本当ありがとうございます!

感想、評価、ブックマーク登録等応援をいただいて泣きそうになっています。

感謝をこめて。

【子連れママ 秋田 綾 視点】


目覚めたら木の板張りの部屋のベッドだった。

ハッとしたが隣には私の赤ちゃんがスヤスヤと眠っててホッとした。

目線を足元に落とす。

私と赤ちゃんが横になっているこのベッドも木だ。


昨日必死にこの「ぎるど」っていう建物に辿り着いた。

そこまでは覚えてる。


ここは外国なんだろうか。



──────────────



私は結婚して専業主婦になった。

育児は大変だけど、やっぱり我が子に愛情は芽生える。

バタバタと毎日過ごしていたら、旦那の浮気が発覚した。

浮気相手が家に乗り込んで来たのだ。


旦那は私と愛人に詰め寄られ、言った言葉が


「2人とも、仲良くしてくれ。」


は?


旦那の愛人はなぜか私を憎んでいる。

「旦那が別れたいと切り出しているのに離婚を承諾しない鬼嫁」

というのが私なのだという。


は?


私は 困り果てる旦那と、激情にかられる愛人を横目にスーツケースに取りあえず荷物を詰め込み、オムツやミルクのママバックを持ち、赤ちゃんをおんぶ紐で背負って家を出た。

「弁護士を通して連絡します。」

それだけ言い残して。


弁護士を探し、色々やって離婚調停へ。

大変だった。

何で私がこんな目に遭わなきゃいけないの!?って何度も思った。

悔しいから旦那から慰謝料踏んだくってやろうと決め、この期に及んで「離婚したくない」ってほざく旦那、その旦那の弁護士と私の弁護士との話し合いを何度も行い、やっとのことで離婚成立。


いくら慰謝料が貰えるからといっても、生活に余裕はない。

働く為にまずは赤ちゃんを預けられる所を探しに行こうと、新たに借りたアパートを出た瞬間だった。

私は地面に描かれた丸い輪っかの中にいて、その円の(ふち)が光ったのだ。


なに?と眩しくて目を(つむ)ってしまい、再び目を開くと、岩だらけの山のような場所に座り込んでいた。


えっ ここどこ?


赤ちゃんは背負ったまま。ママバッグも持ったまま。


風が強くて、赤ちゃんが泣き出して、現実なんだ、って分かった。


このままじゃ赤ちゃんが風に(さら)されっぱなしになる。

とにかく移動しよう。


あやしながら岩影に移動してはみたけど、まずは赤ちゃんを守ることを考える。


岩山を下りた私はそれからひたすら歩いた。

子供を産んでから外出時はスニーカーにしてたのも幸いだった。

地面は砂で時々遠くに岩がごろごろしてる。沙漠っていうのかな?

気温は灼熱じゃないから違うのかも。


人どころか動物もいない。昆虫だけが時々地面を走っている。

ママバッグに入れていた哺乳瓶で赤ちゃんにミルクをあげつつ、歩き続けた。

赤ちゃんは時々泣いた。オムツを変え、あやし、それでも歩いた。


ここどこなんだろう。コンビニもない。

車も走ってない。


何日何日も歩いて、景色がようやくアフリカみたいになった。

ライオンとか来たらどうしよう。

夜は少し気温が下がったけど、心配してたほどじゃなかった。

ミルクがなくなって、母乳も出なくて、見つけた小川の水でやり過ごした。

赤ちゃんはお腹を少し下したけど、脱水症状よりはマシ。

お風呂に入れてあげられなくてごめんね。

こんなママを許して。


泣きそうになるのを堪え、鼻をすすりながらよろよろとまた歩く。

私、何日眠ってないんだろう。

そういえば私もずっとお風呂に入ってない。歯磨きしたい。


遠くから何か音が聞こえたのは、そんな時だった。

最初は空耳かと思ったけど、やっぱり何か聞こえる。


あれ何?

馬車?

西部劇みたいな馬車?


「おぉーい」


運転(?)してる人が叫んでいる。

距離が近づいて、鶏頭(にわとりあたま)の被り物をした人が、叫んでいる。

なんで被り物?


「おぉーい、アンター!」


私は棒立ちになったまま。


鶏さんは私の前で馬に繋がった紐を引っ張り、「どぅどぅ」と馬を止めた。


そして私をマジマジと見て、


「あんた、日本人だね?」


と言った。


私はやっと会えた人(?)に嬉しくて、泣き出してしまった。

鶏さんは 「とにかく荷台に乗りな、狭いけどよぉ。」


「ありがとう、ございます」


赤ちゃんを抱え、乗り込んだ荷台には木箱に芋とか野菜がぎっしり詰まっていて、狭かったけど座る場所は何とかあった。

木箱に寄りかかり、赤ちゃんを抱き締めた私。


疲れて眠ってしまった私は、鶏さんに起こされた。


「赤ん坊にはワリィけどよ、ここまでしか乗せてやれねぇんだわ。あっちへ半日くれぇ歩けば街の門に着くから、『日本人ギルド』行けば助けてくれっからよ。」


寝起きでボーっとしていた私は鶏さんに腕を引かれ、赤ちゃんと共に荷台から降ろされた。


「じゃあな」


去っていく馬車。

「街」と指差した方角とは正反対へ向かっている。

わざわざ遠回りしてくれたのかな、親切だ。


しかし街へ歩き出そうとした私は、ママバッグや荷物を何も持っていないことに気が付く。

盗まれた?忘れた?どっち?

しかし振り返っても馬車はもう見えなくなりそうな距離だ。


赤ちゃんを抱いたまま、ポケットにはおんぶ紐だけ。

仕方なく私は街があるという方向へ歩き出した。

この情報も嘘かもしれない。でも他に目的地も分からない。


結果的に「半日」ではなく、1日半くらいで、遠くに城壁が見えてきた。

遠い・・・歩いても歩いてもなかなか距離が縮まらない。

ここでようやく何人かとすれ違うようになったが、すれ違い(ざま)、お互いにギョッとする。

相手は私がボロボロのよれよれの格好で、赤ちゃんを抱えていること。

私は相手が着ぐるみや被り物であること。


しかし私に対するそんな視線すらどうでも良くなってきた。

城門には外人が立っている。

列を作って順に通る人と会話をしているが、日本語だ。

私は自分の順番がきた瞬間、


「日本人ぎるどってどこですか!?」


ぎるどが何かは知らない。

でも日本人が居るなら助けてほしい。


私の必死な形相に、外人は道を説明してくれた。

お礼を言い忘れたが、もう意地だ。絶対辿り着いてやる。


街の通りは日本っぽくなかった。

歩く人は日本人もいたけど、着ぐるみも被り物もいた。

ここってどこなの?


私の姿のくたびれ感に驚く人もいたけど、遠巻きに赤ちゃんをじっと見てくる人もいた。


重い足で1歩1歩進み、教えられた「日本人ぎるど」の建物へようやく着く。

扉を開けて、日本人のショートカットの若い女の子が目に入った。

私と赤ちゃんを見て驚いている。


赤ちゃんが泣き出してしまった。

どうしよう、もう立っていられない。

気力を振り絞り、「たすけて」とその若い女の子に言った。


そこで私は赤ちゃんを抱いたまま、気を失った。



───────────────



アレッシオの日本人ギルドへ這々(ほうほう)の(てい)で入ってきた子連れママの日本人は、空き部屋のベッドにすぐに運ばれ、医者によって脱水症状と衰弱と診断された。


ギルド職員の生活魔法によって体は洗浄され、服も洗濯したてのようになった。

ママさんも赤ん坊も眠っていたが、口に白湯を少しずつ(さじ)で運ぶ。


日本人ギルドの留守を預かっていたヒカリは、女性職員と交代で看病にあたり、王都へ出張しているギルドの責任者であるミサオに魔道具で連絡を取った。


赤ん坊へ与えるミルクの代用品として、牛やヤギの乳、砂糖を溶かしたお湯、お(かゆ)の上澄みである重湯(おもゆ)がいいと教わり用意した。


先ほどママさんが目覚めたと職員から報告があったので、徐々に回復してゆくだろう。


ヒカリは再度ミサオに連絡を取る。


「ミサオさん、保護した子連れママさんの件ですが、」


珍しくヒカリの口調が真面目で、ミサオの声が緊張したものに変わる。


『どうしました?』


「あの母子(おやこ)、私の『日本人探索スキル』のサーチに引っ掛からなかったんです。」














ここまで読んでくださったことに土下座。

週1度程度のノロノロ亀更新にお付き合いいただき、本当に本当にありがとうございます!

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