王都編⑨ 流行は作るもの
やっとご令嬢と会えました。
感想、評価、ブックマーク登録等応援をいただいて泣きそうになっています。
感謝をこめて。
何だかんだで昨夜は寝てしまい、朝からシャワーを浴びることになってしまった。
あ、でもちゃんと化粧だけは落としてベットに入りましたよ。
先人の日本人のお陰で、異世界にもメイク落としと洗顔フォームがある。
ファンデーションもあるが、毒になる白粉は製造も販売も禁止となり、違反すれば罰せられる。確か 鉛が含まれてるものはNGだっけ?
ファンデーションも日本人の肌に合った色が売られている。
異世界の住民は亀くんなような獣人から 地球の北欧人も真っ青な色白さんまでいる。つまりファンデーションを買いに行けば「ここは画材屋か!?」と勘違いしそうなほどの色揃えなのだ。色揃えなんて言葉あるか知らんけど。
植物由来、肌に優しい~ふふん♪なんて上機嫌でうっすら化粧し、髪を乾かしてざっくり縛る。
まぁこんなもんでしょ、と朝食を摂る為に食堂へ行き、先に着席していた宰相サマ、キャメロンさんに朝の挨拶をする。リョウくんは壁の奥のキッチンで調理中のようだ。
私の姿を見たキャメロンさんは苦々しい顔で言った。
「アンタ、まさかその格好でハイレイン侯爵子女に会うつもりじゃないでしょうね?」
ハイレイン侯爵子女・・・関西弁のご令嬢のことだ!
「? そうですけど、ダメですか?」
キャメロンさんはギュイン!と宰相サマを睨んだ。
サッと目を逸らす宰相サマ。
「好きにしろ。」
宰相サマは私にではなく、キャメロンさんに言ったのだった。
──────────────
「まぁこんなもんね。」
フゥ、とキャメロンさんはひと息。
私は朝食後、キャメロンさんの客室へ問答無用でドナドナされ、キャメロンさんにあれやこれや着替えさせられ、化粧を施され、「平民日本人」から、「良い服着てます日本人」へ変身した。
もはやキャメロンさんがメイクアップアーティストに見えてきた。
姿見で己の全身を見て「おぉ」となるくらいは着飾ってもらった。
派手すぎず地味過ぎず、ちゃんとしたワンピースドレス。
階下へ降りて私の姿を見たリョウくんは目をパチクリさせていた。
「ミサオさん、メガネどうしたんですか?」
「キャメロンさんの魔法で一時的に視力上げてもらったの。」
つまり今 私は裸眼。
それなのについメガネをクイッと上げてしまう。
あ、今メガネしてないんだった、を繰り返す。癖って怖い。
メガネないほうがアイシャドウする時便利なんだよなぁ。
リョウくんはキラキラした目で「似合ってます!」と言ってくれた。
お世辞でも嬉しいよ。ありがとう。
私はご令嬢が寄越してくれた馬車に乗り、彼女の待つハイレイン侯爵の王都タウンハウスへ向かった。
──────────────
「ようこそ、ミサオ・ササキ様。お嬢様がお待ちです。」
ロマンスグレーの執事さんに案内され、前世系元悪役令嬢であるシャニア・ランビリスこと星野雪の待つ応接室へ通される。
「まぁ!まぁ!ミサオ様!素敵な出で立ちですわね!」
コホン、と執事さんが咳払いし、ご令嬢は苦笑いして
「こちらへお掛けになって。」
と私にソファを勧める。
私が腰掛けたのを見計らい、執事さんは一礼して退室。
入れ替わりに侍女さんが入ってきて扉を締め、お茶の準備を始める。
あ、強そうな侍女さんだ。
侍女さんがご令嬢を見て頷き、ご令嬢は一瞬目を伏せる。
「なんやミサオさん、めかし込んで!誰にやってもろたん?」
・・・このギャップよ。
遮音魔法かかった瞬間これだもんなぁ。
「それより馬車なんだけど!」
私はご令嬢の話をぶった切り、ここまで乗ってきた馬車の乗り心地をご令嬢に捲し立てた。
「何あの振動のない乗り物!お尻全然痛くない!どんな仕組み!?」
そう、馬車イコールお尻が痛い、と覚悟して乗ったものの、痛いどころか振動がほとんどなかった。馬車の構造にサスペンションを使っていたとしてもあんなに揺れないなんておかしい。
「もしかして魔法?」
「半分正解で半分違うねん。あれは『科学』やで。」
「科学?」
ご令嬢の説明によると、彼女の運営するスターフィールド商会の試作品で、日本人の知識のリニアモーターカーの原理と、この世界の魔術を組み合わせているらしい。
難しくて私には全然理解が及ばない。
ザックリ言うと座席が浮いてる、ってことか。
「つまりお高い?」
ダハハ!とご令嬢は大口を開けて笑い、「せやな。」と答えた。
これは先程の執事さんでなくても窘める姿だ。
貴族子女が大声を出すとか、騒ぐとか、良い顔されなさそうだもんね。
「んなことより、ミサオさん、ちょっとその服見せてぇや。」
「うん。」
私は立ち上がってくるりと回って見せた。
この国のドレスにはクリノリンがない。クリノリンとはドレスのスカートを広げる為の骨組みみたいなもので、かのマリー・アントワネットがドレスの下に着用してたとか。
確かにゴージャスに見えるかもだけど、実用的じゃないし機能的じゃない。そもそもマリー・アントワネットは中世じゃない。
コルセットもないし、ワンピースドレスもスカートがしゅっとしてて裾も長過ぎず踏まないようになっている。
ミニスカートは日本人の影響で庶民の間で流行り出しているのだとか。
「いいセンスしてはるわ~。ヘアスタイルもいつもと違ってええやん。」
てへへ。ご令嬢に褒められると照れるね。
「その生地、来年流行る予感がする。いや流行らせたる。ミサオさん、その服どこで買うたん?」
ご令嬢の目が商人になっている。
私は宰相サマの私邸で会ったキャメロンさんに、視力を上げてもらい今日はメガネなしで平気なことや、全身コーディネートしてもらったことを正直に話した。
「はぁっ!?吸血種!?王都の日本人ギルド長!?オネェ!?
アカン、どっからツッコんでええか分からん・・・」
脱力したご令嬢に私は同情しかない。
その時 私の腕の通信魔道具が鳴った。
チラリとご令嬢を見ると、どうぞどうぞと手で示してくれる。
では遠慮なく。
「はい、こちらミサオ・ササキです。」
『あー ミサオさん、お疲れ様でーす!』
この声と喋り方は・・・
「ヒカリさん?どうしました?」
アレッシオの日本人ギルドから通信だなんて、何かあったのかしら。
『実はですねー、転移日本人が来てるんですけどー』
「はい。それで?」
『保護を求めてましてー』
「いつも通りの対応では問題がありましたか?」
『実は赤ん坊とママさんでー、2人とも結構衰弱してるんですよー』
なぬ!?
「早く医者を呼びなさい!2階の部屋に寝かせなさい!」
『それは私の判断でもうやったんですけどー』
良かった。
「じゃあ何が問題なの?」
『赤ちゃんに飲ませる母乳って、どこから用意すればいいんですかー?』
横で会話を聞いていたご令嬢と、私は暫し顔を見合わせたのだった。
ここまで読んでくださったことに土下座。
週1度程度のノロノロ亀更新にお付き合いいただき、本当に本当にありがとうございます!
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