仕事が増えました
初めて書いた拙い文章を読んでくださって、本当に本当にありがとうございます!
いいね、ブックマーク、評価が増えていて驚きと感激で泣きそうです。語彙力ないですがありがとうございます!!
今回は少し長めです。
日本人ギルドの鍵は私とヒカリ、リョウくんが持っている。
職員専用の出入口があるのだが、入ると既にリョウくんがキッチンに居た。
「おはよう」
「おはようございます。今 朝飯なんですけど、食べます?」
「ううん、食べて来たから、コーヒーにするわ。」
そう、実は先日の宰相サマ、話の中で私がコーヒー好きだと知ると、こっそり融通してくれたのだ。
インスタントコーヒーだけど、日本の商品を入手できる日本人と繋がりがあるのだとか。
何それチート。
自分でお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。
宰相サマは砂糖どっぷり入れるんだろうな。溶けるのかな。
「リョウくん、顔洗った?」
「まだっす」
そしてリョウくん、実はギルドの2階の奥の部屋に住んでいる。
最初はアランさんが、「ウチならもう1部屋ならなんとか出来るよ」と物置きを空けてくれようとしたのたが、なぜかリョウくんは固辞。
ギルドの部屋は空いているし、シャワー設備もある。
何よりキッチンの仕込みに来るのが楽だ、という理由でギルドに住まうこととなった。
時々夜中に試作品を作っているみたい。
新メニューに期待。
「ねえ、リョウくん、」
朝食中のリョウくんに話しかける。
なんすか?って顔をしているリョウくんに提案した。
レストラン部門の改善策を。
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「屋台?」
「そう、昨日のレストラン、長い列に並んで、やっと料理を食べようとしても席に座れなかった人もいたでしょ?」
あの人数では、ショッピングモールのフードコートくらい席が必要かも。簡易テーブルを倉庫から引っ張り出し、立ったまま食べてもらったりしていたが追い付かず、しまいには床に座って食べる人もいた。
日本人ギルドのレストランの営業時間を短縮し、屋台へ客を流す。
「でも屋台って、もう既に街にたくさんあるし、こう言っちゃなんですけど、ありきたりじゃないですか?」
「『ありきたりじゃない屋台』にするのよ」
きっと私は今 悪い顔をしているだろう。
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この世界にも当然ながら信仰があり、宗教がある。
イリーリニウムで最も信仰されているのがヤーアブル教。多神教である。
教義は3つ。
信仰の自由、強制しない、排斥しない。
最初に聞いた時は、それ教義なの?と思ったけど、皆それぞれ自分が信仰したい神様を信仰してる。ドワーフのほとんどが鍛冶の神様と酒の神様、とか。それでもヤーアブル教。
それぞれの神様に神殿があり、司祭がいて、熱心な教徒は毎日供物を捧げに行っている。
神殿への道は馬車と足の不自由な人の為にスロープか坂道、そして階段。
若い方はご存知ないかもしれないが、映画の「ローマの休日」のような幅の広い階段が、日本の高台の神社のように100段くらい続いているのだ。
そこに座って屋台の料理を食べる。
・屋台の座席の準備削減
・街中での混雑解消
・神殿への参拝客の誘致
一石三鳥を狙って、私は神殿で屋台をやろうと閃いたのだった。
冒険者ギルドと商業ギルド、さらには神殿の許可も必要。
正直、簡単じゃないだろうけどさ、これは成功したら楽しくなるよね。
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サマヤことチャラ男に訊いたところ、農業神さまの神殿が1番閑散としているそう。都市で農業神さまを崇める人は少ないからだろうね。
屋台で出す食べ物の試作品を手に、私とリョウくん、なぜかサマヤの3人で神殿に赴いた。
参拝客と勘違いした司祭さまは、私たちが教徒ではないと知るとあからさまにガッカリした様子。
しかしここは押しの一手!
話だけでも聞いて欲しい、損はしないから、と司祭さまに頼み込み、なんとか事務室のような所へ入れてもらうことができた。
「それで 『教徒を増やす提案』というのは?」
この国の宗教法人は税金も払わなければならないから、やはり死活問題なのだろう。
私は「屋台で人を呼び込もう作戦」をプレゼンした。
しかし、屋台から出るゴミ問題、治安の乱れ、怪我人への対処といった点で難色を示された。
もちろん想定内なので対策も作成済みですよ。
そしてさらにドン!
「こちらは屋台で出す予定のものの試作品です」
リョウくんが机に並べたのは、お饅頭、お煎餅、お団子、大判焼き。
この世界に既に日本人が持ち込んでいるので、「見たこともない食べ物」では決してない。のだが。
「これらに、農業神さまのシンボルマークを作って焼きごてで押して、『この神殿でしか食べられない』という付加価値を付けます。シンボルカラーがあるならば、そのカラーのソフトクリームや飴も作れます。」
ほぉ、と乗り気になった司祭さま。
しかし、
「なんだか甘いものばっかりだねぇ」
ブフッっと横でチャラ男が吹き出した。
これは劇甘党の宰相サマの好みでは断じてない。
司祭さまは自分の少し出っ張ったお腹をさする。
ビール腹? 体型を気にするなら糖分の少ないものがいいか・・・
「健康に良いお茶の葉を、農業神さま印の紙袋に入れて、お土産用に販売するのはどうですか?」
おぉリョウくん、ナイスアイデア。
そういえば私の祖母が生前 笹の葉茶をよく飲んでたな。
ポロっと出た私のひと言からリョウくんと司祭さまは笹の葉茶もお土産にすると決めてしまった。
トントン拍子に話が進み、屋台、というか最早 屋台村規模だけど、何店舗にするか、いつからにするか、という詰めの段階になった。
商業ギルドへも根回しと依頼が必要なので、また改めて農業神さまの神殿に伺うこととなった。
お暇した帰り道。
「提案の席で、笑っちゃダメよ」
甘いもの、の件で笑ってしまったサマヤに注意する。
しかしサマヤはどこ吹く風。
「だってさ~、ミサオも宰相のこと思い出しちゃったでしょ?」
「そりゃそうだけど」
「宰相サマって、なんであんなの食べてて太ったり病気になったりしないんだろう」
リョウくん、それは私も思ってた謎なのよ。
「あ~ 宰相って、魔力が膨大で、魔術を使うと糖分足りなくなるからガンガン食べないと倒れちゃうんだってさ~。だから非常用に鞄に激甘ジャム大量に備蓄してる、ってウ・ワ・サ。」
何その異世界低血糖。
「宰相サマの地位的に、弱点をあまり言わないほうがいいんじゃ・・・」
確かに。
にやっとサマヤは笑う。
「あの宰相が知られて弱点になることなんてあると思う?」
((ないか、ないよね))
妙に納得してしまった私とリョウくんだった。
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神殿よりも商業ギルドでのほうが揉めた。
「はぁ!?神殿で屋台村!?」
いやでも司祭さまも乗り気ですし。
コホン、と咳払いし商人らしさを取り戻した商業ギルド長。
「こりゃ 街の春祭り並みになるな。」
そこで依頼表の束を渡す。
「なになに?屋台の料理人・売り子の求人とゴミ箱の設置とゴミの回収、ゴミ拾い、休憩所、迷子センター、救護所、屋台マップ・・・」
読んでいる声が尻すぼみになってゆく商業ギルド長。
警らの巡回は、冒険者ギルドにちゃんと依頼を出しますよ?開始日が決定してからね。
ちなみに予算は日本人ギルドの特別予算を使います。
「自由にしていい」と宰相サマから直々に裁量権を貰ったのだ。
日本の「機密費」とやらを手に入れた気分です。ほほほ。
意気揚々としたのも束の間、私は計画書作りと関係各所回りに追われた。
焼きごては沢山必要になるし、屋台も鍛冶屋さんに注文しなきゃ。
てっきり鍛冶ギルドというものがあるのかと思っていたら、鍛冶組合があって、商業ギルドの傘下だった。組合に入らなくても鍛冶で商売することは可能だけど、商業ギルドに登録しなければ商売が出来ない。
材料の発注先、原価、売値、利益。屋台の場所決め、並び順、採用した料理人というかお菓子職人へのレクチャー、金銭授受のスムーズなやり方、材料がなくなる前に追加発注する方法、材料配送ルート、諸々。
飲食スペース、階段だけでは足りないから、やっぱりベンチも注文しないとなぁ。
日本人ギルドの仕事をこなし、リョウくんも試作品を作りつつ、休みの日には神殿も含めあちこち飛び回る日々となった。
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商業ギルドでも屋台村の宣伝をしてもらうことになったのだが、いち早く「一枚噛ませて欲しい」と援助というか儲かる匂いにつられてきたのが、真っ赤な口紅の商人さん。
外見は商人っていうより、やり手の娼館の支配人みたいなお姐さん。
「うふふ、これは絶対に名物になりますよぅ。」
「神殿の名物になりますか?」
「いやだ、アレッシオの名物ですよぅ。」
アレッシオの?
「今のところ酒やつまみの屋台はないようですけどねぇ、私は神殿の近くに宿を作る予定ですよぅ。」
「いや、宿を作っても屋台村の期限が終わればその宿は無駄になりますし。」
そう否定したら、(この小娘は何をバカなことを)と呆れた顔をされてしまった。
「ミサオさん、この屋台村計画書、読ませてもらいましたけど、トイレの下水まで施工済みじゃないですかぁ。」
いやお祭りってトイレが遠い、混雑、汚い、の三拍子だから、神殿の下水を延長させてもらうことで解決しようとしてるんですよぅ、ってお姐さんの口調移っちゃったよぅ。
「この屋台村、期限無しの延長になりますわよぅ。いずれ神殿を国中から農業神様の神殿目指して人が集まるようになりますよぅ。私の目に狂いはない!」
最後だけ よぅ じゃなかった。
そしてこのお姐さんの目は、間違っていなかったのだ。
「商人ギルド」の名称を「商業ギルド」に変更しました。




