千客万来②
拙い文章を読んでくださって、本当に本当にありがとうございます!
ブックマークと評価をしてくださった方がいて、驚きと嬉しさで涙出そうです。
m(_ _)m
例えるならば、総理大臣が市役所へふらっと来たみたいな。
どこのぶらり旅や!と自分でツッコミを入れつつ瞬時に立ち上がり、頭はフル回転。
本当に宰相なのか?何の用で突然来た?偉い人は先触れとやらを出すものじゃないのか?なんでチャラ男が連れて来た!?
疑問は山の如しだが、全ては後程。
「アレッシオの通称『日本人ギルド』の支部長を務めます、ミサオ・ササキです。」
日本風に下っ端から挨拶してみる。
宰相は、髪が白っぽいのにお爺ちゃんってワケでもなく、鋭い目付きで隙のなさそうな人だ。
踝まである長いローブが長身を余計に際立たせている。
「突然の訪問すまない。明日の開所を前に一度この目で見ておきたかったのだが、既に仕事をしていたようだな。今日の分の手当ても上乗せしておこう。」
「ありがとうございます」
そして宰相、めっちゃ色っぽい声!
給料上乗せもありがたや~
「魔道具の運用は問題ないか?」
宰相の質問に仕事モードで答えようとした時、バタン!と入り口が開けられた。
この世界はドアに優しくないヤツばかりか。
「いや~参ったぜ、多人数のガキが揉めるなんてよ~」
首をバキバキさせながらギルド長が入ってきたのだ。
そして私の前にいた宰相が振り返り、ギルド長を見た。
「げっ」
ギルド長のひと言。
「貴様 また仕事をサボっているのか!無能なのか!この街は日本人比率が多いから重要なのだと説明しただろうが!おい 逃げるな!」
宰相、怒鳴るんですね・・・
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「で、アレッシオには視察かい?」
アランさんがいつも通りの優しい感じで宰相に問う。
宰相に首根っこ掴まれたギルド長は、観念したように「アランを呼んでくれ」と頼んできた。
チャラ男が連れてきてくれたのだ。
日本人ギルドの奥の応接室に、宰相、アランさん、ギルド長、私。
リョウくんが紅茶を運んできてくれた。
「ふん、どうせコイツがサボって副ギルド長が苦労していることもお見通しだ。」
傲慢なセリフなのに、紅茶を飲む仕草は優雅な宰相サマ。
「あの、皆さんはお知り合いで?」
接点があるようには見えない3人なのだ。
「学友でね」
「腐れ縁だ」
「友人になった覚えはない」
アランさん、ギルド長、宰相の順です。
えっと、学友?
この国には義務教育はない、と教わったんですが。
私の質問に、宰相が簡潔に答えてくれた。
イリーリニウム王国に義務教育の学校はまだない。
グリードヴィッド領の領都には領主が私財を投じて作った教育機関がある。
そこで3人は知り合った、と。
グリードヴィッド領の領都はアレッシオではないのだ。
アレッシオはこんな大きな街なのに。
領主サマ、なかなかのご仁だわ。
アランさんは薬学、宰相は魔術、ギルド長は剣術を専門に学んでいたそうな。
私は宰相の腰の剣を見た。
向かいに座るアランさんが私の視線に気付き、
「魔術以外も得意なヤツでね」
と苦笑い。
「自分の身くらい自分で守れないなら1人でこの街に来る訳なかろう」
護衛も秘書官も侍従もなしで、マジで1人で来たんですかい。
王都からの移動は距離もあるでしょうに。
「転移魔術がある」
本格的に異世界っぽくなってまいりましたよ!
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私が付け焼き刃で頭に入れたこの国の知識はアランさんから教わったことと、借りた本頼み。
ざっくりとしたものだったんだな。
まだまだ勉強が足りない。
「実は構想していることがありまして・・・」
思いきって言ってみる。
日本人向けの障害保険を作ること。
冒険者や商人になれば、怪我をする可能性は高い。怪我で冒険者を辞めて転職できるのならいいが、障害が残り仕事ができなくなってしまえば、生活してゆくのは難しい。リハビリ中の生活費も必要だ。
病気になる可能性は誰にだってある。
異世界日本人の全員が、レア素材を潤沢に持っていて狩りをしなくても暮らしていける物語ではないのだ。
仮にこの世界で結婚したとしたら、残される家族のことも考え、日本人には馴染みのある医療・療養・ガン・年金・介護・死亡保険をひっくるめて私の知りうる知識で説明した。
「ふむ。転移日本人が日本に帰ってしまえば掛け金はどうなる?」
「加入時に選択出来るようにします。日本帰還の際は、掛け金を10年ギルドに預けるのか、即寄付するのかを。」
「『帰還』かどうか分からぬ場合もあるだろう?」
そうなのだ。転移者の帰還は突然の場合もあるということ。
帰還したと思われていた日本人が、誘拐されていたり。
「その場合も10年預かりで、10年連絡がなければギルド自動的に寄付する形にします。それを納得して貰える方に入って貰えるようにします。」
「保険金目当てに家族を殺す輩は日本にはいないのか?」
「残念ながらいます。その為の法です。」
「なるほど、形を変えればこの国にも応用出来るだろうが、民間の商人に任せるには支払いの信用が足りん。」
日本人ギルドは国のお墨付きがありますからね!
すっかり思案の沼に沈んだ宰相。
でも「日本人保険」は実現できそう。
「ちなみにギルド長と宰相閣下は、剣術ではどちらが強いのですか?」
「私だ」
「俺だ」
同時に答えないでください。そして宰相、聞いてたんですね。




