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最近彼女がますます可愛い。
元々幼馴染として一緒に特訓し、一緒に冒険してきた。
昔から同じ村で生まれ育ったわけで一緒にいた時間は誰よりも長く、すでに二十年間一緒にいる。
なのに、最近殊更にかわいい。
おかしい。ずっと一緒にいるはずで大人の階段も一緒に上っているはずなのになれることがない。
いや、今更手をつないだだけで照れるとかそういうわけではないのだけれど手をつないだだけで胸がいまだに高鳴り続けてしまう。
なぜだ。
「難しい顔して何考えてんだあ?」
こいつは親友のダン。
村から上京してきたばかりの俺たちに親切にしてくれた奴だ。
「いや、最近ミアが可愛くて仕方なくてな。なんでそうなのか考えてもわからないんだ」
「前にもそんなこと言ってなかったか?」
しっかりしてくれ、とダンが悪態をつく。
「わかってる。今日は俺が頼み込んだんだからな」
俺たちがいるのはビックバードの巣の前。
本来の依頼であればパーティーメンバーでもあるミアが一緒のはずだが今日はいない。
というかパーティーメンバーは俺とミアしかいないからダンが手伝ってくれるのは完全な善意でしかない。
ミアがいないのは今回の相手はミアとのパーティー結成祝いの贈り物のためだからだ。
ミアも今、俺のためにプレゼントとを用意してくれていると思うとほおが緩みそうになってしまう……がしかし!油断はできない。
俺としてはミアのためならどんな怪我も惜しくはないが俺が怪我をするとミアが悲しんでしまうからな。
それでは本末転倒だから大した敵でもないビックバードの討伐にもダンの力を借りているわけだ。。
「お、親鳥が返ってきたぞ。やるか?」
ダンの言葉で我に返る。
「おう」
軽く伝えて待機させていた雷撃魔法でビックバードの親鳥を昏倒させる。
それに合わせてダンが飛び出し、仕留める。
「ほんとに俺必要だったか~?こんな低級魔物素手でも勝てるだろ?」
あまりにも手ごたえがなかったせいか団から不満の声が上がる。
「必要に決まってるだろ。俺一人じゃ全部持って帰れないしな」
ビックバードはその名の通り俺より大きく、一人で運ぶのは難しい。
荷台は持ってきているがビックバードのいる山の中までは持ってこれないので麓まではどうにかはこばなきゃいけない。
それを聞いてダンが嫌そうな顔をする。
「ほんとにこれ全部持って帰んのかー?食いきれずに腐らすのがおちだぞ?」
「もちろん頭とか食べられない部分は捨てていく。羽はギルドに売る予定だしな」
血抜きをしながらそう答えるとやれやれといったように首を振った。
「いくらミアが健啖家っていってもなー。それに女の子なんだし太るんじゃないか?」
「ビックバードを丸々一匹食べてみたいっていってたことあるし大丈夫だろ。それに太ったミアも見てみたいしな」
ミアはよく食べるが太らないわけじゃない。
いつも食べた以上に運動することで体形を維持しているタイプだ。
昔少し太ったときがあったけれど、いつもは引き締まって割れている腹を掴む感触は時折思い出すくらいには素晴らしいものだった。
恥ずかしがるミアに意地悪をするのもとても楽しいものだったしな。
ダンが少し引いた眼で見ているような気がするが気にしない。
俺はビックバードを担ぎ意気揚々と町まで帰った。
ダンは両手がふさがっているカイン(主人公)の護衛です