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 廃れた神社の上に怜楓と玲壮、それに真也は、ふわりと降り立つ。

 そこは今回のお相手さんの本拠地、神を召喚しようとしている場所。


「じゃ、囚われた連中は任せたから、後は状況に応じて各々自由に」


 そう言って中に魔法陣が浮かんでる半透明な石を白と黒二つずつ渡して、怜楓は地面に飛び降りつま先で地面をトンと叩き何かしらの魔法を発動させる。

 怜楓から渡された石、効果は簡単に言うなら転移魔法ゲート型のゲートを作ることが出来る、黒い方が入り口で白い方が出口。

 つまりこれ使う必要がある様な場所に攫われた連中はいるという事だろう。


 そのまま本殿に入っていくのを見送り、白い方の石をある程度開けた所に放って、玲壮と真也は拝殿に入る。


 拝殿を進み何かある気がして玲壮は床に耳を当て数回ノック、立ち上がり右手を握りしめ叩きつける。

 大きな音を立て大穴が開き、その下の空間が姿を現す。

 見たところそれなりに広い空間がだから当たりだろう、飛び込んで穴を修復する。


 大体この辺りだろうと感を頼りに歩みを進めると、その先には扉、札が色々貼ってあるから恐らく人間ではなく妖怪用なのだろう。

 手を当て押したり引いたりするが開かない、こちらも拳を叩きつける。

 中にいた連中は何故か寝ていた、恐らく怜楓が何かしたのだろう、石の使い方を説明して真也に任せ、人間がいる気がする方に向かう。


 扉を見つけてまた拳を叩きつける、中には人間がこれまた寝息を立てていた。

 右手に持った黒い石に魔力を籠めると中の魔法陣が光だし、黒いゲートが出来る、姿を言葉で表すならブラックホールだろうか、引力はないけど、間違いなくモデルはそれだろう。

 寝転がってる人間を片っ端からゲートに放り込む、最後の一人を放り込んで玲壮も飛び込む。


 外に出ると風が強かった。

 風の発生源は空に浮かんでいるようで、軽い神格を感じるから召喚に成功したのか。

 怜楓がしくじったのだろうか。いや、ないな、わざとか。

 一体何をしたいのやら、マどうでもいいな。


 一秒待った、怜楓から何もコンタクトがないってことは斬っていいのだろう、よし斬ろう。

 右手の腕輪を剣に変えながら、玲壮は空に浮かぶそれに目を鋭くさせて、けれど口角は無意識に上がる。

 しょうがない、だって久しぶりにそれなりに斬り甲斐がありそうな獲物に出会ったのだ、気分は向上する。


 剣を両手に構え魔力を籠める、脚に力を籠め、飛び上がって斬る。

 とん、と軽い音と共に地面に着地する。

 まあまあだったな、そんな感想を抱きながら剣を腕輪に戻す。

 まだ完全復活とはいかないが、仮にも神格を有する存在を斬ってそんな感想を抱く存在は滅多にいないだろう。


 斬ってから三秒待った、怜楓からは何もコンタクトはない、つまり帰っていいってことか、帰っていいってことだな。


「帰るか」

「いいのか?」

「任された事はやったんだ、文句はないだろ」

「……それもそうだな」


***


 つま先で地面を叩いた拍子に一定の範囲内の特定の人物以外に睡眠の魔法を発動させ、怜楓は本殿の中に靴を脱ぎながら入っていく。


 中には紙が敷き詰められて、その上に赤黒い召喚陣が書かれている。

 怜楓の視界の先、召喚陣の上、中央辺りに立っているのは一人の男、平安装束を身に纏い顔は布で隠されている男こそ今回の黒幕とでも呼ぶべきか、それとも教祖と呼ぶべきだろうか。

 マこの際呼び名は男でいいだろう。

 今重要なのはこの男が神の復活、もっと言うなら神の力を得ようとしたことであり、怜楓がそれを止めようとしていることだ。


「君は?」


 顔は見えないが穏やかな声で問いかける男に、怜楓は笑みを浮かべさぁ、と答える。

 さぁ、もしかしたらそのうち分かるかも。

 そんな答えたんだか答えてないんだか微妙な言葉。

 男のどうやってここまで来たんだい?という問いにも怜楓はさぁ、と返す。


「答える気はない、と」

「かもね」


 困ったな、穏やかな声でそう口にしながら怜楓に近付いた男は、懐から短刀を取り出し斬りつける。

 敵意も殺意もなかったその攻撃を、怜楓は後ろに下がることで避けるが、避けきれなかったのか腕に切り傷が一つ出来る。

 そこまで深くない傷は怜楓の膨大な魔力で自然と強化された治癒能力で直ぐに塞がったが、傷口から零れた血が床に数滴落ちる。


 それを見た男はまた陣の中央に戻って、自分の掌を斬る。

 怜楓よりも深く付いた傷から溢れた血が召喚陣に流れ落ち、それによって完成したのか、陣が淡く光り出し、敷かれた紙が崩れ砂の様にキラキラと宙を舞う。


 本殿の外、正面の空が光り出す。

 光が強くなっていき少しずつ形が作られていくそれを見た怜楓は、詰まらなそうな表情を作る。


「やっぱこの程度か」

「え?」


 怜楓が呟いたその言葉が聞こえたのか、間の抜けたような声を漏らす、その瞬間、空で銀色の何かが光る。

 一瞬の静寂の後、復活しかかっていた神から強い光が溢れ辺りを包む。

 光が晴れると、空には何もなかった。


 基本受動的な怜楓が今回自分から動く、その理由は気が向いたからだし、もっと言えばそこには玲壮が首根っこ引っ掴んでやれと放り込むような裏事情があったりする、いうなれば過去の自分の後始末。

 マ色々あったのだ、とはいえ怜楓からすればその男が今回のやった事に怒りを感じたりはしていない、むしろ初めて知った時は素晴らしいね、拍手を送ろう、はなまるもあげちゃう、なんて思ったくらいだ。でも今回はただ良く出来たね頑張ったねじゃ済まないらしい、知り合い怒ってたし。


 だから気が向いて少し手を貸してみたらやりすぎちゃった子を叱ろうかと来たのだ、子供ってのはいけないことをしたら叱らないといけないらしい、叱るのあんま得意じゃないけど。怜楓は基本ほめて伸ばす派だ。

 でも今回の件を玲壮が知れば怒られるだろうことは分かるらしい怜楓は今回ここまで来たのだ。何がいけなかったのかは分からないけど。

 だからもうこんなことが起こらないように完全に消滅させようと思ったのだ。


 それと最近段々辻斬りしそうな目をするようになった戦闘狂(玲壮)の息抜きにもいいだろうと思ったのだ、そろそろ魔界とかに殴り込みに行きそうだったし。

 その為にわざわざ自分の血も少し使ったのだが、所詮は力を失った嘗ての神、そんなに強いのは出てこなかったな。マ別にいいだろう。


 そうそう、叱るのなら間違いを訂正しないといけないだろう。

 だから、力が抜けたように呆然とへたり込んだ男に、怜楓は視線を向ける。


「一つ、良いこと教えてあげよう」


***


 地面に転がる人妖の山、マ外に出したら自由にしていいといったのは自分だしと人間は記憶を弄って拝殿の中に寝かせていく。


「いる?」


 人外の方に視線を向けると、死骸も結構あるけどこれ如何すりゃ良いんだか対応に困って指さしながら後ろから来た連中を振り返って怜楓がそう聞く、声を掛けられた相手は苦笑しながら頷く。

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