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「何故?」


 怜楓の書斎と化している物置き、出ようとしたところでふと浮かんだ疑問を、玲壮は本の活字を追っていた怜楓にそう問いかけた。

 怜楓は本から玲壮に視線を移し、返答の為に言葉を探しているのか数秒思考し、口を開く。


「知的好奇心」


 その一言だけ返した怜楓は、それ以上は何も答える気はないのか本に視線を戻す。

 これまた短いその返答に玲壮はそうかと返し、そのまま部屋を出ていく。


***


 買い物帰り、玲壮がスーパーの袋を片手に持ちながら歩いていると近くで弱いが魔力の気配を感じる。

 何かあるのかと確認すると、そこにあるのは白い線で書かれた陣らしきもの。

 残念ながら玲壮にも多少は知識がある西洋のではなく、東洋のもの、詳しいことは分からないが人除けの呪いの様なものがかかってるように感じる。

 この町の事なら何かあっても怜楓が分かっているだろうが、一応知らせようとスマホを取り出し写真を撮って送る。


 さて帰るかと思ったところで人の気配、平安装束を身に纏った男が数人、顔に付けてある布には目隠しの呪い、マ恐らくこの陣の関係者だろう。

 祓い屋や陰陽師の雰囲気は感じないが、ただの怪しい集団ではないのだろう。

 もしかしてと、目に魔力を籠めると陣の周りに張られている糸が見える、感知系の罠か。

 面倒な事になったなと拳を握りしめると、上空から人影が降ってくる。


 拳一振りで弾け飛ぶ頭、飛び散る血。

 頭から角が生え、眼孔が縦に鋭くなった真也がその集団を肉片に変えていく様子を眺めていると、怜楓から一つ持ってきてというメッセージ。取り敢えず逃げようとした奴の鳩尾に軽く拳を入れて気絶させる、見たところもう立ってる奴もいないし、さっさと帰るぞと真也に声を掛ける。

 後始末はどうせ家で様子を見てるアイツがやるだろ。


***


「そのまま帰ってきたんだ」


 帰ってきた玲壮たちの姿に怜楓は少し呆れた様な表情でそう呟く。


 改めて自分達をしっかり見るとなるほど、少し返り血の付いた服、片手にレジ袋を持ち反対側の脇に平安衣装を纏った人間を一人抱えた玲壮に、服だけでなく顔や手足にも血がしっかりついて、額に二本の角が生えた真也、改めて見なくても誰かに見つかったら通報されそうな姿だ。むしろ良く通報されなかったな。え、されてるの。そっかいつもお疲れ。


「見てたんじゃないのか?」

「帰り道歩いてるお前ら見てる意味ある?」

「ないな」


 脇に抱えた男をそこら辺に放って、着替える為に怜楓にレジ袋を渡し、真也の方は着替えを渡されそのまま浴室に向かう。


 玲壮が着替えてリビングに戻ると、怜楓の手のひらの上に光るビー玉の様なものが浮いていた。


「なんだそれ」

「コレの記憶、抜き出したの」


 そうか、記憶抜き取られたのか、戻せるのだろうか。

 マ怜楓の言う記憶を抜き取るはガチで魂から記憶の部分をちぎっているのだ、それはもう脳みそを生きて意識あるままミキサーにかけられてるような、もしくは全身の神経という神経をちぎられてるような感覚だそう、つまり想像できない程の激痛。例え戻せなくともショック死してるから大丈夫かも、生きてたら記憶ないままがんばれきっと怜楓も生きるために必要な記憶は抜いてない。多分。呼吸できてるし。


 そんな事はどうでもいい、今一番聞かないといけない事は他にあると怜楓の向かいに座る。


「結局アレ何だったんだ?」

「召喚陣」

「何の」

「神、みたいな」

「曖昧だな」

「祀り上げられれば怨霊だろうが妖怪だろうが神になるし、逆もしかり。そんな日本じゃそこら辺にいる神と妖怪の違いなんてあんまないよ」

「そういうものか」

「今回は相手が神として呼んでるから神なんでしょ」


 そう締めくくって手に持っていた球体を玲壮に投げ渡す。

 手に取るとさっきの男の記憶らしいものが流れ込んでくる、重要そうな部分をあらかた見終わって怜楓に投げ返す。


「そういえば、真也、角生えてたな」

「生えてたね」

「種族は?」

「鬼」

「聞いてないんだが」

「言ってないからね」


 何時ものことだが言え、人間じゃないことは分かっていたがしっかり言え。

 文句を言えば聞かれてないからとかぬかすことは予想できるから文句言ったりしないが。


 マそれはもういい、問題は今回の相手さんの今回の目的だ。

 怜楓が渡してきたこの辺りの民間伝承について書かれた本を流し読みしながらさっき見た記憶にすり合わせていく。

 遥か昔にこの地に存在した神、今はもう眠りついた、というか力を失ったそれの復活らしい。

 玲壮が見た召喚陣はその神の魂を呼ぶためのモノのようだ。


「馬鹿なのか?」


 思わず困惑の声を漏らす。

 神なんて、ただの人間の手に余るもの良くどうこうしようと思ったな、むしろ関心、はしないな。

 やるなら少なくともこの町一つ潰れる、そこまで詳しいわけじゃないが呼ぶためにもそれなりの贄が必要だろう、実際結構攫ってた。

 マ兎に角、この辺りに住んでる奴らの殆どが敵に回るだろうしな。でもって、この辺りには結構力のある奴が住み着いている。


「かもね。今回は人妖共に結構被害が出てオレの知り合いも怒ってる、愚痴聞かされるオレとしてはいい迷惑だよ、出された酒美味かったからいいけど」


 だが、流石にちとおいたが過ぎる、そう思わんか?

 さっきまでの普段の表情や軽い口調をひっこめ、低い声でそう問いかける久しぶりに魔王らしい怜楓に玲壮は肯定の言葉を返す。

 首を傾げた拍子に左耳に付けた普段全く主張しない赤い宝石の付いたチェーンピアスが珍しく音を立てながら光を反射してキラリと光る。


 なるほど解決する気か、基本受動的な怜楓が誰かに頼まれてじゃなく自分から動くとは珍しい。

 マ今回は怜楓達が住んでる町に出るんだ、例え怜楓が動かなくとも玲壮は動くし、そのまま怜楓を巻き込むことにはなっただろうが、何かありそうだな。

 とはいえ聞いたところで答える可能性はそう高くないだろうし。


「ただの人間にお前の知り合いが怒る程の妖怪をどうにかできる可能性は低いと思うが」


 少なくともさっきの奴の記憶に教祖らしき人物も含めそれらしき者はいなかった。


「たかが人間じゃないのが混じってるんでしょ」

「そうなんだろうな」

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