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 イギリス料理、というのは不思議だ。

 食材本来の味や食感が残らないほど加熱されたり、調理段階で味付けされてない事も多い。

 そもそも食にあまり興味が無く、手の込んだ調理をしないらしい。

 とはいえ、昨今は美味しい料理も増えたが。

 まぁ、何が言いたいかというと、ハズレの料理は日本で十年以上生きた人間の舌には合わないらしい。


「大丈夫?」

「……あぁ、大丈夫だ」


 ウナギゼリーやらブラックプディングやら明らかにヤバい料理を口にしては顔色を悪くさせぐったりしてる玲壮を見ながら、怜楓はそんな事を考える。

 未知の料理は例え見た目がマズくとも食べる、一体その食への探求心とやらは何処から来るのか。

 怜楓は正直まったく理解できない。


 まぁ、結局やっちゃったよイギリス観光。

 フィッシュ&チップスを口に運びながら怜楓はバレたら玲壮に依頼したトコに責任被せると決めた。

 例えアッチが拒否しても被せる。


「今何時だ?」

「午後五時過ぎ」


 回復してきたのか伏せていた顔を上げてそう聞いてくる玲壮に腕時計を確認しながら答える。


「そろそろ移動するか」

「ちょっと待って、これまだ食べ終わってない」

「分かった」


 ***


 吸血鬼がいるという屋敷の前、玄関の扉を開こうとした玲壮の指先が触れた瞬間に火花散る。


「結界か」

「だから吸血鬼って面倒なんだよ、知能も魔力もそれなりで」


 腕輪を剣に変えて結界を壊そうとした玲壮を止めて、そう呟きながら指を擦り合わせてパチンと鳴らす。

 屋敷の周りに張られていた結界が淡く光り、溶けるように消える。


「わざわざ解く必要あったのか?」

「結界無理矢理壊すと逃げるよコイツ」


 吸血鬼にしては珍しく小心者らしい。


 玄関の扉を開ける。

 中にいた腐った死体の群れが襲いかかろうとして、弾ける。

 一体何人食われたのか、屋敷の一階部分を埋め尽くすような数の食人屍(グール)に玲壮が突っ込んでいく。

 昔の時代の衣服を着ている者も見える、いつの時代から活動しているのやら。


 吸血鬼やその眷属を相手にするなら武器はしっかり聖別された銀を使うべきなのだろう、今回はそんなものは用意してないが。

 何故か何もしなくとも神に気に入られて、某RPGでならヒノキの棒で魔王倒せる位のステータスはあるだろう玲壮ならそこら辺の棒切れで吸血鬼を切れるだろう。

 まぁ、怜楓はヒノキの棒で倒される気は全くないが。


「コレ、オレ要らないでしょ」


 今日はやる気が出ない怜楓は正直家に帰りたいが、そういう訳にもいきそうにない。

 ここまで付いてきたから最後まで付き合う気はあるが、何をすればいいのやら。

 そう心の中で呟いて、上の階にいる主が逃げられないように拘束しながら玲壮が楽しそうに暴れる姿を眺める。


 本当に楽しそうだな、普段の仏頂面が嘘のようにちょっと口角が上がって眼孔開いてるよこの戦闘狂。

 切り捨てられた食人屍(グール)に近付き、相変わらず切り口が綺麗だなと怜楓が感心していると全部終わったのか返り血が少し付いた玲壮が歩いてくる。


「満足した?」

「微妙だな、数はいてもそんな強くない」

「の割には楽しそうだったよね」

「久しぶりに暴れられたからな」


 こっちの世界は色々面倒くさい

 そう続けられた言葉に怜楓は心の中で同意する。

 あと、玲壮が楽しそうに剣をぶん回してたのを見てると無かったやる気が出ちゃった、しょうがない。


「コレ終わった後ちょっと寄り道しない?」

「暴れたくなったのか?」

「ちょっとね」


 そんな会話をしながら、上の階の怜楓が魔法で作った鎖に拘束された吸血鬼を自分のいる階に引きずり下ろし、床に叩きつけられ心臓を玲壮の剣に突かれ消滅する。

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