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「コレ、もうちょっと重く出来ないか?」
ソファの上、いつもの定位置に座ってゲームのコントローラーのボタンを押してる怜楓に玲壮は右手首、そこに付けてる腕輪を見せながらそう尋ねる。
前々から感じていたが、軽いのだ。
玲壮個人の感想だが得物はやはり多少の重さがあった方がいい、テンションが上がる。
形は色々変えられるが、重くしたり軽くしたりは出来ないから怜楓に頼む事になる。
「ん? 貸して」
右手から腕輪を外し、差し出された怜楓の手に渡すと逆にコントローラーを渡される、テレビ画面に目を向けるとコマンドを選ぶタイプのゲームの戦闘画面が表示されていて、続きやってという事だろう。
ソファに座ってコント―ローラーのボタンを押していると、腕輪を右手で受け取った怜楓は左手で宝石を丁寧に取って空中に浮かべる。
すると腕輪の形が崩れ始め、ドロリと液体状に溶けて球体に変わる。
その周りに魔法陣が浮かび、レーザーの様なものを出しながら円を描くように動く。
「それで、何で斬らなかったの?」
「言った気がするが」
「お前はその程度で止まらないでしょ」
「……マ否定はしない」
確信したような怜楓の言葉に、玲壮は数秒の沈黙の後に言葉を返す。
勿論この状況をどうにかするべきだと思ったのも理由だ、大体二割位は。
別にあの時エイルを斬ってその後人間界にいる契約してない悪魔を片っ端から切り捨てていく事も出来たんだから。
ジャ何で斬らなかったのか、理由の残り八割はマなんというか
「興が醒めた」
そう、あの時の心情はその一言で表せる。
もしあのときエイルが抵抗していれば正直玲壮は普通に斬るつもりだった、なんなら切り刻んで鍋に放り込んで煮込むつもりまであった。
もっと言うなら今日の夕飯はシチューか唐揚げを作るつもりだった。
まだ食べたことは無いから、悪魔って美味いのか気になるし。
でもエイルは動かなかった、迫ってくる刃に一瞬目を見張って、そのあと目を瞑って身を固くして、抵抗らしい抵抗はなかった。
だから斬るのをやめた、玲壮からすれば無抵抗の生き物より大岩の方がマシだ、汚れないしまだいい手ごたえがする。
玲壮その言葉に怜楓はそうかという言葉と共に、調整が終わったらしい腕輪に宝石を相変わらず丁寧な手つきで嵌めて渡す。
手に嵌めて、形と重量が変わる様に魔力を籠めると、しっかり変わっている。
玲壮がそう報告すると怜楓は満足そうに頷いて、代わりに渡されたコントローラーを手に収めてテレビ画面に意識を戻す。




