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帰り道。
もう遅くなったということでアルフと怜楓、そして玲壮が庵理を送っていくかと道を歩く。
とはいえ送っていくと言っても道案内する怜楓と玲壮の数歩後ろをアルフと庵理が久しぶりらしい会話をしながら歩いているという方が正しい。
「桜っていいですよね」
「そうだな、俺は特に夜桜が好きだ」
「正確に言うなら夜桜見ながら飲む酒と食べるツマミが好き、でしょう?」
「否定はしない」
「素直ですね」
「素直な子は嫌いか?」
「嫌いじゃないですよ」
「好きでもないけど、か?」
「さぁ? どうでしょう」
再開早々壁に吊るされてオブジェにした側とされた側とは思えない程その会話は随分と穏やかだ。
そうこうしているうちに庵理の家に付いたようで、立ち止まった前の二人に同じようにアルフも立ち止まり、庵理は「それでは」とその家に入っていく。
庵理を見送って、視線を少しずらしたところでアルフの動きが止まる。
その視線の先には表札があった。表札、別に変った所は一つもない文字が書かれた札。
そこに書かれた文字に驚愕の表情を浮かべる。
文字、表札に書かれた文字なんだから当然その家の住人の名字で、その表札も例にもれず名字が書かれていた。そんな驚愕の表情を浮かべたままアルフは次に怜楓を見て、もう一回表札に視線を向けて、今度は玲壮に視線を向け、そして更にもう一回表札をまじまじと見る。
そんなアルフを気にすることなく二人は背を向ける。
だってもう用事ないんだから帰るために家のある方向に体を向けるのは当然だし、アルフは二人と違う場所に帰るんだから態々驚きから帰ってくるのを待つ必要はない。
マ兎に角帰るために足を一歩一歩前に出して進んでいく二人に、アルフは声を掛ける。
「ちょ、アレ、アレどういうことだ⁈」
「アレって?」
驚きのまま声を少し荒げてイマイチ要領を得ない質問をしてくるアルフに、怜楓が詳しいことを尋ねる。
「あの表札」
「あぁ、なるほど」
アルフが驚愕の表情を浮かべた理由、庵理の家の表札、その家の住人、つまり庵理とその両親の名字が書かれた、札。
その札には【月代】の文字が書かれていた。
怜楓と玲壮と同じ文字、そんな珍しい名字の家が同じ町に二つもある。
んな事あってたまるかとアルフは二人を引き留めて問いかけたのだ。
「そりゃ、庵理の両親はオレらと同じだし」
「ハッ⁈ 何で⁈」
「何でって言われてもね」
「大体ソイツの所為」
「オレは本人が望まないことはしないさ」
「望まないことは、な。望むこともできてるとは言えないだろ」
「何を望んでるのかイマイチ分からないんだよね、口に出したんだからそれは本人の望みだと思うんだけど」
「そうとは限らないんだ、勉強になったな」
「ホントにね」




