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 屋敷の玄関の扉を開けた怜楓は、そこで動きを一旦止める。

 どうしたのか聞くと屋敷の中に目を向けながら、返答を口にする。


「異界が出来てるのは分かってたけど、次元がズレてる」

「何か問題あるのか?」

「あるよ、こっちから乗り込むか、こっちの次元に持ってくるかの二択が生まれるじゃん」


 そんなしょうもない事を悩んでいるらしい怜楓に軽い呆れを覚えながら「出来るだけ速くしてくれ」と言葉をかける。


「うん、じゃ、向こうの次元に乗り込もうか」


 顎に手を当て悩んでいた怜楓の中で何か結論が付いたのか一つ頷いて振り返りながらそう答え、片手を玲壮の肩に置き、もう片方の手で親指と中指をパチンと鳴らす。

 一瞬眩暈のような感覚、視界が一瞬ブレ次の瞬間には空気が変わった屋敷内に立っていた。


「いるな」


 屋敷の奥、方角にして西、それなりに力のあるナニが。


「それプラス屋敷中に一杯」

「よく外に出てこなかったな」

「干渉できないように結界張ってあったからね、多分誰かが封じるために張ったものだと思う。まぁ、ソレも破れかけてたけど」

「年月を経て自然とそうなったのか、中に封じられてたモノが自力で破ろうとしてるのか」


 どちらにせよ面倒だな、口に出さずにそう心の中で呟き屋敷の中に視線を移す。

 広い玄関、左右に伸びる廊下、玄関の前には廊下を挟んで大きな階段、階段を登りきったところに柱時計。

 空間が歪んでいなければ二階建てかつコの字型なのだろう建物は、電気が通ってないからか照明は点いてなく暗い。

 玲壮の隣に立って色々視ていたらしい怜楓も、暗いと呟いて周りに光る小さい球体をいくつも作る。


「ここが放置されてから何年だ?」

「五十年位らしいよ」


 埃は積もっているようだが壊れている箇所はほとんどなく、五十年も放置された建物とは思えない。


「見えないな」

「異界化してるからこの空間はここの主がずっと維持してるんだろうね、実際の内装はかなりボロボロだったよ」


 奥にいる何かに引き寄せられた霊が徘徊いたり瘴気が充満してたりはしているが、生きている人間の気配は一切感じない。

 玲壮たちの前に入った人間が何人かいる筈だが


「何人だ?」

「調査に入ったのが六人、内失踪したのも六人」

「専門の知識と能力がある人間を六人、その前にも数人食ってるなコレは」

「人間だけじゃないだろうね」

「引き寄せられた霊もか」

「むしろ食う為に引き寄せてるんじゃないかな、人間だって小腹が空けば何かつまむでしょ」

「軽食感覚か」


 いつまでも玄関で立ち止まっている訳にもいかないだろうと、一階の右側に歩みを進め、一番手前の扉を開けて中を確認する。

 手足が捻じ曲がり血濡れで笑いながら佇んでた霊を祓ったところでそういえば聞いてなかったと、依頼の詳細を訪ねる。


 怜楓が調査を頼まれた際に聞いた話をまとめると


 屋敷の元の住人は四人、主人と夫人、住み込みのメイドが二人。

 ある日、主人倒れそのまま病死。

 侍女二人が失踪、夫人も失踪。

 その後、警察が調査に入るが特に何も見つからず、取り壊そうとして不可解な事故が多発した為放置。


 現在に至る。


 何があったのか予想は出来るな、そんな感想を抱きながら瘴気を浄化し、部屋を一つ一つ調べ、出会った霊を祓っていき、つき当りの書斎らしき部屋に辿り着く。

 大量の本に怜楓が目を輝かせ、一番手近な本棚から本を一冊手に取りパラパラ捲る、それに続いて玲壮もその本棚に目を向ける。

 人体や魂の魔術についての本が大量に詰められているそれは、どうやらその本棚だけでなく全てがそうらしい。


「禁書指定されそうな本ばかりだな」

「異界で見付けたのは好きにしていいらしいけど、今更本で知る様なものでもないね」

「俺は魔術については専門外だ」

「じゃ、情報になりそうなのだけ探すか」


 そう言って怜楓は手に持っていた本を本棚に戻し、奥にある書斎机に近づき、引き出しを開けで行く。

 鍵がかかっている引き出し以外が空なのを確認すると、引き出しに付いた物理的な鍵と魔術的な鍵の両方を開ける。

 中に入ってた手帳を見つけると、迷うことなく中身に目を通す。


「なんだそれ」

「研究結果をまとめたヤツ、ついでに日記みたいなのもちょっと書いてある」

「内容は?」

「腹の中の子供が死んだ、受け入れられない。そうだ、新しく作ろう」


 怜楓による手帳の内容の必要そうな箇所だけ抜き出したらしき説明に、玲壮は何があったのか大体予想出来た。


「作ろうとして失敗したのか」

「みたいだよ」


 手帳を閉じてポケットに仕舞い、次行こうかと玲壮を誘って出口に向かう。

 左側を右側と同じように進んでいき、突き当りの部屋に行き着く。


 食堂なのだろう。

 正面に暖炉、横に三脚ずつ向かい合わせ、端と端に二脚の八人まで座れる縦長のテーブルにはテーブルクロスが敷かれている。

 暖炉の中やテーブルの下を覗いたり、厨房の中も怜楓が楽しそうに見て回っているが重要そうなものは見つからない。

 予想は出来でいたらしく、怜楓は特に気にすることなく出ていく。

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