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最終決戦後の勇者と魔王が現代にINした話  作者: 小城穂
二章

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19/29

4

 消えたな。

 何の前触れもなく覗き見してきた怜楓に電話して文句言って殴り込む前にその気配が消えたので玲壮は視線を前に戻す。


 ビジネスホテルの一室。

 机を挟んだ向かいに座ってる少女はいきなり虚空に目を向けた玲壮に不思議そうな菫色の瞳を向けたが直ぐにさっきまでしていた話に意識を戻す。


 話、何の話かってそりゃ悪魔の話だ、もっと言えば魔王の話、家にいる奴ではなくこっちの世界の悪魔の王の方。

 最近魔王の座に就いたソイツは何を思ったのか魔界との人間界の出入り口を開放した。しかもその魔王がこの近くに来ているらしく態々イタリアまで行ったのに結局やった事と言えばお土産買ってマラソン走っただけ、ムカついたから保管されてる聖遺物を土産に追加しようかと思ったがマそんな事はどうでもいい。

 兎に角魔王だ、魔王。

 悪魔の王だから怜楓が詳しいかと思ったが何にも話さない、何も知らないなんてことはないと思うから帰ったらもう一度問いただしてきっちり吐かせると決めて現在ここにきている。


 そんな玲壮をイタリアに呼んで今は自身が泊まっているホテルに呼び出した今回の件の解決の依頼を仲介した少女もといロベリアは困った顔をしていた。

 正直玲壮も困っている。

 さっきまで確かにこの近くにしていた魔王だろうなっていう強い魔力を感じていたのに今はない、何の前触れもなくプツンと消えた。

 直前までいたらしき場所に足を運んだがそこにも何もなかった、否ウソ、正確には怜楓の魔法を使ったかもしれない若干残っていた、もうホント気のせいなんじゃないかと思うほど若干。

 ここら辺には怜楓が張っている結界があるんだが、その結界の維持は空中の魔力を吸収して賄ってるから張った本人である怜楓の魔力とかは直ぐに吸収されて消える、だから怜楓がそこで魔法を使ったのか使ってないのかは本当に微妙なところなのだ。


 兎に角痕跡が消えてしまった魔王に一番関りがありそうなのが怜楓であることを告げて呼んでも来ないだろうし電話で聞いてもはぐらかされるだろう怜楓を問いただす為に家に招くか否かで迷って困っているのだ。

 なんせ玲壮の家にはよく外出しているが妖怪と悪魔が住み着いてる。

 妖怪も悪魔も総じて縄張り意識が強い、そんな二人が今一緒に生活してるのも怜楓がいるからこそであり、玲壮が人を招いても黙って受け入れるなんてことはないだろう。その二人を怜楓が止めるかも謎、もしかしたら玲壮が目を離した隙にそのままガブリとされるかもしれない。


 さぁて、どうしたものか。


 ***


「警察を呼んだ方がいいか?」


 金色の髪と瞳の天使の様に愛らしい八歳前後の少女を膝に乗せた黒いローブを纏った二十代に見える儚いという言葉がこれ以上ないほど似合う白い男を目にした玲壮は、スマホを取り出しながらソファに座る怜楓に問いかける。

 警察を呼んだ方がいいだろうか、それとも叩き切った方がいいだろうか。

 そんな二択を抱いているのをよく理解したらしい怜楓はどっちもやめるように言う。


 その後命の保証が確実の出来ないような場所に招くのはやっぱり駄目だろうとロベリアと別れて一人家に帰った玲壮は、家に上がり込んでいる見覚えのない男に警戒心をむき出しにする。

 どうも怜楓の知り合いらしいが絵ずらが事案なのだ、玲壮には視線すら向けずに庵理に抱き着いている姿はもうホント駄目だろ。


「その変質者誰だ?」

「アル」

「誰だ?」

「魔王やってる堕天使」

「そうか」


 そうか、魔王。魔王ね。怜楓の方じゃなく悪魔の王って意味のこっちの世界の魔王。


 んじゃ斬るか。


 玲壮はワリと脳筋だ、敵がいる、じゃ斬る、そんな思考で行動している、つまりとっても判断が速い。

 別に面倒な思考とかできない訳じゃないんだが、そーいう思考をするのが面倒なのだ、そこら辺は怜楓とよく似ている。


 マそんな結論に至ったわけだから膝に乗って抱き着かれてる庵理を怜楓が座っているソファに乗せて、剣を水平に構えて振る。

 それを回避できないと悟ったアルフが中途半端に椅子から立ち上がった姿勢で障壁を張るが、玲壮の剣はそれに阻まれることも勢いを落とすこともなくどんどん刃が首に近付き


 首と胴体を分かれさせる前にアルフが消えた。

 遅れて吹いた剣を振ったことにより起きた風が部屋にいた四人の髪をふわりと靡かせる。


「ム」

「ムじゃないよ」


 腕に自分より大きいアルフを抱えた怜楓は、やはりいつもの笑みを浮かべながらソファに寝かせる。


「分かってはいたけど前触れなく斬りかかったね」

「敵だろ」

「敵じゃないよ」

「そうなのか」

「そーなの」


 そうか、敵じゃないのか、じゃいきなり斬りかかったのは駄目だったなと玲壮はその男に謝罪する。

 自分に非があればしっかり謝る、玲壮は結構素直なのだ。

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