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最終決戦後の勇者と魔王が現代にINした話  作者: 小城穂
番外編

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13/29

真也の話

真也と怜楓の関係。

本当はもっと本編に出したかったのですが、玲壮が出てこなかったので没になりました。

「霊脈が緩んでるな」


 神社からの帰り道、足を止めた玲壮がそう呟いて真也を振り返る。

 どうしたんだろうかと見つめていると自分を指さして一言。


「投げてくれ」

「……?」


 意味を上手く察することが出来ずどう返答すればいいか悩む。

 本当に一言しか喋らない、残念だが真也は怜楓の様にそれだけで察することは出来ないからもう少し喋ってほしい。


「俺を、上に、投げてくれ」


 真也の疑問を察したのか指を上に向けて言い直す。


「……? 分かった」


 何を言いたいのかは理解できたがどういう意図でそれを頼んでいるのかは全く理解できない、だが投げてほしいというのならやろう。

 真也も人の事は言えないがもう少し言葉数を増やして欲しいな、怜楓でももう少し喋る。多分。きっと。喋ると良いな。

 マそんな事はいい、玲壮が差し出した左腕を掴み、全力で上に向かって投げる。

 投げたところで、そいや自分の姿が鬼のままだと気付いて紐を通して首に下げてた指輪を取り出して妖力を籠めると数秒もしないうちに真也が人間そっくりに変わる。

 怜楓が便利だよと渡してきた指輪だが、単純に姿を変えるんじゃなくって認識も変えるらしいこれは本当にどうなっているんだか。

 初めて鬼の姿を見せた後、玲壮が気付けなかったと軽く悔しがってた。どこで怒ったり悔しがったりするのか分かりずらい。


 暫く玲壮の傍についててと言われているが、正直いらないだろう。

 怜楓のところに行っても何かやる事あるかというとない、さてこれからどうするか。

 壁に寄りかかってそんな事を考えていると、霊脈の緩んだ部分から光の柱が一瞬上がる。

 ここ以外にも光っていたからさっきので全て直したんだろう、相変わらず人間とは思えないな。


「終わったし、帰るか」


 真也

 静かに降りてきた玲壮が最近呼ばれるようになった名前を呼んで、そう声を掛ける、結構な高度だったはずだが、音がほとんどない。

 見つめてくる目が真っ直ぐ真っ直ぐで、表情が殆ど動いてないのに怜楓より人間らしくて、無意識に目を逸らす、何となく居心地悪い。

 そんな真也を気にせず玲壮はそのまま背を向けて歩き出す。


 ***


 真也

 名前を聞かれて何も答えられなかった怜楓が適当に付けたものだ。

 正直名前と識別番号の違いも分かってなさそうな怜楓にしてはまだまともだと思う、名前の由来はどう考えても当時の時刻だろうな。


 親に付けられた名前はうまく思い出せなくって、それとは別の名前は呼ばれた記憶がなくって。

 黙ってたら、付けられて、特に不満もないからそのまま。


 真也は鬼だ、妖怪、少し前まで人間に使役されていた。

 だから、という訳じゃないが人間は嫌いだ。

 本当にこき使われていたから嫌いなわけじゃない、もちろんそれも嫌う理由には含まれてるんだろうが、その根本は少し違う理由がちゃんとある。


 一言でいうなら、殺されたのだ、母親を。

 当時まだ年齢が両手で数えられる位だった真也は弱くて、大人の鬼だった母親も子供を盾にされて、腕を斬られて足を刺されて。

 腹も肩も腿も刺されて血塗れになって最後には首を落とされた。

 真也はその時何かを喚いた気がするがそれが煩かったのか何かしらの呪いがかけられてのどに痛みを感じて収まったころには声が出なくなった。

 そのまま使役されたのは今思えば恥だ、死ぬ気で喉元にでも噛みつけばよかった。


 そんなこんなで二十年位、散々こき使われる中で真也の中に溜まりに溜まった恨みつらみ憎悪や怒りはことこと丁寧に煮込まれていって、多分当時のアレを物質化できれば粘度の高い毒性のある泥が出てきたと思う。怜楓が欲しがりそうな。


 マそんな頃に怜楓が登場した。

 狂犬のように荒れていた真也に興味深そうに近づいてきて、その姿はそこが知れなくて少し恐ろしかった。

 それを気にせず、むしろ気付かずに真也にかかっていた呪いを解いて無理やり繋がれた使役関係も切られて、何も言わず消えた。

 その後は衝動のままに自分を使役していた奴含め近くにいた人間を潰して千切って叩いて畳んで殴って蹴って。

 最後にはゼンブ真っ赤になってた。


 やっちゃったなぁコレ、どうしよう、座り込んでそう困っていると風が真也の髪を小さく揺らした。

 視線を右に左に動かしている怜楓がそこには立っていて、真也と目が合うと楽しそうな笑みを浮かべて口を開く。


 凄い凄い、良く出来たね。

 あ、キャンディー食べる?

 子供に向ける様な言葉で褒められたのは少し驚いた。甘かった。


 窓から差し込んだ月の光に照らされて名前を尋ねる怜楓が、楽しそうに笑っていたのが印象に残って。

 そういえば今日は満月だったかと、血の中に沈みながら、笑みを浮かべる怜楓を妙にきれいだなと真也は茫然と思った。


 感情があれば褒められてうれしいと感じるだろう、もしかしたら感じない奴がいるかもしれないが、少なくとも真也は嬉しかった。

 嬉しくって、そのまま、あっさり堕ちた。

 そらもう机の端に置いてあった消しゴムに肘が当たった時ぐらいにはあっさりと、自力で這い上がれそうにない位には深くまで。


 そんで、差し出された手を無意識のうちに取ってた。


 だから人の心を解していない怜楓が真也を鬼の頭領のところに置いていこうとしたときに拒んで駄々こねて引っ付いていって、結果怜楓の傍をウロウロしている。


 ***


 さてどうするべきかとフローリングに正座している怜楓の傍でどうすればいいのか分からず立っていると、夕飯を作る為に玲壮がキッチンに向かう。

 気まぐれで今回は被害が結構デカかったから玲壮に怒られ、ソファに転がる姿は相変わらず人間を軽く超えてるくらい綺麗だが、初めて見たときに感じた恐ろしさは感じない。ついでに威厳とかそこら辺も削れてる。

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