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最終決戦後の勇者と魔王が現代にINした話  作者: 小城穂
一章

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11/29

6

4で怜楓が言おうとしたことの続きを男目線で。

事の発端を怜楓目線で。

「何故?」


 玲壮が怜楓にそう問いかける。

 何故、人間のフリをしているのか。

 その問いに、怜楓は本から玲壮に視線を移し返答を返すために相応しい言葉を探し、口を開く。


「知的好奇心」


 そう、知的好奇心。

 怜楓は人間じゃなかった、人間というものが理解できなかったし、勿論今も理解できていない。

 けれど今は人間の肉体を持って人間として存在している、人間に興味もある。でもそこら辺にいる人間の頭蓋骨を片っ端からかち割って脳ミソをむしゃむしゃしても人間的な感情とか思考とかは理解できない、じゃ、人間のフリして人間社会に紛れて理解を深めていくしかない、そういう思考に至ったのだ。

 人間の一生は八十年程度、正確に言うなら違いはあるだろうが国が平均は八十年というなら八十年なのだろう。

 そう、八十年、日数に直して二万九千二百日、時間に直して七十万八百時間。

 嘗て過ごした長い時間を一生といっていいのなら、その中で八十年なんてそりゃ短い、瞬きを一度して二度目をしたかしている途中か、その位の長さだ。

 その程度ならマいいか、全部費やしてもいいか、そう思ったからだ。


 ***


「一つ、良いこと教えてあげよう」


「さっきの神の力を得ようと、人を生き返らせることは出来ないよ」


 まるで小さな子供の間違いを訂正するような声音で告げられる言葉、ゆっくりと顔を上げ呆然と怜楓に顔を向けて、その時初めて目が合った。

 怜楓は人間味がない程整った顔にそれはもう、楽しそうな穏やかそうな無邪気な笑みを浮かべていた。

 浮かべているだけだ、細められた深緋色の瞳には一切の感情もなければ温度も無い、冷たい訳ではない冷たさすらない。

 そこにあるのは一切の虚無、まるで深淵を覗いたかのような、否、実際コレは深淵の様なものだろう、そんなものを見てしまった男は怯えたような声を上げて後退る。


「蘇らせたいならまずは肉体の器を作って、魂を呼び出して、それを器に入れればいい」


 教師が生徒に教えるような


「だけど結構早いうちにやらないと、転生すればもう普通に呼び出すのは難しいから、それに、魂から記憶が抜かれる前にやらないと意味ないし」


 優しい声色で告げられた言葉。


「なんで……」


 なんで自分の目的を知っている、自分にそんな事を教える、分からない、理解できない、何なんだコレは。

 息がしにくい。

 視界がにじむ。

 体が震える。


「息」

「ヒッ」


 近付いて、片膝を付いて、そう声を掛ける怜楓に男は恐怖の声で上げる。


「吸うだけじゃだめだよ、しっかり吐かないと」


 そう言いながら怜楓は男に近付いて、細い指が顔に付けた布を取って、両頬を包むように添えて顔を上げさせ視線を合わせる。

 表情は相変わらず楽しそうで優しそうで少し心配を滲ませた笑みが浮かんでいて。

 相変わらず目には虚無が浮かんでいる。


 ほら、息吐いて、そういわれ指示通り息を吐く。

 息を吸って、また吐く。

 その様子に怜楓は満足そうな表情で、いい子、と優しい声で褒める。


「さっきの答えだけど」


 男の呼吸が整ったところで怜楓が会話を続ける。

 さっき、さっきってなんのことだ。


「お前が一年前ここに来た時、偶然見かけたんだよね」


 一年前。

 確かに男はここに来た、でも、だからどうした。


「その時に気が向いて、お前に協力した奴いるでしょ、そいつと引き合わせてみた」


 実に楽しそうな笑みで、道端の石に向けるのと変わらない目で、そう怜楓はそう告げる。


 ***


 一年ほど前、秋。

 満月を見ながら飲む酒はうまいと言われて試してみようと月見酒に向かった先は寂れて廃れた神社。

 本殿の屋根の上で盃に酒を注いだ所で聞こえたのは懇願の声。

 地面に膝を付いて目から涙を流してもういない神に縋る一人の男の声。

 その姿を視界に入れた怜楓は、自分が手を出したらどういう行動をしてどういう結果になるのかふと気になった。

 怜楓は自分の知識欲に正直なのだ。

 だから、近くにいたその男に手を貸しそうな中でその懇願を一番かなえられそうな人間と巡り合わせてみた。

 ちなみに月見酒じゃ酒の味は変わらなかった、嘘つかれた。

 マ兎に角その結果がこれだった、たかだか一年でその男はここまで準備した、怜楓の予想とは違ったが、だからこそ興味深い。


 つまり、今回の事は特に深く考えず庭にミントを植えてみたら目を離した隙に繁殖しちゃったよ、摘んどこ、位の認識だったのだ。

 マ実際怜楓からすればその位の事だ、町一つ潰れても百年程で気付いたら新しいの出来てる、何時もそうだ、世の中ってそういうもん、世界はその程度じゃ変わらない。


 今回怜楓は怒ってもいなければ焦ってもいなかった。

 だから、家に帰って玄関で待っていた怒りを滲ませた玲壮に驚いた。


「何があったのか、詳しく、説明してくれるだろ」


 もう大体予想付いてそうなその様子の玲壮に、怜楓は他に行かなきゃならないところがあるからとその場を離れて二か所を回り、帰ったらフローリングの上で正座させられ上記の事を説明する。


「何してるんだお前は」


 心底呆れたような目でそういう玲壮に検証と答える、そうじゃないと頭を抱えられた。

 どうして怒ってるのか理由をいまいちわかってなさそうな怜楓にマ何時もの事かと玲壮はそれ以上何も言わなかった。

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