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鴻籠邸

 月が高い位置にある様な時間、元は豪華な洋館だったのだろう、近付くだけで悪寒がするような不穏な雰囲気を感じる廃墟の前に立つ少年が二人。


「何なんだここは」


 白銀の髪に瑠璃色の瞳、日本人離れした端正な顔立ちというおとぎ話に出てくる様な容姿をした少年が隣に立つ少年にそう問いかけもの言いたげな視線を送る。

 彼もとい月代玲壮(つきしろれお)は、かつて異なる世界で産まれ前世で勇者あるいは英雄と呼ばれ魔王と対峙した記憶を持ったままこの世界で現在の両親のもとに産まれ新たな人生を十六年と少し生きた、所謂転生者。


 そんな彼の視線を受ける紫烏色(しうしょく)の髪に深緋(こきあけ)色の瞳の少年が人形の様に整った顔に感情が読めない笑みを浮かべているのは月代怜楓(つきしろれん)

 彼と玲壮との関係を説明するなら前世で対峙した相手、魔王と呼ばれていた存在(モノ)であり、その記憶を持ったまま同じ日に同じ親から生まれた双子の片割れ。


 そんな怜楓は隣に視線を移し、廃墟を指さして口を開く。


「ここね、鴻籠(こうろう)邸」

「名前を聞いてるんじゃない」

「じゃあ、工事しようとしたら超自然的な事故の数々が起こった所為で放置された建物」

「……色々言いたい事はあるが、どうしてここに連れてきた」

「調査して来てってお願いされちゃって」

「どうして、俺を、ここに、連れてきたんだ」

「一人でやるのつまんないじゃん」


 その言葉を聞くなり「帰る」と屋敷と逆方向を向く玲壮の前に、怜楓が立ち塞がって「冗談だよ」と言いながら止める。


「肝試し目的の侵入者が続出した挙句、行方不明者も出ちゃったみたいでさ、怪異関連ならオレよりお前かなと思って」

「俺の記憶が正しければこの国にも怪異関係の専門の組織があっただろ」


 そして怜楓はその組織に所属してなかった筈だ。

 確かに怜楓より玲壮の方が怪異に対する対処の能力が高いのは事実だが、日本で起きた事なのだから動くだろう。

 そう思っての言葉だったが、怜楓は「もうソコが動いた後だよ」と返答する。

 専門の組織が動いて怜楓に話が来たということは、つまりそういうことなのだろう。


「結果は言うまでもないだろうけど、この話を持ってきた奴曰く、しっかり失踪したらしいよ」

「依頼元が気になるんだが」

「それは秘密」


 まぁ、予想は出来る、それよりも玲壮が気になるのは怜楓に話を持って行って調査を頼んだことだ。

 相手が何も考えずに部外者である怜楓に自組織の情報を渡し、ただ調査を頼むとは考えずらい。

 なんせ調査あるいは封印か退治に行ったのに失敗どころか帰ってすら来なかったのだから、そのことを伝えてまで頼むことでは無い。

 恐らく怜楓は相手が思ってるよりも相手の情報をしっかり持っているだろうが、それでもやらないだろう。


「ソレ、依頼内容は調査じゃないな」

「面と向かって頼まれたのは調査だけど、本音はお察しの通り、怪異の封印出来たら討伐だろうね。後、依頼じゃなくって個人的なお願いだよ」


 その説明に、玲壮は怜楓と廃墟とで視線を交互に移しながら、どうしようかと思案する。

 このまま帰ったとしても怜楓ならば特に問題なく解決するだろうことは簡単に予想できる。

 そして、案外適当なところがる怜楓が動けば最悪この辺りが更地になる可能性もあるだろうことも。

 そもそも、今回ここには怜楓が何の説明もせずにいきなり転移で連れてきたから玲壮はここがどこか分からない。

 その上、屋敷の周りを覆うように怜楓の魔力で中のモノを外に出さない結界が張ってある、見たところ玲壮も対象というよりむしろ玲壮を対象にしている。

 帰ろうと思えば帰れるだろうが、目の前の廃墟を攻略する方が労力を使わないだろうと思い至りため息を一つつく。

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