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<R15>15歳未満の方は移動してください。

真の愛とかいう理由で婚約破棄されますが、ああ…うん。それは仕方ない。と、受け入れました。

作者: 逆走天邪鬼

今後短編はこの名前で…投稿するかもしれません。



本日、急遽私の婚約者のレイモンド様が私の下に訪れました。

テーブルを挟み向かい合うレイモンド様と私。


レイモンド様は第一王子で特に問題がなければ次期国王になる方です。

そして私はチェルシー、チェルシー・クラシュタ。公爵令嬢で、レイモンド様と結婚すれば将来は王太子妃、後に王妃となる訳ですが…


訪れたレイモンド様の表情が何処か申し訳なさそうで、まともに私の顔を見ません。

二人で黙ってお茶を飲みながらレイモンド様の言葉を待つことしばらく…。


「チェルシー…すまない。僕は真の愛というものを知った。

だから…」


ああ、そういう用件でしたか…お相手はどなたでしょうか?王太子妃になる為の教育に割いた時間分は慰謝料を要求させて頂きたいです。

別にレイモンド様に執着もありませんし、王太子妃という立場もそうです。


「婚約を破棄させてくれ。それに僕はもう…王には―――」

「お相手はどなたですか?」


「え?」


「ですから、レイモンド様のその…真の愛とやらのお相手です。」

「メアリーだ。」


メアリー?はて?お伺いしたことのないお名前です。


「その…メアリー様というのは何処のどなたでしょうか?」

「僕の娘だ。」

「へ?……………え?むす…め?…娘でございますか?娘とはあの?女の子の子供の?」

「ああ、今年産まれた僕の子だ。」


えっ⁉今年⁈私とレイモンド様は同い年で18歳ということは……えっ⁉


「―――僕に笑いかけてくれて、小さな手を僕に向けて懸命に伸ばすんだ。それがまた可愛くて…。」


ああ、まさに真の愛ですね。

…これ以上ないほどの。

レイモンド様の整った顔が崩れてデレデレです。

また一人親バカが誕生です。

因みに私の父も親バカです。なので特に変には思いません。



「だが…。」


レイモンド様曰く、メアリーの母親は王城でメイドをしていた2歳年上の男爵家の三女だそうです。

丁度色々なことがあり精神的に参っていた時期に一度だけ関係を持ってしまったと。

それから半年も経たずにそのメイドは職を辞して、王城から姿を消したそうです。


レイモンド様がもしかしたら自分の所為なのでは?と思い男爵家に出向いたそうですが、そのメイドは男爵家にも戻って来てない。

レイモンド様が訪れたことで初めて自分の娘が行方不明になってることを知った男爵は慌てて捜索を行い。

当然レイモンド様も捜索を行います。


そして1年後…無事にそのメイドさんを発見。

灯台下暗し、そのメイドさん、王都に居ました。

まあ無事に発見したんですけど…赤ちゃんも一緒に…

という状況で、その赤ちゃんと会ったレイモンド様。

見事にハートを射抜かれてしまって、現在に至ります。


親バカ全開で娘のメアリー様?いえ、ちゃんで行きましょう。

メアリーちゃんの惚気を語ってくれてます。

もうね…飲んでるお茶が甘ったるく感じるほどですよ!



「だから…僕はもう王にはなれない。」


そう…貴族は面子を気にします。

醜聞はもっての外。

内はどうにか出来たとしても、外…所謂他国には良い印象を与えません。

それが王族であればなおさらです。


問題は未婚であるレイモンド様に娘が居ること、しかも婚約者で居る身で婚約者である私以外が生んだ子であること。


もう一つはメアリーちゃんの母親が男爵家と、レイモンド様と結婚するには爵位が低いこと。

メアリーちゃんの母親の方はそれに見合う爵位の養女として迎い入れればどうにかなることですが、今回はすでに子が居る為にどの家もご遠慮したい状況です。

それに私の家を敵に回したくないというのもあるのでしょう…。


「ふぅ~……………一度当事者を集めて話し合いましょう。」




ということで、レイモンド様はメアリーちゃんの為なのか7日で場をセッティングしてしまいました。

いくら父親と言っても王様も私のお父様も忙しい身なので、早くても2週間以上は後になると思ってたんですけど……………これが真の愛の力なんですかね?



集まったのはレイモンド様と親であるダンテ王とソフィア王妃、こちらはまだ婚約者の私とお父様とお母様、それに…当のメアリーちゃんとその母親のダリア様とダリア様の父親のヴィスノ男爵様の9人です。


もうね…ヴィスノ男爵様とダリア様が恐縮しまくって可哀想なくらいです。

王様はデレ~っとした顔をしてますが…


「こほん。」

「さ、さて…。」


ええ、初孫ですからね、そりゃあ可愛いでしょう。そんなことを除いてもメアリーちゃんは可愛いですけどね!



王様はメアリーちゃんを見て顔が緩みきってますが、王妃様は私たちが居るのでどうにか表情を引き締めさせようとしてます。



「先ず、この場での出来事については口外を禁ずる。」


王様は最初に緘口令を敷きます。

そして…

私達にスライディング土下座です。


「すまーん!莫迦な息子の所為で!」


「王よ、面をお上げください。レイモンド様が我が家を訪れた後日に娘と話し合いました…娘に諭されましたよ。

私がレイモンド様と同じ状況であったなら…おそらく似たような行動をしていたでしょう。」


お父様がそう告げた瞬間、スパコーンッと何処から取り出したのかお母様がハリセンで父の頭をはたきます。


「痛っ⁉レナ?」

「何を言ってるんですかウィル!自分の娘が傷物にされたのですよ!」


傷物って何ですか!私はまだ清らかです!

「お、お母様…その…傷物という言い方は止めて欲しいのですが…。」


キッ!と母に睨まれ、私は黙ります。

だって、恐いんですもん!

男爵様たちも震えあがってますよ。

メアリーちゃんはキャッキャ♪と楽しそうに笑ってますけど…。


「まあ、確かに傷物という言い方は良くありませんわね…ではどう言えと?」

「確かに私は婚約破棄という傷を負う訳ですけど…。」

「ごめんなさいレナお姉様…。」

「ソフィアが謝る必要はありません…。」


王妃様が神妙な面持ちでお母様に謝ります。

お母様と王妃のソフィア様は幼馴染で学園の先輩と後輩で、まるで姉妹のような関係だったそうです。

その縁で私がレイモンド様の婚約者に、という経緯があります。


王妃様の謝罪でお母様も落ち着いてくれたので、今回の件をどうするのかという話し合いが始まります。

基本、ソフィア様とお母様の二人での話し合いとなりました。


王様は正座したままです。

一緒にレイモンド様もその横で正座させられてます。

男爵様とダリア様は何かを言える立場ではありません。仮に物申したいことがあったとしても…です。

私とお父様は特に口を挟む内容ではないので黙ってます。



「この件を内密処理というのは……無理でしょうね。ごめんなさいねチェルちゃん。」


ソフィア様が私に謝罪しますが、私はそんなに気にしてません。

王太子妃なんて面倒なだけです。

それにレイモンド様が来訪された翌日に、レイモンド様の行動を知ったダリア様からお手紙を頂いて、メアリーちゃんと直接会って思いました…。


私は真の愛に目覚めた…。


というのは冗談ですが、メアリーちゃんが可愛いんです!ぷにぷにほっぺ、略してぷにっぺ!

ほっぺたををぷにぷにしている指にメアリーちゃんの小さなお手手がにぎにぎっーて!

っと失礼しました、取り乱しました。

私は黙したまま頭を下げるだけに留めます。


「ええ、そうでしょうね。ここで働くメイドを始めとする使用人たちの情報伝達の速さを考えれば…え~っと?そこの…ヴィスノ男爵の娘さん…。」


「ダリア様です。」

と、私が声を出すのは補足を入れるときぐらいです。


「そうそう、ダリアさんがここを去った時に情報は虚実交えて広まってると考えた方が良いでしょう。

その上でレイモンド様を王にしなければならないという困難な状況という訳です。」


お母様はレイモンド様を王にと言います。

レイモンド様には弟が二人いますが、第二王子のカイト様は王妃様の子ではなく側室の子で、まあ何と言いましょうか…王の器ではありません。

一言で言えば我儘なんです。


第三王子のリンク様は王妃のソフィア様の子ですが、レイモンド様が居た所為で、とても素直な方に育ってしまい…こちらも王の器ではなく、素直故に王になれば操り人形になってしまいます。


まあ、リンク様を王にしてレイモンド様を宰相に据えて―――というのが有力な案の一つですが、問題は第二王子のカイト様を飛ばしてって第三王子のリンク様をというところで、出来れば避けたい状況ですね。

なので一番丸く収まるのは予定通りレイモンド様が王になることです。



「その子、メアリーを養女にしてレイチェルが母―――」

「そんな!」

「お母様!」


ダリア様の反応から私も声を上げます。


「でしょうね…私がそこのダリアさんの立場なら当然受け入れられるものではありません。

立場上仕方ないと納得したとしても…遺恨は残ります。」


「それが分かっているなら…。」


「お黙りなさいチェルシー。あなたも分ってるでしょうが、先の発言は本意ではありません。

ダリアさんの反応を見る為のものです。」


言葉で相手の反応を窺うのは高位貴族の常套手段です。

ですが、ダリア様は男爵家でしかも三女です。そんな教育されて…ああ…納得しました。


母の言葉にダリアさんがビクッと肩を震わせ俯いてしまいますが、さっきのお母様の言葉に見せた顔は私もバッチリ見てます。

立場を理由に自分の子を理不尽に取り上げられることに対する悲しみの顔…でしたが、その瞳に憎しみが宿ってました。

その腕の中でメアリーちゃんはさっきまで元気に笑ってたのに、気付けば今は眠ってます。



はぁ~、かわええなぁ~…。



「…チェルシー、良いのですね?」

「え?あ、はい。それが一番よろしいかと思います。」


「はぁ~、ウィル?」

「私も構わんよ。」


「では…ダリアさん。」

「は、はい。」

「貴女をクラシュタ家に養女として迎え入れます。」


「「「えっ⁉」」」


「そしてレイモンド様と結婚してもらいます。」


「「えっ⁉」」


最初の驚きの声はこの場に居る私たち家族以外の声で、次がレイモンド様とダリア様です。


身分が違う為、メアリーちゃんの為に王位を辞してでももメアリーちゃんをとるつもりだったレイモンド様と、身分が違うのと、事が事なので実家のヴィスノ男爵家も頼れず一人でメアリーちゃんを育てるつもりだったダリア様。


しかもこの提案を婚約破棄される予定のクラシュタ家が、ということで全員が驚くのは当然でしょう。

まあ、私がそう思ってるだけなんで本当の所は分かりませんが、おおよそその辺りで正解でしょう。

普通のご令嬢であればこのような提案すら頭に浮かびませんからね…。



「ヴィスノ男爵様はそれでよろしいでしょうか?」

「よ、よよよろしくお願いします。」


ここに来て初めて男爵様の声を聞きました…どもってますけど。


「そう…ですか。ソフィアもそれでよろしいわね?」

「はい、レナお姉様。お手数をおかけして申し訳ありませんでした。」


まあ、婚約破棄されて面子を潰されるはずのクラシュタ家が文句を言わないので、話し合いはあっさり終わりました。


……………終わったよね?


と、いうことで!

私は立ち上がりダリア様に近づきます。



「ダリア様。」

「は、はい。」

「間違えました。ダリアお姉様。」


「あ、そう…そうなるのよね…。」

「はい。というわけでメアリーちゃんをぷにってもいいですか?」

「え?ど、どうぞ?」

「ありがとうございます。」


私はそう告げて、眠っているメアリーちゃんの頬をぷにぷにします。

おぉぉぉ、柔らかい♪まさに天使の寝顔♪です!

前回会ったときは遠慮しましたが、今は姪です!

いやまだですけど…。


私がぷにったところが気になるのか、メアリーちゃんは眠っていながら、私の指を払い除けるように手を彷徨わせます。


可愛いです♪


「チェルシーは何をやっているんですか。」

「お話も終わりましたし…メアリーちゃんをぷにぷにしたかったんですもん。」

「もんではありません。まだあなたのことが残ってるでしょ!」

「お母様、お静かに。メアリーちゃんが目を覚ましてしまいます。」

「そんなこと―――」

「お母様の孫になるんですよ?」


「………………そうなるのよね。ダリアさん…いえ、リアと呼ばせてもらうわ。リア、その子を抱かせてもらってもいいかしら?」

「は、はい。」


ダリアお姉様に拒否権は無く、お母様に恐る恐るメアリーちゃんを預けます。


「チェルシーの赤ちゃんの頃を思い出すわね…ウィルとソフィアも抱いてみる?」

「はい♪私は男の子だけでしたから…ちょっと緊張します。」


母からソフィア様へと移動されるところでパチッとメアリーちゃんの目が開きます。

メアリーちゃんは状況が理解出来てないのか、一瞬固まってしまいますが、直ぐにキャッキャ♪とソフィア様とお母様に向かって小さな手を二人に伸ばして笑ってます。


「「ふふぁ~」」


見事です。

ただ愛想を振り撒いただけで、この場のヒエラルキートップとナンバーツーを陥落してしまいました。

…いえ、この二人だけではなく、お父様と王様にレイモンド様もですね…メアリーちゃん無双です。



「チェルシーでもここまでの愛想は無かったですよ。やりますね。」


そんなこと言いながら、母はメアリーちゃんの顎辺りを指でくすぐります。

その後、王妃様からお父様へ、そして本来の祖父になるのに、ダリアお姉様が養女になってしまうことで、なかなか会えなくなるヴィスノ男爵様へと…

たらい回し状態なのにメアリーちゃんは嫌がる素振りもなくキャッキャ♪と喜んでます。



ここに孫バカ祖父母の会と姪バカが誕生しました。



「わ、儂にも…。」

「僕にも…。」


と王様とレイモンド様が声を上げますが…


「あなた達はしばらく正座です!特にレイモンド!誰の所為でこのようなことになってると思ってるのですか!」

と、王妃様に怒られます。


このような?メアリーちゃんをみんなで代わる代わる可愛がってることでしょうか?

それなら、半分…は言い過ぎですが、種の分レイモンド様の功績ですよね?何故レイモンド様は怒られてるのでしょうか?

それに王様は全然関係ないような…?私達の謝罪以降言葉を話してないような…



「ソフィア様…そこまでお怒りになられなくても…。」


私が擁護しようとしたことで、レイモンド様の顔が少し期待した顔になります。

が…


「メアリーちゃんの種はレイモンド様なのですから、怒るのではなく褒めるべきところなのでは?」


私の言葉に王妃様とレイモンド様はガクッと肩を落とします。


「チェルちゃん…そちらではなくて、貴女との婚約破棄の件で私はその原因のレイモンドを怒っているのです。」


「ああ…。」

…すっかり忘れてました。


「チェルシー。仮にも公爵家の令嬢が種なんていうものではありません。」


お母様!仮ではありません!ちゃんと歴とした公爵令嬢です!

と言いたいですけど、お母様が怖いので謝ります。



その後、メアリーちゃんがお眠になったようなので解散になりました。



「儂らは…?」

「……………。」




こうしてダリアお姉様は無事にレイモンド様と結婚して、目出度く私はメアリーちゃんの叔母という立場を手に入れました♪


めでたし、愛でたし。





余談ですが…第二王子派の暗躍がありましたが、孫バカ祖父母の会…いえ、お母様とソフィア様によって見事に潰されます。


第二王子のカイト様を廃嫡寸前まで追い込んで、そこで手を差し伸べ、二度と逆らわないようにしてます。

そこで完全に潰すのではなく、温情という手を差し伸べて二度と逆らわないようにするところが怖い所ですね…。


さすがはトイフェルシュベスターと呼ばれたお母様とソフィア様です。



え?私がどうなったのか?ですか?


「チェリュー。」

「は~い♪今行きま~す。」


ということで、姪バカこと私、チェルシーはメアリーちゃんと偶に一緒に遊んでます。

王家から慰謝料としてそれなりのお金を貰いましたし、小さいですが王都、否!メアリーちゃんの近くに領地を頂きました。


そちらは基本人任せです。主にクラシュタ公爵家から派遣してもらった人が管理してます。

故に私は王城にてメアリーちゃんの相手をしながら癒されてます。

メアリーちゃんの実の両親、ダリアお姉様やレイモンド様よりも一緒の時間が多いかも知れませんね。

孫バカ祖父母の会の重鎮のお母様とソフィア様と同じくらい?


え?結婚?何それ美味しいの?

あ、今回のは美味しかったですね♪婚約でしかも破棄されましたけど…






お読み頂きありがとうございました。

婚約破棄されるお話をよく見ますが、お相手は同年代の女の子が多いと思ったことで、今回思い付きで書きました。

出来ちゃった破棄。婚約破棄の理由が相手の子供って…

と書き出してみたら、中盤から周囲の方が堕とされてます。

何ででしょうかね?

書いた私にも不明です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 赤ちゃんは天使とよく言われますから当然かと(笑) まるくおさまって良かったですね♪
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