プロローグ 【新しい世界との出会い】
こんにちは。灰色カプチーノです。
初投稿です。
拙い文ですがよかったら見て欲しいです。
今回はプロローグのような者です。
本編は次回からです。
…眩しい光が目を指す。
そこは見慣れない場所であった。
なんと形容すれば良いかわからぬが、一番近いイメージは聖堂であろうか。
厳かな造りの柱が規則正しく立ち並び、上部のステンドグラスからは暖かな光がまっすぐに大理石の床におとされていた。
間の抜けた感嘆の声が上がった。
冷たく澄んだ空気を吸いながら、心地の良い足音を立てつつ奥へ進むと、人が居た。
何者なのか、どうしてここにいるのか、ここはどこなのか。
ぬぐいきれない疑問とそこからくる不安は数多にあったはずであった。
しかし「何者だ?」という声は出なかった。
暫くそのまま向き合っていると、その者が、ふ、と笑ったような気がした。
笑ったような気がした。
………
枕の向こうで聴き慣れた音が8:00を告げた。
どろどろの意識が徐々に人間の形へと姿を変え、それと同時にまた鬱屈な今日が始まったことを理解した。
のそのそと布団から出て窓に近づくと、カーテンの向こうは清々しいほどの朝であった。
特に特筆するべきこともなく、普段通りの朝食を作り、身支度をし、玄関を出た。
底のないような、平和であった。
駅へ向かった。いつもと違うのは昨日見た夢が妙に頭に残っていることだけであった。
考えるたびに、不思議と満足したような、幸せな気持ちになった。
昨日の夢に思いを馳せていると駅前の交差点に出た。ボーッと考え事をしていた。
だからかはわからないが歩行者信号がしきりに止まれを指していることに気付かなかった。
ぶつかる寸前世界がスローに見えた。走馬灯というやつだっただろうか。
会社はどうするか、親は困るだろうか、上司になんて説明しようか、有給残ってたかな、もし死んだらどうしようか、、死ぬほどの事故ではないよな?、治療費分の貯金はあったはずだよな、なんで赤信号に気付かなかったのか、、、、、、、、、、、、、、またあの人に会えたらいいな、、、、、、、、
思考が巡り巡って、意識が途絶えた。
…………
おそらくなんの変哲もない、ただの事故であった。
例え打ち所が悪くても死ぬほどではなかった。はずだった。
しかし、目が覚めて初めて見たのは病院の天井ではなかった。
「どこだ、ここは?」
口に出しては見たものの、この場所がなんなのか、なんとなくわかっていた。
聖堂のような場所、厳かな柱が続く廊下、光の注ぐステンドグラス、大理石の床、、
ここは夢で見た場所である。
しかし何故そんなことに?俺は死んだのだろうか?これからどうなるんだろう?この場所はどこだろう?……
「クソ、、俺は一体どうしたらいいんだ、?」
尽きない不安にいい歳をした大人が涙目になっているのは滑稽であろうが、そうするより他にすることが浮かばない。
「そういえば…」
夢の中では奥に人がいたことを思い出した。
夢を行動のきっかけにするのは、24年の人生で初であった。
………
歩いた。変わらない風景に時間感覚が狂いそうになりながらも歩いた。
そして、あの人がいた。
白色のドレスに身を包み、顔にはベールがかかっていた。ステンドグラスからの光が、細くしなやかな体に反射して、神々しい雰囲気を醸し出していた。
ドレスの間から垣間見る素肌は透明で、光が透けているようであった。
その美しい姿にずっと見惚れていたような気がした。
ハッとして、「もしかすると本当に女神なのかもしれない。」と思った。
「こんにちは、私は女神です。」
女神だった。
そのことに疑問の余地はなかった。
とても綺麗な声だった。体を貫通してどこまでも通り抜けていくような声だった。
「ここは…いったいどこなんでしょうか?私は死んだのでしょうか?」
抱えきれない不安を払拭するように質問をした。
「ここは私の部屋です。あなた、秋野凪は、、、死にました」
この女神は優しいのだろう。俺に死んだことを告げるのに躊躇しているように思えた。
やはり、、死んでいたのか、
しかし、死んだ人間は天国や地獄に行くはずである。別にキリスト教徒ではないが誰しもがそう考えて正しいと想い、俺もそう考えていた。
「そう、ですか。でも何故あなたの部屋に…?」
「…人は死ぬと無意識の塊となり現世を漂います。いわゆる魂という存在ですね。そこを私たち神が気に入った魂を拾い、自分たちの部屋へと招き、新しい肉体と精神を宿し、もう一度現世へと送るのです。」
よくわからなかった。しかし神様は1人ではないらしいことと、この部屋に呼ばれた理由はこのヒトの気まぐれであるということは理解できた。
「神という存在は1人ではないのですか。」
「神というのは階級的な呼び方です。神にふさわしい魂があれば担当の者が拾い、知識を授け、新しい神となるのです。」
会社か。
「ところで、あなたは何故私の部屋に呼ばれたのか、お分かりでしょうか」
意味深なことを聞いてきた。死んだと聞かされて混乱しているのにそんなところまで思慮が及ぶわけがない。
「わかりません、何か理由があるのでしょうか?」
「はい、あなたには異世界に転生してもらいます。」
「…は」
イセカイ? いせかい あぁ異世界か。
確か最近はそういった類の物語が流行っていたような気がするが、本当にそういった話が存在しているとは思っていなかった。
「異世界とは…なん…ですか?」
「あなたたちの世界とは別の世界ということです。先ほど現世という言葉を使いましたが現世は一つではないのです。様々な世界が並行して存在しています。あなたにはその世界へと行ってもらいその世界を救って欲しいのです。あなたにはその素質があります」
「俺が…ですか?」
「はい」
理解できないことばかりであった。わからなことだらけでこの場所から逃げ出したかった。
まるで胎内から新しい世界へと放り出された赤子のような心持ちであった。
「私なんかが出て行って何か意味があるのでしょうか?」
「あるから言っているんです。いいですか?これはあなたにしかできないことなんですよ」
「そう、ですか」
こんな美人からあなたにしかできないなんて言われると嬉しくない人はいないだろう。
どうせ死んでしまっているんだ。やってみてもいいのではないか
「…ちなみに断るとどうなんるんでしょうか?」
「どうもなりません。別の神の所へ送られ、現世へと戻るための準備をする場所、つまりあなた方のいう天国や地獄へと送られます」
「なる…ほど…」
「ちなみにあなたは地獄行きですよ」
「は?」
「神という貴い存在のお願いを断るわけですから、地獄へ行くことは必須ではないですか」
「え?」
「地獄は辛いですよ。どうしますか?」
笑顔で脅しをかけてくる女神に困惑を隠せない。煌びやかな風貌の奥に一抹の闇を見た気がする。
が、どちらにしろ俺の気持ちは決まっていた。
「…貴方についていきます」
そう口にした。
「あなたならそう応えてくれると思っていましたよ。では早速、異世界へと転生します」
「ち、ちょっと待っ、、」
そう言おうとした瞬間眩しい光に身体が包まれた。
フワッとした浮遊感を感じながら声を聞いた、
「また、お会いしましょうね」
その女神を見た。
ふ、と笑っているような気がした。
笑っているような、気がした。
読んでいただいてありがとうございます。
今回は長めでしたが、次回からは少し短めになるのかなーて思います
よかったらこれからも応援してください。
灰色カプチーノでした。