表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/150

後の領主、悪徳町長を懲らしめる

 ゴリオールの元へと向かう俺たち。

 ベランさんは小さな物音にも注意を払い辺りの警戒を怠らない。

 こんなところでベテラン冒険者としての経験と、ただ長い期間を冒険者の名のもとにただ過ごしていただけの俺との差が出る。

 でもさ、ゴリオールなんて金にがめついだけの雑魚だし、この屋敷に危険な罠なんてないと思うんだけどな。

 ベランさんは意外と臆病だったりするのかな?


「あの執事のおっさんを警戒してるんだよ。俺の見立てではかなりのやり手と見た」


 あの執事は護衛の警備員のしての役目も兼ねているそうだ。

 さらに続ける。


「眼鏡を掛けているメイドもやなりヤバい感じだったぞ」


 そうだったの?

 俺が見た感じ二人とも普通の使用人にしか見えなかったんだけどな。

 ベランさんによると実力をこれでもかと見せつける者よりも、実力を隠せる者の方がはるかに危険なんだそうだ。

 範囲哨戒で辺りを調べてみた感じ、二人ともこの屋敷の中には見当たらない。

 たぶんどこかに出掛けているんだろう。

 もしくは……俺たちの侵入に気が付いて姿を隠し隙をうかがっている?

 そうだとしたら面倒だな。

 あの二人が現れる前に仕事を済ましてしまおう。


 *


 俺たちはゴリオールの部屋に侵入した。

 扉に鍵を掛けてなかったので楽勝だ。

 俺たちの目の前でゴリオールは娼婦のおばちゃんとお楽しみ中。


「やはり奴隷娼館を任せているお前が女の中では最高だな! 早く俺の女になれ!」

「いやですよ。釣った魚には餌をやらないゴリオールさんの女になんてなったら、タダ働きのメイドにされるのは目に見えてますから」


 どこかでみたおばちゃんだなーと思ったら、メイミーを買った娼館の店主だった。

 なんでこんなとこに?

 モニカがボソッと声をあげる。

 

「嫁にご飯を食べさせないとは最低な男だな」


 モニカさん「釣った魚に餌をやらない」の意味は違うと思いますよ。

 モニカが声を上げたことで俺たちの侵入に気が付いたゴリオール。


「お、お前たち、いつの間に?」


 今気が付いたみたいだけど、こんなに大人数で部屋に入ってるのに気が付かない方がどうかしている。

 夜のお遊戯に集中し過ぎだろ。


「お前らは昼間の冒険者じゃないか。まさか依頼のことで逆恨みして殴り込みを?」


 はい、正解です。

 でも、そうとは答えない。

 既にその答えは用意してある。


「いやだなー。殴り込みなんてするわけがないじゃないですか」

「じゃあ、なんでこんな夜ふけにワシの部屋に入ってきた?」

「昼間はご迷惑をお掛けしましたので、夜のお遊戯が大好きなゴリオールさんにお詫びとしてとってもいい女の子を紹介しようと連れてきた次第です」

「女の子だと?」


 娼館の店主を振り払いノリノリで聞いてくる。

 好き者すぎるぜ、このおっさんは!


「とある王族の娘でして……王女です」


 嘘はついてない。

 オークだけど。


「王女だと!」

「それはもう、情熱的な娘でして」

「情熱的だと! すぐに紹介しろ! 今すぐにだ!」


 ベランさんはオークプリンセスをゴリオールの前に差し出す。


「なんだこのゴツイ女は?っていうか、女どころか人間ですらないじゃないか!」


 それを聞いたオークプリンセスは気を悪くした。


『失礼ね。これでも花も恥じらう乙女なのよ! 失礼しちゃうわ……って!』


 ゴリオールと目の合ったオークプリンセス。

 一瞬で恋に落ちた!


『ウホッ! いい男!』


 オークプリンセスはベッドの隅で着替えていた娼館のおばちゃんを弾き飛ばすとゴリオールに馬乗りになる。

 さすがに女好きなゴリオールもオークの娘は拒絶した。


「わ、わしはこんな化け物と仲良くしたくないいいい! って。あれ? なんでこんなに気持ちいい?」

『私のテクの前ではどんな男もメロメロよ(はーと』

「うははは! これこそ俺の求めていた理想の女!」

『私もこんな絶倫な男は初めてよ!(はーと』

「好きだー!」

『好きよー!』


 二人とも精力旺盛で相性が最高だった。

 一瞬で意気投合してしまった。


「ここは二人に任せて……」


 俺たちは部屋を後にした。


 *


「なんだか二人とも相性抜群だったみたいですね」

「もう少し嫌がってくれるもんだと思ってたんだが、あそこまで仲良くなってしまうとはな。奴の嫌がる顔を見たかったんだが、なんだか今までの俺たちの苦労が報われないぜ」

「そうですね。まさかオークを受け入れる男がいるとは思いませんでしたね」

「あはは。まったくだ」


 部屋からは二人の激しいお楽しみの声が聞こえてきた。

 二人は仲良くし続けて、朝になってやっと終わった。

 呼ばれたので部屋の中に入ってみると、二人は腕枕をしてすっかりと仲良しになっていた。


「ワシに理想の女性を紹介してくれて、お前らには感謝している」

『ダーリン!』

「姫!」


 再び抱き合って仲良くなりそうだったので咳ばらいで止める。


「ゴホン」


 素に返るゴリオール。

 俺たちを呼び寄せた要件を思い出した。


「そうだった。ゴブリン討伐の依頼完了のサインだ。ほれ」


 無事に俺たちの依頼が完了した。

 

「それとワシは姫の実家を継ぐことにしたから、この町はパセリ村の村長に任せた」

 

 そして棚から封書を何通か取り出した。

 机の上に広げて目的の封書を探す。


「これは執事とメイドの解雇通知だから違うな……。おお、これだ! これはこの町とこの屋敷の権利書だ。村長に渡してくれ、よろしくな」


 ゴリオールが町長の座を勝手に退くことで問題が一気に解決した。

 ゴリオールはオークプリンセスに抱きかかえられてドラス山へと消えていく。

 そこに執事とメイドが現れた。


「ゴリオール様は?」

「この町の町長を辞めてドラス山のオークの姫の所に嫁いだみたいだ」

「なんですと! 私も追わねば!」


 オークのとこでも執事をする気なの?

 どんだけゴリオールが好きなんだよ?


「バトラー様、お待ちください」

「どうした? メディア」

「こんな所に私たちの解雇通告があります」

「なんですと! ゴリオール様は私をお捨てになったのか?」


 さっきゴリオールが机の上に置いたままにした執事とメイドの解雇通知だった。

 男泣きをする執事のバトラー。

 大好きな主に捨てられたのだから泣いても仕方なし。

 メイドのメディアが慰めるでもなくバトラーに聞く。


「となると、パセリ村の卵と孵化器はどうなるんでしょうか?」

「はっ! こんなところで泣いている暇はない。すぐに回収に向かわねば!」


 卵?

 孵化器?

 俺は嫌な予感がしてバトラーに聞く。


「その卵ってもしかして七色に光る大きな卵だったりします?」

「いや、紫色に輝く『ヒドラ』の卵だ」


 よかった。

 竜の卵じゃなかったんだ。

 …………。

 って、思いっきりダメじゃん!

 ヒドラの卵じゃねーか!

 ヒドラといえば巨大な毒蛇のモンスター。

 ドラゴンほどじゃないかヤバいので有名なモンスターだ。

 なんでそんなものをパセリ村に置いてくるんだよ!


「もちろんパセリ村の住人を追い出すためだ。ゴリオール様の指示でヒドラの卵を置いてきたんだ」

「もちろん貯水池をヒドラの毒で汚染させるためですわ」


 ヒドラの毒に侵された土地は使えなくなる……。

 もし毒を撒かれたなんてことになったら……パセリ村は終わる。

 なんてことをやらかしてくれるんだよ!

 どうりでバトラー邸に侵入したときに執事とメイドがいなかったはずだ。


「早く回収に行かないと、卵がかえったらパセリの村が酷いことになるぞ!」


 バトラーの話によると、ゴリーオールは女遊びの他にもヒドラの卵に大金をつぎ込んでたみたいだ。

 ヒドラみたいな凄まじい力のモンスターの卵を買うなんて、王国に戦争でも仕掛ける気でいたのかよ?

 パセリ村を潰すにしてはオーバースペック過ぎる生物兵器だろうが。

 俺たちはモニカの翼を使い、大急ぎでパセリの村に向かった。


 *


 だが遅かった。

 すでにヒドラは孵っていた。

 体高3メトルを超える大蛇が貯水池に毒を流し込み水を紫へと変えている。


「こんなことになってしまった責任は私がとる!」


 バトラーがヒドラへと飛び込む。

 手からは暗器を取り出し一瞬でヒドラを沈める。

 そのはずだったんだが……。


 >ヒドラの尻尾攻撃!

 >クリティカル

 >バトラーは弾き飛ばされ貯水池でおぼれる。

 >猛毒状態!

 >バトラーは虫の息だ。


「バトラーさま! このメディアがかたきをとります!」


 メディアも飛び込むが……同じく貯水池に叩き込まれて虫の息だ。


「あの手練てだれの執事とメイドが一瞬でやられただと?」


 ベランさんは警戒して尻尾の届かない距離でヒドラの隙をうかがっていたが……。


『毒霧ぶしゃーっす!』


 毒を直接吹きかけられてダウンだ!


「ベランさんまで落ちただと?」


 これはマズいことになった。

 俺の指輪でヒドラの毒を防げればいいんだが……。

 俺はヒドラに立ち向かう。

 だが、その時!


『べちん!』


 後頭部を思いっきり叩かれるヒドラ。

 思わず転げて地面に叩きつけられた。


『はっ? な、なに?』


 何が起こったのかわからずオロオロしまくるヒドラ。


「いたずらしちゃダメだろ!」


 モニカがもう一度頭を引っ叩くとヒドラの意識が飛んだ。

 モニカ、おま!

 ヒドラをワンパンでダウンさせるとか、どんだけ強いの?

 

 モニカの実力を垣間見た俺。

 もしかして俺はとんでもない化け物を仲間にしてるのではないだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ