後の領主、ゴブリン討伐の依頼を始める
セージの町にやっと到着した俺たち。
日没までは時間があるので依頼主の町長のもとへと向かう。
途中で住人と何人か出会うがどの人も表情が暗い。
「ここまでゴブリンの被害が深刻なんでしょうか?」
メイミーが心配そうに住民たちを見つめる。
困っている人がいるとついつい気にしてしまうメイミー。
全てに等しく慈悲を与える聖女さまのようだ。
「ゴブリンごときで暗い顔をするはずもない。きっとドラゴン並みの強敵が襲ってきてるんだな。でも安心していい、私が来たからにはもう解決したようなものだ」
モニカはいつも通り自信満々だ。
町長の家にやってきた俺たち。
小さいながらお屋敷といっても差し支えのない豪華な建物で、貧乏領主のアレンさんの家より明らかに豪華だ。
こんなお屋敷を見せたらアレンさんが泣くぞ。
玄関にいた執事に話をすると、すぐに町長のゴリオールさんが迎えてくれた。
「皆さん、依頼を受けてくれましてありがとうございます」
ゴリオール町長はとても人の好さそうな中年の紳士であった。
俺たちを玄関ロビーのテーブルに連れていく。
机にはこの町の周辺を描いた地図が広げられ、依頼の説明に入った。
「この町セージの横を流れる川があるのですが、上流の水源にゴブリンが巣くってしまって川の流れをせき止められてしまいました。ゴブリンたちを追い払ってせき止められた流れを取り戻してほしいのです」
単純なゴブリン討伐じゃないのか。
ゴブリンを追い払うとともに、せき止められた川の開放もしないといけない。
依頼書に書かれている以外の目的が増えちょっと面倒だな。
グラトニーさんがそのことについて指摘した。
「ゴブリンの討伐だけではなく水源解放までするとなると、依頼書の内容とは違い新たな作業が発生し依頼料金の見直しをして頂かないといけませんがよろしいですかな?」
さすが冒険者の経験が長いだけあって、俺が疑問に思っていたことを先回りして指摘してくれた。
ただの大食らいなおっさんじゃないな。
それを聞いたゴリオール町長は不快感をあらわにした。
人の良さが顔から抜け落ち、嫌悪感を丸出しにする。
「依頼を達成する前から金の話か! そんなもの、依頼をこなしたら好きなだけ特別報酬を払ってやる! 話はここまでだ」
町長は肩を怒らせてロビーを出て行った。
*
宿をとった後、酒場に繰り出す俺たち。
この町にはあまり旅人が来ないらしく、宿は素泊まりの民宿みたいな感じだったので料理が出なかったのだ。
モニカは毎度のように大食い大会を始めようとしたが俺たちが全力で止めた。
「この町の住人から有り金全てを巻き上げるつもりなのか?」
「そーだよ、モーちゃんやめようよ。大食いはもっと大きな街に行ったときにしよ、ねっ?」
「ビアンカがそういうんじゃ仕方ないな……今日は大食いをやめる」
大食い大会を止めたことでモニカが食いまくった分の支払いが俺の財布を直撃した。
止めなきゃよかったと心の中で思ったのは内緒だ。
俺たちが飯を食っていると常連らしき住人たちのヒソヒソ話が聞こえてくる。
『また冒険者か……』
『騙されてるとも知らずに……』
それを聞いたモニカは怒りまくった。
「男なら、陰でボソボソ言わずに正面からいえよ!」
「すいませんです」
「ごめんなさい」
胸倉を掴まれて怒鳴られた常連は酒場から飛ぶように逃げた。
*
翌朝、ゴブリンの巣となっている上流を目指す。
川に沿って道が敷設してあったので移動は楽だった。
情報通り2時間ほどで目的のゴブリンの巣についたんだが……。
「これ、どう見てもゴブリンじゃないだろ?」
「ごしゅじんさま、私にもゴブリンには見えません」
目の前には人間の住む村があったのだ。




