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後の領主、ベテラン冒険者の扱いを考える

 ベランさんをどうするか相談しにラネットさんの部屋に向かう。

 でも、いなかった。

 応接間に戻ろうとするとラネットさんが現れた。


「ちょうどよかった。ベランさんの扱いでラーゼルさんを呼びに行こうと思っていたんです」


 で、連れてこられたアレンさんの部屋。

 アレンさんと一緒にボダニカルさんもいた。

 どうやら家族会議をしていたようだ。

 アレンさんは書類を渡してくる。


「ベランさんなんだけど、こちらで調査しておいたよ」


 なんという手回しの良さ。

 仲間になることを見越して、ベランさんの資料を既に手にしていたみたいだ。

 ポンコツだと思ったアレンさん、事務仕事は速いな。

 なにも出来ないポンコツだったら、ボダニカルさんみたいな素晴らしい女性をお嫁さんに出来るわけもないか。


「人格素行も問題なし。特にギルドでの警告歴無し。奥さんと娘さん家族がクレソンにいるね」


 ただ……。

 と言葉が続いた。


「一見すると問題ないように見える。でも以前加入していたパーティーであまりいい評判を聞かなくてね……とにかくお金にがめついと。まだ調査が済んでないんだけどベランさんは借金をしているらしいんだ」

「借金ですって?」

「それもかなりの大金らしいんだ」


 まだ調査中なのではっきりとした額は判ってないんだけど、少なくとも借金が1500万ゴルダ。

 利息も含めると2000万ゴルダは超えるんじゃないかという話だった。

 1000万ゴルダと言えば家が買える金額なのでかなりのもの。

 家が2軒分ともなれば相当なものだ。

 しかも借りてる相手が悪くて闇の世界の高利貸しらしいとのこと。

 どうりでお金になるドロップ品にこだわる訳だ。


「それが今でも冒険者を止められない理由らしいんだよ」

「なるほど」

「脛に傷を持つものを仲間にするのは大領主を目指すのならばお勧めできない。それが領主を失格する弱点にもなりうるからね」


 でも……。

 俺がレベル上限を上げられるのを知られてしまった以上仲間にしないというのもな……。

 変に嫌われるとよからぬ噂を流されて後々問題ありそうだ。

 アレンさんは俺に決断を迫る。

 

「ラーゼル君はベランさんをどうしたいんだ?」

「考えることはいろいろあるけど、俺は仲間にしたいと思う」

「金銭的なトラブルを起こすかもしれないぞ」

「俺たちは確かに強くなったけど冒険者としての経験が足りないんです。出来ればベランさんの知識は手に入れたいと思いますし必要だと思います」

「そうか。そこまでハッキリとした意思が固まっているのならば僕は何も言うまい。ここはゆくゆく君の領地になるし自分の信じる道を好きに進めばいい」


 アレンさんは反対するものの最終的な決断は俺に任せるとのことだ。

 ラネットさんも仲間にするのは反対のようだった。


「私も借金の話を聞くまでは仲間にしていいとも思っていた。でも高利貸しみたいな闇の世界と繋がっている危ないところから借りてるとなるとな……」


 再びアレンさん。

 何か策があるようだ。


「これを使うという手もある」

「これは?」

「記憶を消す魔道具だ。3日以内の記憶ならすべてきれいサッパリ消せる。使うか使わないかは君に任せるよ」


 マインドクリーナー。

 小さな小瓶に入った水薬だ。

 この薬を飲めば状態異常を引き起こし、ここ3日間の記憶がすべて消えるそうだ。

 ベランさんに依頼を出したあたりからの記憶がゴッソリと消せる。

 使うなら本当に困った時だな。

 それを預かりベランさんの元に戻る。


 俺は直球で借金の話を聞いてみることにする。

 その前に……。

 

「ラネットさん、申し訳ないです。少し手伝って欲しいことがあるんですが……」

 

 俺はラネットさんと準備を済ます。


 *


 ベランさんが待つ応接間に戻る。


「話し合ってきました。俺はベランさんのレベル上限を上げたいと思います」

「ありがとうございます」

「ただし!」


 俺は調査書類を机に叩きつける!


「多額の借金があるそうですね。その借金を作った理由の説明をハッキリとして欲しい」


 書類には借金のことはなにも書いてないけどハッタリだ。

 ラネットさんは審判の宝珠を机の上に置く。

 審判の宝珠は俺が頼んで持ってきてもらったのだ。

 これで嘘は言えない。

 ベランさんは静かに話し始める。


「借金は娘の病気の治療のために使ったんだ」

「治療?」


 宝珠の色は青。

 本当の事だ。


「ええ。魔法使いだった娘が病気になってしまい、その治療で借金を負ったんだが返済しきれずに気が付いたら利息で大変なことになっていたんだ」

「やましいことに使ったんじゃ無いんですね?」

「それは神に誓ってない」


 審判の宝珠は青いまま。

 嘘は言ってないようだ。

 娘さんの病気か……。

 それで借金返済のために冒険者を続けていたんだな。

 そしてレベル上限を上げるのもより大きな報酬を得るために冒険者として返り咲くため。

 多分そんな感じなんだろう。


「娘さんは元気になられたんですか?」

「いや。ずっと悪いままだ」


 そうなのか……。

 多額の薬代が掛かって借金は増えていく一方だという。


「ならばレベル上限を上げてやるしかないな」


 それを聞いたラネットさんは思うことがあり俺に耳打ちする。


「ラーゼルさん、レベル上限を上げてしまったらレベル上限が上げられる秘密がバレないかな?」


 確かにバレてしまうな。

 でも、それを防ぐ方法が無くもない。


「契約の護符を結んでもらいます」

「契約の護符? ですか?」


 ベランさんが契約の護符を知らなかったわけではない。

 ベテラン冒険者だけあって契約の護符の危険性を知っているらしく、それを交わすことに驚いたそうだ。

 契約の護符とは契約を破れば死をもたらす魔道具である。

 ラネットさんの話ではこの屋敷に何個か在庫があるそうだ。

 早速持ってきてもらう。

 俺は契約の草案を作り始める。

 俺からの要求はこうだ。


 ----------

 ラーゼルからの対価

 ・ベランのレベル上限を上げる。

 

 ラーゼルからの要求

 ・今まで通り協力してもらう。

 ・ベランが知った秘密を口外しない。

 ----------


 ベランさんからの要求は以下の通り。


 ----------

 ベランからの対価

 ・今まで通り協力する。

 ・知りえた秘密を口外しない。

 

 ベランからの要求

 ・レベル上限を20上げてもらう。

----------

 

「これで契約書の護符を作成します」

「ありがとうございます」


 無茶な条件ではないのでベランさんに受け入れてもらえた。

 すぐに契約書を作成し、契約の護符が結ぶ。

 そして俺はベランさんのレベル上限を上げた。

 苦しむものの悲鳴は上げない。

 さすがベテラン冒険者だけはある。

 

「これでレベル上限が上がりました」

「ありがとうございます」

「明日からのレベル上げが楽しみですね」

「ええ。本当にありがとうございます」


 ベランさんは部屋を去る。

 それと同時にモニカとメイミーが入って来た。

 モニカは壁に寄りかかり、なにか言いたげだ。


「これで終わりじゃないんだろ?」


 終わりだけど?

 なにをしようとしてるんだ?

 俺が戸惑っているとモニカが俺の手を引いて部屋を出る。


「さあ出掛けるぞ」

「どこに?」

「娘の治療だ。今のメイミーなら治せると言っている」


 ぶんぶんと頷きまくるメイミー。

 治せるの?

 

「ごしゅじんさま、今の私のレベルならばたぶん治せます」

 

 いつの間に病気を治せるほどメイミーは成長したんだ?

 さすがメイミー。

 かわいいだけじゃない。

 俺たちはモニカに乗りベランさんの家へと向かった。

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