後の領主、レベルアップに喜ぶ
「はあ、はあ、はあ。やっとスケルトンが片付いたな」
「自分でもよく倒したと思うよ」
ラネットさんはぐったりと座り込む。
徹夜でスケルトンを狩り続けていたので、みんな疲れ果てて死んだような眼をしている。
一人の例外を除いて。
「楽しかったぞ! もうスケルトンは出ないのかな? 売り切れか?」
モニカの体力は底なしのようだ。
さすがは竜、俺たち人間とは違う。
皆にマナポーションを渡し、飲んで貰って尽きたMPを回復してもらう。
さすがにこんな状態で敵に襲われたら事故が起こって全滅するかもしれない。
「ごしゅじんさまも飲んでください。身体に染み渡ります」
メイミーが口を付けたエーテルを俺に渡してくる。
「おう!」
これって間接キスだよな、なんてことを考えていたらラネットさんに盗られた。
「ぷはー! ラーゼルさん、マナエーテルはおいしいですね! お酒よりおいしい!」
豪快にエーテルを飲むラネットさん。
あ……メイミーのエーテルが。
一滴も残らず飲み干していた。
「私にもエーテルをくれ」
モニカも飲むと思いきや……。
「じゃあ、みんなも回復したことだし、もう一度スケルトンを呼ぶぞ」
おい!
バカ!
やめろ!
俺たちは徹夜で戦っていてもう限界だから!
これ以上スケルトンが出たら間違いなく死ぬ。
「モニカ止めるんだ!」
「モーちゃん、やめて!」
床にマナエーテルと再びぶちまけようとしているモニカをみんなで必死に取り押さえた。
*
ダンジョン、いやマンイーターの出口へやって来た俺たち。
全員カンスト迄レベルが上がったみたいだな。
この調子ならSランク相当となるレベル60には確実に到達できる。
バルトさんからの課題の一つをクリアしたことになる。
ホッと胸を撫でおろす俺。
そんな俺にモニカが聞いてきた。
「このマンイーターどうするんだ?」
このままでは冒険者が呑み込まれて被害が出る。
もちろん処分しかない。
「じゃあ、ラネットさん退治してください」
「わかった」
ラネットさんが剣を掲げ大技を繰り出そうとするとモニカが止めた。
「なんで倒すんだよ? こんな楽しいものを」
「このまま放置したらまた冒険者が食われるだろ? それに開拓の邪魔になる」
「それなら人が立ち入らないように柵を作ればいいだけの話だろ?」
「まあ、そうなんだけど……」
「ちゃんと管理するからこいつは私にくれ。頼む!」
モニカは真剣な目をして俺に泣きついてくる。
「わかったよ。約束だからな。ちゃんと管理しろよ」
本当にモニカが管理できるのかな?と思ったけど、必死に頼み込んでくるので断る訳にもいかず管理を任せることにした。
*
帰りは楽ちんだ。
モニカの背に乗ってお屋敷に帰る。
モニカが竜の姿に変わるとベランさんは腰を抜かした。
「お、お嬢ちゃん、竜だったのか? どうりで強いはずだ」
強いと言われて嬉しかったのか胸を張りつつ照れる竜の姿のモニカがかわいい。
でも、ちょっと気になることがあった。
「行きもお嬢ちゃんに運んでもらえばよかったんじゃないかな?」
「すまん。たしかにそうなんだけど、モニカが竜なのを知らせてなかったからな」
「明日からは私に任せろ」
モニカに運んでもらえばかなりの移動時間短縮になるな。
中規模ダンジョンの攻略がはかどる。
ということでモニカを運搬役に任命した。
*
屋敷に戻った俺たち。
さすがに徹夜の狩りは疲れ果てた。
寝不足の状態でレベル上限上げをするのは辛い。
なので風呂にだけ入って寝ることに。
レベル上限上げは明日の朝にすることにした。
もちろん、寝るだけ。
いちゃいちゃなんてする気力はない。
おれがメイミーと添い寝しているとラネットさんがやって来た。
もしかして、仲良くなりたいの?
もてる男は辛いなー。
なんてことを考えていたら全然違った。
「ラーゼルさん。ベランさんの事なんだけどどうします?」
「ベランさん?」
ベランさんが何かやらかした?
もしかして分け前の事か?
「いや、レベル上限解放のことを知ってしまいましたよね?」
「そうだったな」
メイミーがレベル上限解放の事をうっかりと漏らしてしまった。
屋敷に戻って来たベランさんがレベル上限解放のことをラネットさんに聞いてきたそうだ。
マンイーターでの激しい戦闘でレベル上限解放のことを忘れたかなと思ったら、全然そんなことはなかった。
「どうするって言われてもなー」
幽閉したり殺して闇に葬り無かったことにするとか出来るわけもないし。
そんなことしたら人間性を疑われてしまう。
漏れてしまったことはどうにもならない。
ベランさんがなんで聞いてきたのか聞くしかないな。
それを聞いてからどうするか考えたい。
「ベランさんを応接間に連れてきて下さい」
メイミーが申し訳なさそうにしている。
「ごしゅじんさま、ごめんなさい。私のせいで大変なことになってしまいました」
「一か月も一緒にいたらメイミーが漏らさなくともいずれバレてたことだ。気にすることはないよ」
「私の事を叱らないのですね。そんな優しいごしゅじんさまがますます好きになりました」
メイミーが思いっきり抱き着いてきた。
俺もメイミーが好きだから。
運命の人だから。
俺も抱き返してやった。
*
俺が応接間に着くとベランさんが待っていた。
「レベル上限解放の事なのですが……」
もしかしてこれをネタに俺を脅そうとしている?
面倒なことになったかもしれない。
「そのことを知ってしまいましたか」
「はい、でも絶対に人には漏らしません」
「要求は?」
「要求なんて無いですよ。ただ、出来れば、俺もレベル上限を上げて欲しいんですがお願いできないでしょうか? 冒険者としてまだまだ第一線で活躍したいと思っていたんですが、レベル上限が訪れてしまい泣く泣く半引退状態となっているんです」
前にもそんな話を聞いた気がする。
なんだ。
脅しとかじゃなくて、単にレベル上限を上げて欲しいという話か。
でもなー。
有名なベランさんのことだ。
そんなことをしたらベランさんのレベルが上がったのを見て、俺がレベル上限解放が出来ることが他の冒険者たちにもバレるぞ。
きっと俺の元に冒険者が殺到することになる。
困ったことになった。
「うーん」
俺が渋い顔をしていると、ベランさんが必死に食らいつく。
「なんでもしますから、お願いします!」
あまりにも必死過ぎる。
俺が初めて買った奴隷のエレネスを思い出してしまう。
嫌な思い出なのであいつのことは思い出したくもない。
まあ、でも……。
俺もかつてはレベル上限に苦しんでいた冒険者の一人だったからな。
出来れば上げてやりたい気もする。
「レベル上限を上げたいですか」
「はい! 是非とも!」
「少し考えさせてください」
さすがに一人で決められることじゃない。
俺はラネットさんに相談することにした。




