後の英雄、運命を感じる
翌朝、宿屋で朝チュンを迎えた俺たち。
ノリで仲良くなっちゃったけど本当に良かったのかな?
嫁であるメイミーとラネットさんを裏切ったみたいで申し訳ない気持ちがいっぱいだ。
もちろん、嫁でもないのに手を出してしまったモニカにも申し訳ない。
俺は宿屋で朝食を取りながらそのことを聞いてみた。
「この子が望んだことだからいいの」
「この子?」
余計なことを言ってしまったと思いっきりモニカの目が泳いでいる。
この子ってなんだよ?
俺には聞かれたくないみたいでモニカは話題をそらした。
「いや、なんでもない。今日はどうするの? また食べてていい?」
「すぐに町に戻る予定だから、大食いはするなよ」
「えーっ!」
「食い過ぎで馬車に乗ったら、酔ってまた吐くだろ?」
「そんなー」
かなり納得がいかない様子のモニカの首根っこをつかみ、俺たちは神殿に向かう。
約束の時間よりも少し早いけど早い分には問題はないだろう。
するとクーリアさんが笑顔で迎えてくれた。
「魔力の充填ですか? 優秀な聖女を見つけたのでもう終ってますよ」
やってきたのはそこはかとなく存在感を溢れ出させている女の人だった。
歳は40代後半。
俺の母親と同じぐらいの年齢だ。
「この方は以前この神殿で聖女長をしていた方で、偶然にこの街を訪れていたんですよ。運が良かったですね」
クーリアさんの態度に尊敬してる様子が滲み出しているぐらいの優秀な聖女らしい。
「占いや予言にも長けた有能な方なんですよ」
「じゃあ、ドラゴンの行方も占ってもらえますか?」
「もちろんです!」
元聖女長は魔道具を抱いたまま、お辞儀をする。
「私はボダニカル・アルティヌス。元聖女長というよりもラネットの母親といった方がわかりやすいかしら?」
「ラネットさんのお母さんなんですか?」
うなずくボダニカルさん。
そういえばアレンさんは奥さんがクレソンの街に住民を連れて避難していると言ってたな。
偶然とは言え凄い。
運命のようなものを感じてしまう。
「いえ、偶然ではありません。あなたがここに訪れるのはわかっていました」
偶然ではなく必然だったとボダニカルさんは言う。
あれ?
でも、ちょっとおかしいな。
もし本当に俺が訪れるのがわかっているのならば、神殿に居ないでクローブの屋敷に居ればよかったんじゃないの?
「ええ。そうですね。確かに会うだけであればクローブの屋敷に居ればよかったですね」
俺が質問する前に答えた。
どうなってるんだ?
「でも、ドラゴンの雛を見つけるには昨日の夜の出来事がどうしても必要だったのです」
「昨日の夜?」
「ええ、モニカさんと心を通わせたことです」
心を通わせたって……仲良くなったことか?
ちょいまて!
あれを見られてたの?
俺は見られて興奮する変態じゃないので、けっこう恥ずかしいんだけど。
俺が恥ずかしさで顔を真っ赤にしているのに対し、モニカは普段では見せない真剣な表情をしている。
覗きをされたことを怒ってるのか?と思ったら違った。
真顔になったモニカはボダニカルさんに向かって真剣な目を向ける。
「全てお見通し……ということなんですね?」
「ええ、この魔道具を使わなくとも」
あたりに静寂が訪れた。
そして再びボダニカルさんが話し始める。
「私は今日この時の為に生まれてきたようなものです」
モニカとボダニカルさんが話しているけど、なんのことを言っているのかわからない。
モニカの帽子は跳ね上がりモニカの手の上に乗った。
「そこまでわかっているのならば隠し事をしても意味はないな」
「えっ? 嘘だろ?」
なにに驚いたって?
帽子が話していたからだ。
なんで帽子が話している?
「モーちゃん……」
「もういいんだビアンカ」
「でもモーちゃんの夢は……本当にいいの?」
「ああ、十分楽しめたさ」
え?
モニカと帽子が話してるんだけど?
どうなってるの?
「これじゃ話しにくいな。姿を変える」
そういうと帽子はポンと煙を出して変化した。
見たことのない異国の衣装を着た少女に。
「初めましてだな。私はモニカ。ラーゼルの探していたドラゴンの雛だ」




