後の英雄、勝手に英雄と名乗った嘘がバレる
しかも、更なる最悪の事態が訪れた。
「やあ、みなさん。こんなところで集まってなにをしてるんですかね?」
うげ!
アリエスさんだけじゃなくバルトさんまで現れた。
英雄であり、アリエスさんの旦那さん。
二人が揃ってしまっては言い逃れが出来ず、俺の嘘が暴かれる!
まるでここでの会話を聞いていたような最悪の登場タイミングだ。
やっとレベルの上限解放で俺の冒険者人生が上向きになり始めたというのに!
ラネットさんを騙していたのがバレ、俺は冒険者から詐欺師へとジョブチェンジ。
俺は犯罪者として裁かれサビア落ちしてしまう。
どうすりゃいいんだ?
ここは嘘で塗り固めてなんとか逃げ延びないと!
でもどうやって?
英雄のバルトさんが目の前にいたんじゃどうやっても言い逃れはできない。
俺の人生は完全に詰んだ!
俺に引導を渡すべく、アリエスさんがとどめの言葉を投げかける。
「クーちゃん、ラーゼルさんとお知り合い?」
甘い言葉を口にするアリエスさん。
なんか今までとキャラが違わない?
ちょっと前まで凛々しい女騎士な仕草のアリエスさん。
今は年上に全てを委ねる甘々甘えん坊キャラだ。
ちなみにクーちゃんとはバルトさんのことらしい。
クオンタム・バルトなのでクーちゃんだ。
貴族になると心に余裕が出来てキャラまでおっとりに変わるようだ。
「ええ、私の弟子ですよ」
え?
今なんと?
バルトさんは俺とは無関係で二度と係わらない。
道で会っても挨拶をする必要はない、完全な他人と言っていたのに。
なんで俺の嘘に合わせてくれてるの?
「彼の秘められた能力を持っているのに気が付き、次期英雄にすべく師弟関係を結んだのです。ですよね? ラーゼル君」
「は、はい」
バルトさんはなぜか俺に助け舟を出してくれているようだ。
「クーちゃんは英雄を辞めたの?」
「私は英雄のままですよ。そしてラーゼル君もまだ一人前とは言えませんが立派な英雄です」
「まだ英雄で安心したわ。この子は英雄の子として生まれて欲しいの」
アリエスさんはバルトさんが英雄を続けていると聞いてお腹をさすりながらほっと胸をなでおろしている。
ラネットさんも今の話で俺への疑いはきれいに消えたようだ。
ふー、助かった。
バルトさんには感謝の言葉しかない。
「ラーゼル君とは今後の予定を話し合いたいので週末にでも屋敷に来てくださいね」
バルトさんとの関係は切れたと思ったが、まだまだ続くようだ。
俺はホッと胸をなでおろした。




