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新たなる辺境伯と婚約者の秘密

 花火大会が大成功し、戻ってきた俺たち。

 モニカとヒーラとフェリの3人は青い顔をしてメイミーにぴったりくっついてそばを離れない。


「モニカさん、そんなにくっ付かないでください! 苦しいですー」

「モーちゃん、そんなに抱き着いたらメイミーさんが苦しがってるよ。やめようよ、ね?」


 それでも止めない3人組。

 3人は半泣きだった。


「メ、メイミーいいか? もし私が少しでも苦しそうにしたらすぐに回復魔法を掛けるんだぞ」

「そうっす! 猛毒を食べて虫の息なんす!」

「私もまだ死にたくないんよ!」


 毒に対しては意外とビビりな人外3人組であった。


 そんな人外組を見つめながら、リビングで紅茶を飲みながら休憩しているとラネットさんがやって来た。

 昼間の工作員の尋問の時に聞いた、首謀者の心当たりの件に関する話らしい。

 どうやらアレンさんの準備が整ったようだ。


「父上から話があるので、ちょっと来てください」


 ということで、アレンさんの部屋へと向かう。


 *


 部屋ではボダニカルさんも待っていた。

 ラネットさんはすでに話を聞いているらしく3人は並んでソファーの長椅子に座り、俺への説明が始まった。


「すまない。ラネットの婚約者であるラーゼル君には話しておかないといけない話があるんだ」

「昼間の話ですよね?」


 アレンさんはうなずいた。


「実はラネットは、とある貴族から求婚されていたんだ」


 確か俺が初めてこの屋敷を訪れた時、アレンさんはラネットさんを貴族と婚約させたがっていた。

 後々、求婚相手はバルトさんと判明したけど、もうその話はバルトさんとアリエスさんの結婚という形で解決したはずだ。


「バルトさんへの求婚の話ですよね?」

「いや、バルトさんへの求婚の以前の話なんだ」


 相手はエーミール伯爵と呼ばれる最近頭角を現し始めた貴族だ。

 一代で貴族の最底辺の『騎士爵』から『伯爵』まで成り上がったかなりのやり手。

 王家の血を継がない者が得られる爵位の最高位である『侯爵』になった英雄のバルトさんを思い起こさせる。

 

「階級的には領地持ちの『辺境伯』である僕の方が上なんだけど、貧乏貴族である僕には威厳も資金もない。実力的には名前だけの僕よりもエーミール伯爵の方が上だね」


 ならば、なぜにアレンさんはエーミール伯爵からの求婚を断ったのかが謎だ。

 そんなやり手の貴族と結婚したらアルティヌス家は安泰となるのに……。


「実は……」


 ボダニカルさんが沈んだ顔で重い口を開く。


「エーミール伯爵には黒い噂があったのです」

「黒い噂ですか?」

「ええ。結婚して婿入りした先の花嫁が一人の例外もなく死んでいるのです」

「なんですって!?」

「僕が調べてみたんだけど、間違いのない事実らしいんだよね」


 結婚した後に遅くても2年以内に事故で死んでいる。

 一番最後のエーミール伯爵家の花嫁も馬車で移動中に崖から落ちて亡くなった。

 そして親族たちも……。

 その度に結婚相手の資産を手にしていった。

 これが大出世のカラクリであったのだ。


 ボダニカルさんは涙を浮かべる。


「ラネットもエーミール伯爵の元へ嫁げば間違いなく不幸が襲い掛かってきたことでしょう」

「そこで僕はエーミール伯爵からの求婚に先んじて、バルトさんへラネットの求婚を申し込んだんだ」


 なるほどな……。

 初めて会った時のアレンさんは娘を貴族と結婚させて家を復興させるような血も涙もない父親と思っていたが、実際は違ったようだ。

 貴族と結婚させ既成事実を作り上げ、娘の命を守ろうとしていた娘思いの父親だったようだ。

 平民の俺との婚約を拒んでいた理由がなんとなくわかってきた。


「今回の工作員の首謀者はエーミール伯爵ではないかと僕は踏んでいる。あの工作員もアルティヌス家を領地から追い出すと言っていたしね」


 アレンさんの推測が事実であるのならば……。

 なんとなく今回の事件が読めてきた。


 でも、今後はどう動けばいいんだろう?

 あくまでも推測の域で首謀者のエーミール伯爵の家に乗り込むわけにもいかないし。

 かといって、住民を狙ってくる賊から防戦し続けるのは難しい。


「そこでなんだ。明日はバルトさんの屋敷に行って相談したいんだけど、ラーゼル君も付き合ってくれるかな?」


 確かに貴族絡みの案件は侯爵であるバルトさんと相談するのが一番だな。

 俺はアレンさんの頼みごとを引き受けることにした。

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