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新たなる辺境伯と工作の理由

 アルティヌス領を混乱に陥れようとした工作員は次々に真相を明かす。

 プロの工作員の口を割らせるほど美味いウナーキという料理。

 どんな味なのか気になる。

 俺がさらに残ったタレの味見をしようとしたらグラトニーさんは食わない方がいいという。


「あれは料理じゃなく『妄想茸』だ。食べた人間が望む味を妄想の中で味あわせる毒キノコ。食べ過ぎると菌糸に冒されて苗床にされる」


 うは!

 なんだそりゃ!

 思ったよりも危険な植物じゃないか!


「でも、こいつには解毒剤を飲ませたので大丈夫だ。ただ妄想茸を食べた記憶だけは残るので、なにを食べても満たされず一生妄想茸を追い求めることになるだろうがな、ガハハハ!」


 犯人相手とは言え、そんなものを食べさせるグラトニーさんが怖い。

 ジャックは疲れ果てて寝てしまっている。

 二~三日は夢の中で起きないそうなので、このまま椅子に縛り付けておけば大丈夫だろう。


「さてと、この男の扱いをどうするかな」


 アレンさんは考え込んだ。


 この男が明かしたのは、

 

 ・毒の食事を振る舞い、領民を毒殺する。

 ・死者が出たのはアルティヌス家の仕業との噂を広める。

 ・アルティヌス家に責任を求める。

 

 そして、

 

 ・暴動を扇動し、アルティヌス家をこの地から追い出す。

 ・領主のいなくなったこの地を乗っ取る。

 ・そして混乱のさなか、ラーゼルを亡きものとする。

 

 こんな計画を用意していた。

 色々と穴のありそうな計画だけど、全て勢いで乗り越えるつもりだったんだろう。


 そして首謀者だが、名前はわからないが貴族らしいとのこと。

 さすがに末端の工作員に首謀者の名前を伝えることまではしてないらしい。


 俺が英雄となり、貴族となり、この地を継ぐことになった。

 それを快く思わない貴族連中がいるとは思ったが、ここまで早く、しかもあからさまに動き出すとは思ってもいなかった。

 俺たちを直接襲ってくるのならばいくらでも対処のしようがあるけど、住民たちをおそってくるようなからめ手を使われると俺たちでは対処しきれない。

 実際今回の事件でモニカたちが偶然屋台に居合わせなければどんな結果になっていたのか不明だ。

 これからは俺たちの力じゃどうにもならない面倒なことが増えるんだろうなと予想できる。


 ボダニカルさんがアレンさんの顔をうかがった。


「あなた、もしかして今回の件は……」

「ラーゼル君とラネットの結婚であの話は消えたと思っていたんだけど……」


 俺の名前が出たのでアレンさんに聞いてみる。


「あの話ってなんのことですか?」

「そのことはいずれ話さないといけないんだけど、今は祭りの方に注力しよう。またぞくが入り込んだら大変な事になる」


 『あの話』は夜に話をすることになった。

 俺たちは暗くなった河原へと向かう。


 *

 

 河原には打ち上げ花火筒があり、遠巻きに住民たちが集まっていた。

 町からでも十分に見えるとは思うんだが、初めての花火でテンションの上がった住民たちが集まってきたようだ。

 防火上はちょっと問題がありそうな感じだけど、賊の侵入を考えると一か所に集まっていた方がいいとのことで追い返すことはしなかった。


「これから花火が始まるのか!」

「花火なんて初めて見るよ。楽しみだね」


 初めて見る花火に住民たちは期待度満点の目で見つめてくる。

 俺は観客たちに挨拶をする。


「それでは新たなる住民を祝い、花火大会を始めます」


 そして、花火の打ち上げ。

 最初の一発は俺が魔力を込めた。


「どりゃー!」

『どっかーん!』


 空に大輪の花火が打ちあがった。

 花火が破裂する音で怯える住人たち。

 でも、広がり光り輝く花火を見て住民たちは息をのんだ。

 そして……。


『うおおお!』

『綺麗!』

『これが花火なのね』

『すげー!』


 河原が大歓声で包まれた!

 次々に打ち上げられる花火。

 魔力を込める人によって赤だの青だの緑だのに色が変わり形も変わるのが面白い。

 俺とアレンさんが辺りを警戒しながら、クローブの夜空に花火が咲き乱れた。

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