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新たなる辺境伯の祭り

 クレソンのピーエールさんの屋敷を訪れることになった俺たち。


 アレンさんが事前に連絡を入れていたけど、礼を言わないといけないとのことでアレンさんとその妻のボダニカルさんもついてくることになった。

 当然、移動役のモニカも一緒。

 どこにでも俺についてくるメイミーも一緒だ。

 アレンさんは初めてモニカの翼に乗ったのでテンション最高で年甲斐もなく大騒ぎだ。


「なにこれ! すごく速いんだけど!」

『そうかそうか』

「すごいんだけど!」

『すごいだろう』

「あっという間に僕の屋敷が豆粒ぐらいの大きさになったと思ったら、もうクレソンが見えるよ。ものすごい速度だ! こんなに速いのは生まれて初めてだよ」

『もっと速く飛べるぞ。出すか?』

「もっと出るの?」


 大騒ぎのアレンさんと違って、ボダニカルさんは顔をずっと真っ青にしたままアレンさんにしがみ付いている。

 ちなみにメイミーも俺に抱き着いているが、さっきからずっと俺の胸に顔を埋めてスーハースーハーと息を荒くして顔を赤らめているのは毎度のことだ。


「モニカ、そのへんで止めとけ。お前が本気を出したらアレンさんが泣くぞ」

『うむ』


 ということであっという間にクレソンに到着だ。


 *


 屋敷に着くとクレソンの領主のピエールさんが出迎えてくれた。

 

「思ったよりもずいぶんと早い到着だな。ついさっきアレンからの魔書バトが届いたばかりだぞ」

「ドラゴンに乗って来たからな」


 得意げに話すアレンさんにピエールさんが感心する。


「ドラゴンか。ラーゼル君と付き合うようになってから、アレンもずいぶんと常識外れになって来たな」

「まあ、そう言うなって。僕が一番そう思ってるんだから」


 照れた感じでアレンさんが恥ずかしそうにする。


「君が子どもの頃に僕に語ったドラゴンに乗って世界を旅をするという夢物語を実現したんだな」

「世界を旅するんじゃなくて隣街に買い出しだけどな。アハハ」


 二人はずいぶんと仲がいい。

 ボダニカルさんによると二人は幼なじみらしい。

 近隣の領主の息子だったので自然と付き合うようになったそうだ。

 二人とも武より学を重んじる性格なのですぐに親友になったらしい。

 ボダニカルさんが兄のピエールさんに挨拶をする。


「お兄さん、お久しぶりです」

「ボダニカル、元気そうだな」

「ええ、ここのところ毎日がとても楽しいです」

「理由は聞かなくともわかるぞ。ラーゼル君だろう?」

「ええ。ラネットととても仲良くしてくれているので、いい旦那さんを貰えてあの子も幸せです」


 ピエールさんはアレンさんから届いた手紙を確認する。

 

「クレソンの祭りで使っている屋台と花火を貸してくれということでここに書いてあるものは用意しておいたんだが、これでいいのか?」

「ありがとう、ピエール。いつも助かるよ」

「時間が無くて食材を集められなかったんだ。すまないが食材は市場で自分で集めてくれ」


 *


 ということで、市場に行くことになった俺たち。

 アレンさんがなにか思いついたのか嬉しそうな顔をする。

 いいことを思いついた子どものようだ。


「食材の購入だけじゃなくてクレソンの屋台にも声を掛けた方がいいな。僕らが作る物じゃどれも似たような物ばかりになるし、セージの住民たちにクレソンの名物を食べて貰いたいしね」


 ということで、アレンさんとボダニカルさんが食材集め。

 俺とメイミーとモニカは祭りに参加してくれる屋台の店主の募集となった。

 意外なことに屋台への声掛けはモニカが大活躍することとなった。

 モニカが屋台通りに顔を出すだけで店主たちが次々に声を掛けてくる。


「大食い女王じゃないか! こんなとこにどうしたんだ? 俺の屋台を食いつくす気か? がははは!」

「クローブで祭りをすることになってな。お前のことの食い物は美味いので祭りに屋台を出してくれ」

「大食い女王に美味いって言われたんじゃ、祭りに屋台を出さないわけにもいかないな」


 オムラパン、丸玉焼き、黄金飴……次々に屋台の出店が決まった。

 あまりにも出店したいと希望する店主が多いので断ったほどだ。

 モニカが得意げに俺に語る。


「どうだ? 私の顔の広さは?」

「正直、おまえの大食いが初めて役立ったのを見て驚いている」

「どんなことでも頂点を極めれば、全てに通じるんだ」


 教訓めいたことを言うモニカに少し腹が立ったが、役に立ったのは事実なのでなにも言うまい。

 実は、なんどかクレソンの街までヒーラとフェリとビアンカを連れて屋台で爆買いならぬ爆食いをしまくってたので店主たちに上客として認識されてただけなのはモニカだけの秘密だ。


 *


 帰りのモニカ便は大変な人数となった。

 屋台なんかの荷物は俺のアイテムボックスに収納したので荷物にならなかったが、とにかく乗客が多い。

 屋台のおっちゃんやおばちゃんだけで30名を超えた。

 あまりに人数が多くて墜落するんじゃないかと少し心配になる。


「こんなに乗せて大丈夫か?」

『これぐらいなんともない』


 とのことだった。

 実際、いつもと変わらないスピードでクローブを目指す。

 当然屋台のおっちゃんやおばちゃんたちは竜に乗るのは初めて。

 行きのピエールさん並みの大騒ぎになったのは言うまでもない。

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