新たなる辺境伯の魔道ビーコン
メイミーとアリカを抱きかかえて飛び除け、危機一髪逃げのびた俺。
顔面から地面に突っ伏した俺をメイミーが引き起こしてくれた。
「ごしゅじんさま、大丈夫ですか?」
「ああ、怪我はない。メイミーこそ無事か?」
「ごしゅじんさまが守ってくれたので、無事です」
ビーコンが弾け飛ぶほどの威力のある光線だったけど、運よくケガ人は居なかったようだ。
道の先を見ると真っ黒い焦げ跡が遥か彼方まで続いている。
ラネットさんもこの威力には半ば呆れかえっている。
「とんでもない威力の建築魔道具でしたね」
「もはや兵器と言ってもいいほどの威力でしたよ。ところでこの焦げ跡はどこまで続いているんでしょうか?」
「精霊石まででしょうか?」
焦げ跡の遥か彼方で精霊石っぽい物が見えてる。
モニカの翼に乗り上空から確認してみた。
「これは壮観だな。精霊石からクローブまで、まるで定規を使って線を描いたように一直線の道が出来ているぞ」
太さこそ足りないものの真っ黒な焦げ跡で街道と言っても差し支えのない道が出来ていた。
4車線は無いが、馬車が十分通れそうな幅の道。
開拓街の調査なら十分な太さの道だ。
「長距離用の墨出し器ってこんなすごい威力の物なのか?」
アリカが申し訳なさそうに視線を逸らしながら答えた。
「いえ、普通はガイドとなるただの光を出すだけで、こんな焦げ跡を残すほどの威力の光を出したのは初めてです」
「そうなのか」
精霊石に設置した魔道墨出し器のチェックに向かう。
アリカと精霊石によじ登りチェックをした。
「どうだ? 壊れていたか?」
「いえ、まったく問題なしです」
あれだけの光を放っておきながら、魔道墨出し器は傷一つなく無事だった。
でもアリカは表情を曇らせる。
なにか気になることがあったようだ。
「扉の中にあるコンソールの出力つまみが『最大』を超えて『制限解除出力』になってますね。もしかしてラーゼルさんが設置の時に触れました?」
「いや、こんな所に扉があったのを初めて知ったし」
「おかしいですよね……。設置前に私が設定をして出力を『真ん中』にしておいたんですが……。でも制限解除出力にしたとしてもあの威力は無いはずなんです」
*
俺たちはサテラの商業ギルドへと戻りこれを売りつけた職員に苦情を言った。
職員は地面に這いつくばるぐらい頭を下げる。
「技術者を派遣しておきながら、お客様の身にそんな危険なことが起きたとは本当に申し訳ございません」
完全に非を認められ、ここまで謝られると文句を言えない雰囲気だ。
苦情を言う代わりに状況を詳しく説明する。
「なるほどなるほど、状況はわかりました。原因に一つだけ心当たりがあります」
「なにが原因なんだ?」
「精霊石のクラスを間違えるとそのような過剰出力が起こる場合があります。もしやお客様が使われている精霊石はポリス級ではなくエンパイア級の精霊石を使われておりませんか?」
アリカがその推測を否定する。
「精霊石のサイズは間違いなくポリス級でした」
「となると、大きさはポリス級なのに魔力出力はエンパイア級なのかもしれませんね」
え?
マジなの?
それって……。
バルトさんがやらかしたのか?
大きさはポリス級なのに魔力出力はエンパイア級の超高性能精霊石。
あの精霊石を作ったバルトさんなら十分にありうる。
「魔道墨出し器の出力を最低に抑えると共に、魔道ビーコンをエンパイア級に換えることで通常通り使えると思います」
*
ということで、エンパイア級の魔力ビーコンを3つ新たに貰い、開拓街へと戻る。
出力を下げるとクローブの建築工房で見た時のような赤くて細い光が出た。
「これなら使えそうだな」
「とは言っても、もうこいつに用はなさそうだぞ」
「たしかにな」
モニカとラネットさんが開拓街の入り口を指さす。
既に真っ黒な焦げ跡で道が出来たからね。
うん、もう要らないね。
*
王都、エーミール侯爵家。
「シャドウよ、あの忌々しいアルティヌス家の様子はどうだった?」
シャドウと呼ばれた黒ずくめの男は部屋の片隅から現れると静かに語りだす。
「本気で魔の森の開拓を始めているようでした」
「なんだと!」
「巨大な精霊石、たぶんポリス級と思しき物が開拓地に用意してありまして、既に往来の為の街道の建築にも取り掛かっていました」
「放っておけば勝手に自滅する弱小貴族だと思っていたら……これでは我があの地を引き継ぎ辺境伯となる計画が白紙に戻ってしまうではないか! ブルワー様に散々寄付をして取り付けた約束が反故にされてしまうではないか!」
「なんでも、婿に迎えたラーゼルという者がかなりのやり手のようでして、今回の開拓にも大きくかかわっているようです」
「あの平民から成り上がったと噂になっている貴族か。そいつを潰さないと魔の森が手に入らなくなるぞ」
「既に手は打ってあります」
「ほう」
「少しばかり魔道具の魔道墨出し器に細工を施してきました」
「期待しているぞ」
「魔道墨出し器を動かした時が奴の命日。今頃細工したビーコンが爆発しコンガリと焼きあがっていることでしょう」
今まで嫁たちと自由に生きてこられたラーゼルで有った。
だが、それを快く思わない貴族に目を付けられてしまったようだ。




