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新たなる辺境伯の魔道墨出し器

 もう食えないとモニカがカエルのように腹を膨らませひっくり返った。

 お腹はパッツンパッツンで針で突いたら風船のように弾けそう。


「ぷはー! 食べた食べた、もう食べれないぞ!」

「大食い女王との勝負は私の勝ちだね」

「次こそは、おえぷ……」


 そう勝ち誇るマーリーさんに、今にも食べた物を戻しそうなモニカ。

 そこまで食うことないだろ。


「おい、モニカ、それ以上喋るな」

「おおう、すまないが今日は飛べそうもないのでここに泊まっていく」

「私も限界っす」

「同じくなんよ」


 ということで食べ過ぎでダウンしているモニカ、ヒーラ、フェリの三人組はすぐに自分の部屋に向かった。

 そしてメイミー、ラネットさん、ビアンカが俺の部屋にやって来た。

 メイミーとラネットさんが俺の部屋にやってくるのはまあわかるんだけど、いつもモニカと一緒のビアンカまで来るのは珍しいな。


「私も一応これでもラーゼルさんのお嫁さんなので……」

「彼女もこう言っているんだ、旦那のラーゼルが拒む理由もないだろ」

「おおう、よろしくな」


 確かにラネットさんのいう通りだ。

 その夜は4人でとっても仲良しになったのは言うまでもない。


 *


 翌日クローブに戻ってきた俺たち。

 朝早くに屋敷を訪ねてくる人がいた。

 20歳ぐらいの女の人だ。


「商業ギルドの依頼で派遣されたアルカです」

「ギルド職員の人が言っていた技術者か」

「はい、『魔道墨出し器』と『魔道ビーコン』の設置をやらさせて貰います」


 これは助かる。

 早速街道の始点となる地点へ連れていく。


「ここが開拓街への道の始点です」

「わかりました。では精霊石に向かいましょう。馬車を用意していただけますか?」

「あ、すいません。道路がまだほとんど出来てないもので馬車では行けません」

「じゃあ、歩きで行きますね」


 アリカが歩き始めたのをモニカが止めた。


「まて。歩いて行ったら何日かかるかわからないから私が連れていく。私に乗るんだ」

「足なら自信があるのでおんぶしてくれなくても大丈夫です」

「誰がおぶるといった」


 モニカは竜へと変化する。

 それを見てアリカが腰を抜かした。


「りゅ、竜? なんで女の子が竜に?」

『細かいことは気にするな。さあ、乗るんだ!』


 初めて竜に乗ったらしいアリカはその速度に大喜びだった。

 

「きゃはは! 木があんなにちっちゃいです。息が出来なくなるぐらい速いです」

『そんなに楽しいか。もっと速度を出して欲しいなら上げるぞ』

「ごめんなさい。これ以上出されると怖くておしっこ漏らしちゃうかもです」


 喜んでるんじゃなく、やせ我慢してるだけだった。

 外部の人間であるアリカにモニカの真の姿を見せてしまったけど、辺境だから竜がいるぐらいなんの問題もないはず。

 適当な設定を語っておくことにした。


「モニカは竜に認められ力を授けられた竜騎士なんだ。だから一時的に竜の力を借りて竜の姿にもなれる」

「竜騎士ってすごいんですね」

『いや、私は竜だぞ?』


 ちょっ!

 俺が上手く纏めようとしてるのに竜だとカミングアウトしてぶっ潰すなよ!


「竜騎士さん、冗談言わないでくださいよ」

『本当に竜なのに……』


 自分が竜だと信じて貰えずに涙目になるモニカ。

 アリカはモニカのいうことは冗談だと思ってるので大丈夫そうだな。


 *

 

 開拓街予定地に着いた。

 精霊石によじ登り魔道墨出し器を設置する。

 地上から位置をチェックしているアリカの指示が飛ぶ。


「位置はそのあたりで大丈夫です」

「固定はどうするんだ?」

「スイッチを押してみてください」

「これか?」


 ボタンが有ったので押してみる。

 魔道具が青白く光った。


「それで精霊石と融合したのでもう外れることはありません」


 設置はなんだかすごく簡単だった。


「後は道路の始点に戻ってビーコンを起動すれば完了です」


 *

 

 で、再びクローブに戻ってきた。


「後はビーコンのスイッチを押すだけですよ。精霊石からまっすぐな光が放たれますのでその光に沿って道を作るだけです」


 で、ビーコンのスイッチを押してみた。

 すると……。

 遠くの方がめちゃくちゃ明るくなった。


「なんだ、あれは?」


 森のはるか向こうの空が明るく光ってる。

 まるで朝日が昇ってくるみたいな感じ。

 多分光っているのは精霊石の上に載っている魔道墨出し器だ。

 あの方向に精霊石があったのか。

 その光がさらに強くなって目が開けてられないぐらいに輝く。


「大丈夫なのか?」


 俺の問いにアリカはブルブルと震えている。


「多分ダメです」

「なんだと! どうすればいいんだよ?」

「こんなに光ることなんて初めてで私もどうしたらいいのかわかりません。一つだけ言えるのはここにいたらあの光に焼き尽くされますよ」

「げっ! マジか!」


 俺たちは大慌てで逃げる。

 それと同時にビーコンに神のいかずちのような光が到達。


 バシューン!

 ドゴーーン!


 道路に真っ黒い一直線の焦げ跡を残して、ビーコンが周囲の地面と共に跡形もなく消え失せた。

 魔道墨出し器、こえぇぇ!

 あのギルド職員はなんという危ない物を売ってくれたんだよ!

 危うく焼き殺されるとこだったぜ。

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