新たなる辺境伯の嫁たちの金策
受けた依頼はサンドワーム狩りだった。
受付嬢もこの依頼をお勧めのようだ。
「常設依頼のサンドワーム狩りですね。これでしたらあまり強くないけど報酬が一体30万ゴルダとお高いのでおすすめですよ」
「なんで強くないのに報酬が高いんだ?」
「まず一つ目の理由はサンドワームの生息地であるアドラ砂漠まで遠いことですね」
「どのぐらいの距離があるんだ?」
「アドラ砂漠までの間に山脈があるので大きく迂回して行くことになりますので馬車で片道5日かかります」
馬車で往復10日か。
でもモニカの翼なら問題にならない。
山脈が有ろうが渓谷が有ろうが空を移動するのならば障害にならない。
直線移動なら馬車で2日の距離でクローブとサテラの移動とほぼ同じ距離とのことだ。
モニカの翼なら20分もあれば到達出来るだろう。
「もう一つは金策効率ですね。基本的にこの依頼の報酬はサンドワームの皮に対して支払われるんですが、サンドワームを現地で捌けない場合は丸々持って帰ってこないといけません。そうなると持ち帰れるのはせいぜい二人で一匹がいいところですね」
この依頼で稼ぐには基本的に大きなアイテムボックスが必要とのこと。
ビアンカの持っているアイテムボックスはゴブリン5匹しか入らない。
ゴブリン5匹でサンドワーム1匹相当なのでアイテムボックスの中にサンドワーム1匹を入れるのが限界である。
アイテムボックスで運ぶのと同時にヒーラとフェリが一匹ずつ担いで持って帰る分を入れても3匹がいいところだ。
サンドワーム皮の単価は1枚30万ゴルダだけど、往復で10日も掛けることを考えるとどう考えても金策効率が悪い。
そのせいで冒険者が依頼を受けるのを避け、結果サンドワームの皮が30万にも高騰するのだ。
「それならば解体して皮だけ持って帰ればいいんじゃないのか?」
「サンドワームの皮はその硬さで防具素材として重宝されます。その硬さゆえに加工は大変でして、ウサギの解体が完璧にできるスキルを持っていてもサンドワームの解体には一体6時間ぐらい掛かります」
「皮だけ持って帰るのは難しいか……でも報酬はおいしいんだよな」
「単価はCランクのモンスター並みですね」
ビアンカはサンドワーム依頼を受けようとしているモニカを止める。
「モーちゃん、おいしい話には色々裏があるんだよ。この依頼は止めて他の依頼を探そう、ねっ?」
報酬の高いおいしい依頼を諦めたくなかったモニカは必死にアイデアを絞り出した。
「じゃあ、こうするか。私とビアンカがずっと運搬するから、ヒーラとフェリは砂漠に残ってずっと狩り続けるんだ」
「モーちゃん、私たちがずっと飛び続けても一度に一匹しか運べないんだからあんまり意味ないよ」
「確かにビアンカの指摘した通りかもしれないな。もっと大きなアイテムボックスのリングを買っておくべきだった」
「あのー」
ヒーラだ。
「サンドワームを運ぶのは別にアイテムボックスに拘ることは無いんじゃないっすか?」
「どういうことだ?」
「大きな入れ物、例えば檻みたいなものにサンドワームを詰め込んで運べばいいと思うんす」
「その手があったか!」
モニカは冒険者ギルドで檻を借りた。
縦横3メトル長さ10メトルほどあるので50匹ぐらい入りそう。
「よし、これなら沢山入るぞ」
早速アドラ砂漠へと向かう。
砂漠では所々で砂煙が上がっていて巨大なミミズみたいなのが生えていた。
近くを通ったゴブリンや動物を襲っている。
「よし! 引っこ抜け!」
地面から野菜を掘るように引っこ抜く。
引っこ抜いたサンドワームは身体をくねらせて抜いた者たちに体当たりで反撃を仕掛けようとするが、フェリが電撃を食らわせて止めを刺した。
次々に捕獲されるサンドワームたち。
すぐに檻が満タンになった。
「戻るぞ」
恐ろしいほどの狩りの成果だ。
所要時間たったの7分で52匹、金額にして1500万ゴルダを捕獲した。
*
街の外に檻を降ろすと冒険者ギルドまで檻を担いで運ぶモニカたち。
門兵があまりの数のサンドワームに怯えていた。
ギルドでサンドワーム入りの檻を見せると受付嬢が目を丸くする。
「もう集めてきたんですか?」
「おうよ!」
「しかもその数はどうなってるんですか?」
「企業秘密だ!」
早速解体担当を呼んでチェックしてもらった。
「刃物傷が一切ついてないな。お前たちいい仕事してるな」
「そうだろ。じゃあ早く買い取ってお金をくれ」
「一匹30万ゴルダで、52匹なので……」
「5000万か?」
「モーちゃん、そんなにしないって……。1500万ちょっとだよ」
ギルドカードを出すと報酬が決済される。
おまけに……。
「冒険者ランクが上がったっす! FからEになったっす」
「私も上がったんよ」
ギルドカードを見て涙を浮かべるフェリ。
よっぽど嬉しかったらしい。
「ランクが上がるのって、他の人に認められてるみたいで嬉しいんよ」
そんなフェリの腕を引いてギルドの外に出る。
「さあ、もう一度砂漠に戻って狩りをするぞ。今日中に5000万ゴルダを貯めるんだ」
「5000万って指輪の代金なん?よ?」
「おう。お腹を空かせたマンイーターが待ってるんだ、頑張るぞ!」
お腹を空かした涙目の部下が目の前にいるのに食べ物をくれないんす?
と、思うヒーラであった。
*
二往復目は順調に狩りが済んだんだけど、3往復目になった途端にサンドワームが取れなくなった。
「全然見つからないっす」
「全部狩り尽くしちゃったのかな?」
「それか怯えて逃げちゃったのかも?」
「どうすればいいんだ? 私のかわいいマンイーターが飢え死にしてしまうぞ!」
「解決策ならあるんよ」
「本当かフェリ?」
フェリが得意げに話した。
「怯えて隠れているのならば、追い出してやればいいんよ。例えばこんな感じなんよ」
狼となったフェリは大ジャンプをする。
20メトルちょっと飛び跳ねた。
そして急降下。
落下の加速度が攻撃力へと変換され始める。
フェリは着地寸前に地面を殴りつけた。
拳撃に落下速度の加わった重い攻撃。
あたりに伝わる衝撃と重い音。
まるで地震だ。
そして……。
ゴゴゴゴゴゴ!
「本当に地震が来たよ!」
「いや、これは地震じゃないんよ!」
「サンドワームが逃げる音だ!」
フェリの攻撃を地震と勘違いしたサンドワームが逃げまどい、地面から顔を出す。
「おー! フェリ、でかした!」
3匹を捕まえた。
「3匹だけか。ならば私がゴッツいのをキメてやる!」
竜となったモニカは雲を突き抜けるほどの高空に飛び上がる。
そして空気を切り裂き急降下!
地面に激突すると同時に拳撃を放つと大地が揺れ地面が割れた。
「きゃー! モーちゃんやり過ぎだよ!」
「まるで本物の地震す!」
「これは完全に地震を超えているんよ。これは期待できるんよ」
そして地割れから現れたのは……。
『ギガントサンドワーム』!
このアドラ砂漠のボスだ!
太さ27メトル、全長100メトルのAランクモンスターの大ミミズ!
「モーちゃん、なんかとんでもないモンスターを呼び出しちゃったよ! ねぇどうするの? どうすればいいの?」
『まかせろ!』
モニカは5分間の激闘の末、大ミミズを引っこ抜いた。
そして電撃!
見事にギガントサンドワームを倒したのだ。
*
ギルドに持って帰ると、ギガントサンドワームを見た受付嬢のお姉さんがあまりの大きさに泡を吹いて倒れた。
報酬7000万ゴルダを貰ったモニカは念願のアイテムボックスの指輪を手に入れたのだった。




