パーティーメンバー
ここで書き溜めが切れました(3日目の一更新目)
「零さん、加減してください」
ラドがテーブル越しに圧をかけてくる。
さっきのPKとの戦いについてだろう。
「……なぜ、手加減する必要がある?」
「……相手からしたらトラウマ物ですよ、あれ。」
そうか?あれはそんなに怖いか?
魔法を使って相手を殺しただけだぞ?
「レベル下の下位戦闘職2人、更に片方は開放者で、見るからにカモ。
それが突然上位職の魔法で反撃して来るって……は?って思いますよ。
しかもそれで負けてますし。」
「……確かにそうかもな。」
というより、そもそもは面倒事に巻き込まれない為に2人で行ったのに全く効果が無かったな。
次からは1人にするか?
「………零さん。パーティ組みましょう。」
「……何故だ?」
突然ラドが提案をしてくる。
俺自身、別にパーティを組むこと自体は悪くは無い。
だが、ラドが俺に寄生しようとしているなら…
「零さんが僕の保護者、僕が零さんの保護者をします。」
「………は?」
何を言っているんだラドは
「僕は昔から俗に言う天然です。直そうとしてもどうにも直せませんでした。
昨日もそれで装備を着け忘れてしまいましたし、それがきっかけで死にかけてしまいました。
零さんは、僕が何か忘れたり、変な事をしそうになったら止めたりして下さい。」
「……ああ、わかった」
「で、僕は零さんが度を超えたことをしそうになったら止めます。
さっきみたいに、プレイヤーに対してトラウマを植え付けかねない行動を取りそうだったら、意を決して止に掛かります。」
……全く嘘を言ってない。本心からだ。
他に隠している事があるかもしれないが、取り敢えずこれは本心からの言葉だ。
「……わかった。パーティを組もう。」
「乗ってくれて何よりです。」
ラドがパーティメンバーになった。
こちらでは今昼だが、リアルはもうすぐ夜9時になる。
明日は朝7時にログインして、ゲームをやろうと約束して、俺はリアルで初日のプレイを終えた。
« 視点 ・ 姉 »
「狙ったのはたった二人の初心者。それに対し、1ダメージも与えられず敗北、か。」
「……はい」
「……アイリ、メンバーはお前以外全滅したらしいな。」
「は、はい……申し訳ありません…」
私は、命からがら燃える木の中から逃げ出し、リーダーの前に居た。
金色に輝く威圧感を感じる玉座に足を組む男。
彼が我等【黒夜の影】のリーダーだ。
黒夜の影は、この国で最大規模のPKグループ。
その中でもリーダーと謁見できるメンバーは限られている。
私は本来影から指示する役割で、実動隊ではない。
が、先日あの区域の実動隊が通りすがりのランカーに半壊されてしまい、仕方無く手の空いていた私が派遣されていた訳だ。
「こ、今回は相手のスキルを軽視し、禄な確認もせずに行動した、私に責があります……ま、誠に申し訳ございませんでした!!!」
地に頭を擦り付け謝罪する。
『リーダーの機嫌を損ねる事をしてはいけない』、これが黒夜の影の暗黙のルール。
リーダーの機嫌を損ねてしまった者に、命は無い。
「なぁアイリ……私はな、貴様に謝って欲しい訳ではないのだよ」
「………え?」
「貴様は優秀だった。妹、レイナと組ませれば、幹部として……【黒夜の影】の頭脳として非常に優秀な働きを働きをしてくれていた。
貴様は私が認めている一人だった。」
リーダーは淡々と語る。
玉座の肘掛けに指をリズムを取るように何度もあてながら、私の評価を語る。
「が、貴様は今回失敗した。
コンビの相手だった妹も失い、私の顔に泥を付けた。
これを貴様はどうする?」
「そ、それは………あのプレイヤーを今度こそは殺します!!私が、しっかりと!!
次は失敗しません!!!」
「一度失敗したのにか?貴様の得意な弓は容易く防がれたのだろう?
そして何より、貴様はその時に回数制限を気にして【必中】のスキルを使わなかった。
使っていれば、後ろを向いたそのプレイヤーは殺せた筈だが?」
リーダーが肘掛けを叩き、大きな音を立てる。
明らかな怒りの感情を示している。
「舐めていたのか?有利な立場だと。
その余裕が私の顔を汚す結果になると気付かず、レベル下の雑魚だと舐め腐っていたのか?
油断をするな!!
その油断が貴様を殺しにかかった!!
そしてその油断が切っ掛けとなり、私の損ねたのだ!!」
リーダーが再び玉座を叩くと同時に、私の下の地面が、棘となって盛り上がる
「……かは…ッ…!」
痛みは無い。
ただ、腹を何かが貫いたという感覚がする。
口から血が零れる。
「貴様に、今ここにいる価値は……無い」
腹の中で、棘が更に十字に広がる。
そしてその棘は私の口の中から……
«《 プレイヤー・レイナ ログイン制限 》»
«《 備考 デスペナルティ 残り 24:00:00 》»
« 視点 ・ リーダー »
「はぁ……」
自己保身をしようとする者の対応は疲れる。
まぁ、どうせ最後には殺す。
それで釣り合いが取れる。
「対応お疲れ様です、リーダー。」
「あぁセリカ、ありがとう。
…アイリとレイナの私との謁見権を無くすと係の者に伝えておいてくれ。駄々をこねるなら殺す様にともな。」
「……二人はここ3ヶ月程、とても良い働きをしてくださっていたのですがね…」
「私は恐怖政治などに興味は無いのだよ。」
……一度殺した者は、もう二度と殺されまいと一層努力をする。
自分の許容限界を超える仕事すら1人でこなそうとするほどに。
そんなものは身を壊すだけだ。
そんな極限状態に人を送り込むべきではない。
もう二度と、彼女達に直接の指示はしないだろう。
「…了解しました。そう指示しておきます。」
「あぁ、頼む。」
……さて、二人を負かし、私に泥をつけたプレイヤー……零刻と言ったか?
奴には、私が直々に仕置をしてやらなくてはならないな。
「ふぅ……」
……それにしても、あの二人の襲撃を、か。
あの二人が舐めてかかっていたとはいえ、
矢を躱し、演技を見破り、【無詠唱】で配置魔法を行う。そしてそのジョブは【開放者】。。
その桁外れの強さは……
「………この私と、同等の者かもしれんな。」
……潰すのが楽しみだ。
薄暗い部屋の中で、漆黒の笑みが浮かんだ。
頑張れ、未来の俺!予約中の俺は今から寝るわ!