救援要請
何でや!2000文字超えてろや!(憤慨)
【開放者】の俺のレベルは、狩場のモンスターを大方狩った現時点で『26』にまで上がっていた。
【開放者】のレベル上限は『50』
同じ様に狩って行けば、すぐにカンスト出来る。だが。
「……つまらん」
モンスターの知能が低く、あまりにも呆気ない戦いが続いている。
ボスらしきデカイ狼は多少やり甲斐があったが、他のモンスターはさっぱりだ。
後12匹程度狩れば、全てのアイテムボックスが埋まる。
だが………。
「つまらん、つまらん。昂らない。」
テンションが上がらない。
さっきも無理矢理昂らせたが、もう限界だ。
こんなつまらないなら始めるのでは無かった。
「………もう飽きた。帰ろう。」
幸いこのゲームで経過する時間は現実の4分の1。
つまらないと言う事実に気付くのに一時間も使っていない。無意味な時間を過ごさないで済んだ。
ステータスを開き、ログアウトボタンに触れようとした時。
«《!! 救援要請 付近に救援信号 !!》»
心に、好奇心の炎が再点火された
「はぁ…はぁ…くッぅ……」
全身の至る所から血が流れ、苦悶の声を上げる。息が途切れそうになるが、それを抑えて僕は剣を構えた。
目の前には狼が十数匹、僕を狙っている。
スキルはまだクールタイム、回復薬は使い切ってしまった。
……どうする……?
このゲームの発売開始から2ヶ月、既にプレイヤー増加の波は収まり、ルーキープレイヤーだった人の大半は中級者向けの狩場へ移動している。
救援信号は出したが、それもあまり見込め無いだろう。
どうしよう、どうするべきか。そう頭を巡らせていると、前方から1匹の狼が襲い掛かって来た。
「っ、あァッ!!」
どうにかそれを凌ぐが、体制を崩してしまった。
それに目掛けて、狼達が一斉に向かって来る。
こんな所で……死ぬ、のか?僕は?
これはゲームだ。本当に死ぬ訳ではない。
痛みも初期設定のままであれば感じない。
でも、だとしても、死ぬ。
嫌だ。
こんな所じゃ、死にたく無い。
「う、ぁあァァァああぁあぁァァあ!!!!」
無闇やたらに剣を振り回す。
嫌だ、僕は死にたく無い。
狙いを定めず、無意味に振り回す剣。
ダメージは与えずとも、この辺りのモンスターなら牽制程度の効果はある。
狼は少し怯み、襲うのをやめる。
今は助かった。
だが、次は無い。次は、本当に死ぬ。
嫌だ、お願いだ、お願い、来ないで、来ないでくれ。
嘆願する。
だが、そんな事、モンスターには伝わらない。
今度こそ、命を奪う為に、狼は大地を踏み切った。
次の瞬間、自分自身が、命を奪われると、考えもしないで。
「………え?」
回転して落下し、地面で跳ねた狼の首は、粒子となって消える。
これ、は……?
「すまない、遅くなった。」
それを行った本人は、何でも無い事かのように言葉を発する。
僕が蹲った所から、少し離れたところに、彼はいた。
「この場所での君の命は、俺が保証する。」
漆黒の衣装に身を包んだ彼は、さながら悪魔のようだった。
その彼に向かい、狼は動き出した。
列を成し、彼に向かって大地を駆ける。
最高速に達したそれは、車以上の速さ。
そしてそれを、彼はいとも容易く斬り裂いた。
順に、順にと、向かって来る、狼の首を刎ねてゆく。
残虐極まりないその事象の中で、彼は、笑っていた。
そして、不覚にも僕は、それを美しいと感じてしまったのだった。
全ての狼の首を斬り、俺はドロップアイテムを拾っていた。
救援信号を出したプレイヤーも、俺のドロップアイテムを拾う手伝いをしてくれた。
……アイテムボックスが満杯だ。
「あ、あの!」
「うん?なんだ?」
プレイヤーが話しかけて来た。
なんだ?襲いかかって来るのか?
「この度は、助けて下さり、本当にありがとうございました!!」
「……いや、礼を言われる程のことはして無い」
珍しいな、本当に救援を呼ばないと死ぬ位の状態だったのか。
「あの、これ……僕が今日モンスターを倒して手に入れたドロップアイテムなんですけど、貰って下さい!!」
「…アイテムボックスが満杯なので遠慮する」
「えっ、そんな………だ、だったら、一緒にお茶でもどうでしょうか!!僕がお金は払いますから!!」
お礼に全身全霊をかけているのか、彼は。
……まぁ、アイテムボックスも全部埋まって、もうやる事も無い。断る理由も無いしな。
「わかった。俺は『零刻』、君は?」
「僕は『ラド・グマーナ』と言います」
「そうか。じゃあラド、残りの落ちてるドロップアイテムは、欲しかったら持って行っていいから」
「そ、そんなの貰えないですよ!!」
「いや、俺も持っていくに持ってけ無いから、それならラドが貰った方が良いと思うんだが……」
知り合いに、ラド・グマーナが増えた。
現状は一日二回、朝夜7時更新です。