訓練所
冒険者ギルドの訓練所は街の城門を出て徒歩五分程の所にある。そこは破棄された砦で冒険者ギルドが改修して大型魔物の解体施設けん訓練所として使われている。
「何度いったら分かる初心者、肩幅以上に足を開くな身体の軸がぶれて殺られるぞ。」
「腕だけで振るうと剣に引っ張られるからぎゅとぐうぅとやるの。」
「こう、かな?」
頼りにしてたライネさんが擬音でしか説明してくれなくて辛いです。
ローガはローガで同じ事しか言わないし。
他のギルドの指導員もいるので助けを求めて視線を送るのだけど苦笑されただけだった。
うん………流石にこれ以上こんな説明では限界だ。
「あのさ、言葉だけだと解らないから実際にして見せて説明してくれるかな?」
「はっそんな事しなくても解るだろ?」
「うん、良いよ、こうぎゅっと」
ライネさんの手元を見ると利き手を奥に反対の手は手前で少し間隔を開けて持ってるけど、ぎゅっとと言う割には……。
「ええと、こうですか?」
「そう、そうだよ良く出来ました。パチパチ~」
「ち、出来るなら最初からしろよ初心者。」
ローガは相変わらずぶっきらぼうだな、まぁライネさんの持ち方を見て適度な力の入れ方がわかったからだけどね。
物を盗られないように持つ時の力加減に一番近い感じに思えた。
ぎゅっとよりきゅっが近いかな。
「ほら、ローガくんも、お手本、ね?」
「ちっ面倒くせぇ一回だけだぞ。」
「よろしくお願いします教官。」
真面目な顔でローガに言うと彼もまんざらではない様子、だって尻尾が揺れて教官と言われて嬉しいのが隠せてないからな、素直じゃないね~。
バイトの後輩にも一人真面目な人がいたけど慕われて先輩と呼ばれた時は嬉しかったかったな。
ローガは訓練用の剣を構えるその姿勢は半歩片足を出し膝を少し曲げぱっと観では肩幅以上足を開いてるように見えるが良く視れば本人が言った通りに肩幅と同じ開きだ。
悔しいがカッコいいじゃないか。
視やすいようにローガの正面に立ち見よう見まねで同じ構えをとってみる。
「はっ、まぁまぁな構えだその型が基本の構えだどんな動きをしても対応できるから忘れるんじゃねぇぞ。」
「はい。」
「ろーくんが教官らしい事出来てお姉ちゃんは嬉しいよ!。」
ライネさんが突然涙ぐんで感激してると言うよりろーくんて誰?
「ライ姉ぇその呼び方は恥ずかしいから止めろって言っただろ。」
「だってろーくんの初めてを観たんだよ嬉しいかったんだもん。」
「ろーくん……あぁローガの事か。」
ぽつりと呟いた言葉にローガは顔を真っ赤にして至近距離まで近づいてきた。
「さっきの事は忘れろ良いな?」
「分かったから剣を引っ込めてくれめっちゃ怖い。」
鼻先に触れるかどうかの位置に訓練用の刃がない剣をちらつかされたら流石に怖い。
顔を真っ赤して凄んでる、ろーくんは怖くないけどね。
「構えは分かったな?お次は素振りに模擬戦だてめぇは戦闘に集中しねぇで考えてばかりだったから徹底的にやんぞ。」
「ファイト、ガーデンくん。」
「や、優しくお願いします。」
此処からが本番な訳か俺はどこまで出来るのか心配だな。
それから長い時間素振りをする事になるとはこの時俺は知らなかったのだった。